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平成20年7月 第2323号(7月9日)

東日本に"つばさ"広げるネットワーク
 連携FD 山形大学小田教授に聞く  ―下−

 四月より、学部教育でのFDが義務化された。山形大学は、山形県内の地域ネットワークFD“樹氷”、東日本エリアのネットワークFD“つばさ”の中心的存在。北海道から関東までのおよそ三五大学・短期大学等が参加する。ネットワーク化を牽引してきた山形大学小田隆治教授に聞いた。今号はその後半。

 第三に、“樹氷”は全体としてまとまりを持ったFDプログラムを遂行していくように設計されていました。
 全国でFDフォーラムやシンポジウムが実施され、それ自体FDを進めていく上で役立ちます。しかしそれは、授業改善の到達点の一つのステップを示されているだけ。“樹氷”はトータル性のあるFDプログラムからなっていました。
 第四に、“樹氷”は現代GPに採択された三年間というかなり短期間に、“樹氷”に参加した全ての大学・短大にFDが定着した成果を上げることができます。設立当初は、参加校の大学の幹部の中にはFDという言葉さえ知らなかった人がいたことを考えると隔世の感があります。
 第五に、当初山形大学を中核とした統合型ネットワークだったものが、三年目には各大学が自校の特色にあわせたFDを構築するようになり、分散型FDへと発展していきました。
 第六に、“樹氷”によって、授業改善に対する費用対効果を大きくすることができました。FDをゼロから始めなくても、山形大学のそれまでのベースを有効に活用することができたのです。
 また、“樹氷”は授業評価のアンケートを山形大学方式で共同して実施しましたが、スケールメリットによって安価できるようになりました。小さな大学・短大において、FDにかける財政的負担を抑えることができました。
 最後に、“樹氷”は地域の活性化という地域性を特色としています。
 ―その後、樹氷が発展して東日本エリアのFDネットワーク「つばさ」になりました。
 国立大学や大きな公立・私立の大学は黙っていてもFDの義務化に対応することができます。しかし、小さな大学や短大は対応することが難しいことは目に見えています。
 それにどう対処したらいいのか、という真剣な議論を聞いたことがありませんでした。強者はいつでも勝者なのです。そうしたことを黙認することはできませんでした。
 我々が“樹氷”で培ってきたネットワークのノウハウを県外にも広げようと考えたのです。我々の持っている陣容から考えて、北海道・東北・関東の東日本地域を対象にしてネットワークへの参加を促しました。こうして誕生したのが、「FDネットワーク“つばさ”」です。
 現在、“つばさ”には三五の大学・短大・高専が参加しています。加盟校に向けて、授業評価、公開授業はもちろん、ワークショップや個別支援型FDなども行っています。この数ヶ月の間に、加盟校から山形大学のベストティーチャーの公開授業と検討会に教員が派遣され、活発な議論を展開しました。
 これから、加盟校で行われるFD講演会に招待され、講演する予定がたくさん入っています。
 受験者確保に大変な時代です。近隣の大学に手の内を明かすことはできません。しかし、東京と山形のように離れた大学では受験生の確保は競合しません。ですから、「つばさ」によって、スケールメリットと広域性を活かしたFDのネットワークを展開できると考えています。
 ―何故、そこまで山形大学が行うのですか?
 国立大学には公共性があります。法人化されたからと言って、自分の大学の利益だけを考えていてはいけません。地域のリーダーとしての役割があります。
 山形大学に利益がないかといったらそうではありません。他大学のFD活動は、我々の授業や教育を改善していく参考になっています。他者の意見だと冷静に聴くこともできるのです。“つばさ”の活動を通して山形大学を知ってもらうことができます。それは凄く大きいことです。広報活動の一環にもなっています。
 ―将来的にはどのように展開しますか。
 大学の学部の専門性に応じた部会や短大や高専の部会を作りたいと考えています。短大には短大の教育のノウハウがありますが、大学と一緒に取り組んでいたのでは専門に踏み込めません。
 “つばさ”にはどこまでの可能性があるのか試してみたいと考えています。国際的な中で日本の大学の地位を確固としたものにしていきたいのです。それは世界の大学ランキングに載るというようなことではなく、日本の大学が多様性のある魅力的なものに発展していって欲しい。“つばさ”はそうしたことに少しでも貢献できればと考えています。
 近い将来、“つばさ”をアジアへ、そして世界に拡げていきたいと夢見ています。
 現在、“つばさ”は会員大学を募集中です。入会費・年会費は必要ありません。特に困っている小規模の私立大学・短大には積極的に協力していきたいです。連絡をお待ちしています!
 FDネットワーク“つばさ”は、多様なFD活動を展開する。山形大学のお家芸である学生による授業評価、公開授業と討論会はもちろん、FDワークショップ、FD合宿セミナー等を行う。また、個別支援型FDやWebFDなど新しい活動も生まれている。
 入会費・年会費は不要。問い合せは、“つばさ”事務局(〇二三―六二八―四七〇七)まで。

教養教育FDセミナー

ワークショップも開催
 なお、八月四日から五日、五日から六日の各一泊二日で「教養教育FD合宿セミナー」を開催する。場所は山形大学蔵王山寮。
 プログラムは、大学へのニーズと課題から大学の教育目標の設定、授業内容の作成、シラバスの完成までを行う。また参加型授業や授業法も検討する。
 期間中の途中参加・離脱は禁止。参加費は七〇〇〇円(宿泊費、食事代等)。申し込み・問い合わせは、事務局まで。
 また、八月七日には、教養教育ワークショップも実施。講演会とラウンドテーブルを一日かけて行う。講師は立命館大学沖 裕貴氏。

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