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平成20年6月 第2320号 (6月18日)

[新刊紹介]
  「子どもは小さな数学者」−子どもをみつめる心理学− なぜ算数やるの?
  糸井尚子 著

 算数、数学は苦手にしてきた。いまも数学の本など読む気はしないが、この欄を埋めるために読む。
 この本が狙う読者は親や教師。「はじめに」で、こう書く。〈算数の能力はどのように発達するのでしょうか。算数の能力を伸ばすために親や教師はどのようにかかわることが望ましいのでしょうか〉
 生後五ヶ月の赤ちゃんが小さい数の足し算、引き算を行うことができるのを実験で示した第一章の「乳幼児期の算数能力」は新鮮な驚きがあった。
 二章で〈IT産業で振興著しいインドでは二桁や分数の九九を覚えさせる〉と紹介しながら〈分数の九九を覚えるより、子どもたちが、その法則性を発見することに意義がある〉と言い切る主張は鋭利だ。
 五章「算数に取り組む子どもの気持ち」では、適切にほめる、内発的動機づけ、失敗の原因をどこにもっていくか?など算数嫌いには“目から鱗”がズラリ。
 六章で「なぜ、子どもに対して肯定的でよいのか」について〈それは赤ちゃんが生まれてきたときにすでに四〇億年の学習をすませている〉としたのは感性では理解できた。
 しかし、〈知能を測定される能力として考えてきたが、心理学の中の知能の定義には知能をより広いものとしてとらえる考え方がある〉と知能の「鼎立理論」を持ち出した最後の部分は理解を超えた。
 とはいえ〈この本が算数を通して、子どもと親や教師のコミュニケーションに役立つのを願う〉という思いは通じた。「算数・数学嫌い」にも役立つ?

 「子どもは小さな数学者」(著者 糸井尚子)
 定価1,500円(税別)
 発行 学文社
 電話03-3715-1501
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