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平成20年6月 第2320号 (6月18日)

大学の教育力とは?
  大学教育学会 第30回大会 参加者600人が議論

 去る六月七、八日の両日、東京・新宿区の目白大学(佐藤弘毅理事長・学長)において、大学教育学会(寺ア昌男会長)は第三〇回大会を開催した。

 教育機関としての機能を充実させる必要性が指摘され、様々な教育改革に取り組んでいる大学の様子は弊紙でもたびたび取り上げてきた。大会では大学教育の果たす機能を大学の「教育力」と定め、教員のみならず職員の取組も含めて、「大学の『教育力』」を考える。会員を含む参加者は約六○○人を数え、過去最高となった。
 第一日目は、FD、SD、e−Learning、リベラルアーツ等の一三テーマに分かれたラウンドテーブルが開かれた。昼食を挟んで、寺ア会長が議長を務める総会が行われた後、開催校である目白大学より、佐藤理事長の歓迎の挨拶があった。引き続き、佐藤理事長が基調講演「大学の『教育力』を考える三つの視点―学習成果、規制緩和、そして経営問題―」を行った。@学習成果を改めて見直す「学士課程教育の構築」の意味。A規制緩和の中、質保証として設置審査から認証評価へのスムーズなチェック機能の流れが必要。B大学の組織経営について、中心にいる学生を考慮しながら役員・教員・職員共通の危機意識を持つ。以上の三点を解説した。
 続いて、「大学の『教育力』とは何か」と題したシンポジウムで、司会に国際基督教大学の松岡信之氏、金沢大学の青野 透氏、シンポジストに東京大学大学院の金子元久氏、中京女子大学の新村洋史氏、長野大学の徳永哲也氏を迎えて行われた。金子氏が「大学の『教育力』とは何か」、新村氏が「自己・社会形成の主体、主権者形成と大学の教育力」、徳永氏が「教養教育の復権と学士課程教育」と題して、教養教育という観点から学生の学びの充実に取り組んでいる事例を講演した。金子氏は「大学生調査」結果から大学生の多くは大学の授業を通じて「やりたいこと」を見つけることを示した。新村氏は、体験的にキーコンピテンシー、リテラシーは学年が上がるごとに形成されると述べた。徳永氏は、哲学等の初年次教育へのアレンジを通して、継続して学び続ける姿勢を養うのが「教育力」であると述べた。後半は、会場からの質疑をもとに、シンポジスト三氏が回答する形式で議論。シンポジウム終了後には懇親会が催され、参加者らは親交を深めた。
 第二日目は、午前中は一一のテーマに分かれて自由研究発表が行われた。各会場では、研究発表の後に総合討論の時間が設けられ、活発な論議が交わされた。
 午後は「大学における『教育力』を考える―教員と職員のコラボレーションの視点から―」と題したシンポジウムを開催。立教大学の佐々木一也氏の司会で、目白大学の長野佳恵氏、桜美林大学の本郷優紀子氏、立命館大学の浅野昭人氏、立教大学の今田晶子氏らシンポジストが大学職員の立場から講演を行った。まず、長野氏は大学の入試広報活動に学生を巻き込んだ取組を主軸に、教員・職員・学生の三者による体制作りの過程を説明した。本郷氏は、教職共同で行う「不登校生学習支援授業」を紹介し、教員と職員の協働のあり方について述べた。浅野氏は、教学組織の改編を経た経験からの組織論、職員は専門性か総合性かの選択を迫られる時代であることを述べた。今田氏は、教職員の相互関係モデルを提示、新しいプロフェッショナル像として、「専門性を持ち、学内の情報・文化に精通した人材」が望ましいと述べた。四氏の講演が終わると、指定討論者として立命館大学の安岡高志氏が教員の立場を代表して、四氏の意見に対する質疑を投げかけた。会場からも質疑が多数寄せられ、なかでもシンポジストが全て私大ということで、私大の研修制度や評価・査定制度など職員を育てる政策に関心が集まり、教育力につながる職務評価のシステムはあるか、といった質問なども出された。
 閉会では、次回三一回大会は首都大学東京にて開催されることが告げられ盛会裏に終了した。

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