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平成20年6月 第2321号(6月25日)

他の経費との合算使用など解説 科研費に関する説明会開催
  (19年度)1297件(全体の2.3%)が繰越承認

 文部科学省は、去る六月十一日、東京・文京区の東京大学安田講堂において、「平成二十年度科学研究費補助金(以下、科研費)に関する説明会」を開催し、科研費の取扱い、平成十九年度科研費の繰越し、科研費の適正な執行の確保及び機関管理の現状、さらに、研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく体制整備の実施状況等について説明するとともに、不正使用等の防止に係わる機関管理体制についての大学の取組事例が紹介された。なお、説明会は午前・午後の二回に分けて実施された。その概要は次のとおり。(管理・監査のガイドラインに基づく体制整備の実施状況については3面に掲載

 初めに、研究振興局の磯谷桂介学術研究助成課長の挨拶があり、説明に移った。

科研費の取扱い

 科研費と他の経費等との合算使用について、同課企画室の長澤公洋室長補佐が解説した。
 同氏は、従前の「科研費の他用途使用防止の制限」に対し、このたび、補助目的にあった使用が確保されれば他の経費と合算することについて支障はなく、次の場合に合算使用できることになったと説明。
 (1)科研費の使用分と他の経費使用分が明確に分割できる場合、(2)加算する「他の経費」の使途に制限がなく、科研費を補助事業に使用することが担保される場合
 具体的には、次のような場合である。@補助事業に係る用務と他の用務とを合わせて一回の出張をする場合において、直接経費と他の経費との使用区分を明らかにした上で、直接経費を使用する場合。A補助事業に係る用途と他の用途とを合わせて一個の消耗品等を購入する場合において、直接経費と他の経費との使用区分を明らかにした上で、直接経費を使用する場合。B直接経費に他の経費(委託事業費、私立大学等経常費補助金、他の科研費及び間接経費など、当該経費の使途に制限のある経費を除く)を加えて、補助事業に使用する場合(なお、設備等の購入経費として使用する場合には、補助事業の遂行に支障が生じないよう、研究者が所属研究機関を変更する場合などにおける当該設備等の取扱いを事前に決めておくこと)。

科研費の繰越し

 次に、平成十九年度科研費の繰越しについて、同課の永田 勝学術団体専門官が説明した。
 同氏は、平成十八年四月の通知「科研費に係る歳出予算の繰越しの取扱いについて」の事例等によって、大幅に制度の利用が増加していると述べ、「平成十九年度の繰越し承認に係る事前相談が約一五〇〇件に及び、そのうち一二九七件が財務省と協議し認められた。この一二九七件は、全採択五万六〇〇〇件の約二・三%に当たる」と説明した。
 また、繰越承認申請に至らなかった次のような主な事例を挙げた。
 @自己都合が主な要因となっている場合(教育活動等本来の業務が多忙)
 A予め予見可能であった場合(改正された法律等の施行による状況の変化、災害等の前年度の出来事)
 B当初より、十九年度中に終了しないことが明らかな場合(複数年にわたる事象を対象としているもの)
 なお、繰越し協議のスピードアップを図るためには、事前相談時における各研究機関での内容精査(繰越しに該当する事由であること)が重要であり、そのために今後も「科研費の繰越しに係る留意点等について」の改訂を行い、各種説明会等で周知を図っていくこととしている。

適正な執行・機関管理

 科研費についての不適切な執行事例を紹介した。
 〈直接経費に関する例〉
 @物品費の支出に関し、新規採択課題の交付内定通知書受領前の物品購入に関する立替払いの精算において、新規採択研究課題の経費として支出していた。
 A謝金の支出に関し、出勤簿が勤務実態を正確に反映していない記載がなされていた。
 〈間接経費に関する例〉
 @機関における間接経費に関するルール(配布や使用方法など)が整備されていないため、計画的な執行が行われていない。
 A研究環境の整備(研究室の整備や研究者への配分など)に係る執行状況を機関で把握していないため、直接経費との区分が明確となっていない。
 これらのことに十分に注意し、会計検査院の実地検査で指摘を受けないように科研費を計画的・効率的に使用し、不正使用等防止策に取り組むよう促した。
 一方、機関管理の現状については、平成二十年一月から二月に実施した実地検査の結果を取りまとめ、物品費関係、旅費関係、謝金関係のそれぞれについて、実地検査の視点、フォローアップ、全体的な傾向、今後の取組の方向等について解説した。
 その他、不正使用等の防止に資する機関管理体制について、筑波大学、東邦大学、京都工芸繊維大学、東海大学等の取組事例も紹介された。

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