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平成20年6月 第2319号 (6月11日)

私大等経常費補助金事務研修会開く 定員割れ減額強化 経営の効率化促す
  特別補助の複数ゾーン申請可(主ゾーン以外80%の補助)

 日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は、去る六月三日から二十四日まで、東京会場(文京学園「仁愛ホール」)のほか全国六会場において「平成二十年度私立大学等経常費補助金事務担当者研修会」(経験者編)を開催している。同研修会は、学校法人の補助金事務担当者を対象に毎年開かれているもので、同事業団及び文部科学省から経常費補助金に関する改正点・見直しのほか、申請事務の留意点などについての解説が行われる。昨年、文科省の直接執行分であった「学術研究高度化推進事業」が同事業団の特別補助と統合されているが、平成二十年度の特別補助について申請ゾーンによる取扱いが若干変更されることなどから、会場は満席となっている。なお、入門者編は別途、七月十六日から同事業団で行われる。

一般補助・特別補助の変更点

 まず、文科省高等教育局私学部私学助成課の助川 隆専門官が、私立大学等に対する経常費補助金制度全般について解説した。
 同氏は、近年の社会の諸制度も変わり、大学も多様化していることから、昨年度には特別補助をゾーン化、メニュー化して「申請しやすく、使いがってのよいもの」とするように改革したが、このゾーン化、メニュー化が「よくわからない」との声も寄せられたこともあり、今年度は制度を若干変えたと述べた上で、二十年度の主な変更点について解説した。
 (1)一般補助では、定員割れ大学等に対し、経営改善を促す観点から補助金の減額を強化する(平成二十三年度まで漸次強化)。一方、定員割れ改善に取り組んでいる大学等(当該年度の学校単位〈大学院除く〉の収容定員充足率が五〇%超一〇〇%未満)に対し、特別補助として新たに四億円(一校当り一〇〇〇万円〜二〇〇〇万円・五か年間、三年経過後に中間評価)を措置する。この申請は七月十八日まで同事業団で受け付け、審査の上、採択校を決定する。平成十九年度は、四四大学が申請し二〇校が採択されている。
 (2)特別補助
 各大学の多様な機能分化を推進するため、複数のゾーンを選択可能とし、配分方法では、最も比重を置くゾーンの項目については算定額の一〇〇%、それ以外のゾーンの項目については算定額の八〇%を措置する(詳細は後述)。
 そのほか、私立大学等の施設・装置・設備の整備に対する補助については、新規の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(ハイテク・リサーチ、学術フロンティア、社会連携研究推進、オープン・リサーチを大学の機能分化を促進する観点から見直したものと新たな大学の特色づくりの支援の観点を加味したもの)について概要を説明した。
 次に、私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金等について、文科省高等教育局私学部私学助成課助成第二係の泉 茂樹係長が、変更点と申請のポイントを中心に解説した。
 はじめに、研究装置施設整備費補助(施設・装置)及び研究設備整備費補助(設備)の概要を述べ、主に私立大学戦略的研究基盤形成支援事業について解説した。前述のように従来の高度化四事業を統合したもので、今後は二つ以上の事業に該当するものも申請可能となる。また、新たな観点として、@先端的、萌芽的な研究拠点を形成する研究、A建学の理念に基づく研究、B地域の伝統工芸に関する研究や地域の活性化に資する研究等を説明した。
 なお、補助項目・研究期間の変更点は、「研究拠点」=原則五年間、「特色研究」「地域研究」=原則三年間、また、補助項目では、「研究施設」=原則初年度の整備のみ、「研究装置・設備」=三年目の整備まで、「研究費」=研究期間内補助である。また、研究費のみの事業については原則申請不可(「研究拠点」に限り申請可、上限年間三〇〇〇万円)、支援終了後の継続支援は原則不可。
 また、学校施設耐震改修事業について、@新耐震基準(昭和五十六年六月一日)以前に建築の建物、A構造耐震指標(Is値等)を満たしていること、B事業経費一〇〇〇万円以上、の三つの条件に合致するものが補助対象であり、築三〇年経過した施設は原則対象外。
 そのほか、バリアフリー推進事業等にも言及した。

定員割れの減額強化

 昼食休憩後、私学事業団の助成部補助金課の佐藤直也課長が、一般補助について平成十九年度の交付状況・変更点などを解説した上で、平成二十年度以降の変更点及び配分方法に係る次の二点を中心に説明した。
 (1)補助金不交付となる定員超過率の取扱いについて
 @学部等の収容定員超過率=一・五〇倍以上(平成二十三年度まで)、A学部等の入学定員超過率=(イ)学部等〈医・歯学部を除く〉一・三〇倍以上(平成二十三年度まで、ただし経過措置として、二十年度一・四〇倍以上、二十一年度一・三七倍以上、二十二年度一・三四倍以上)、(ロ)医・歯学部一・一〇倍以上(平成二十三年度まで)。
 (2)定員割れ学部等の減額措置について
 (調整係数表A区分)収容定員充足率が定員割れしている学部等について減額をさらに強化する。
 平成二十年度:最大二三%減、平成二十一年度:最大三〇%減(通知予定)、平成二十三年度:最大四五〜五〇%減(予定)とする。このことから、経営の効率化に早急に取り組むことを促した。
 引き続き、私学事業団の助成部補助金課の外川孝充特別補助第二係長が、平成二十年度の特別補助について詳細に説明した。
 (1)メニューの変更=@知の拠点としての地域貢献支援メニューのうち、「地域の子育て・ものづくり支援」を「地域における社会貢献事業支援」に変更、A就学機会の多様化推進メニューに「九月入学の推進(新規)」を加える、B学部教育の高度化・個性化支援メニューのうち、「短大・高専の教育組織の高度化(専攻科)支援」を「短大・高専の教育組織の高度化支援」に変更、C先端的学術研究推進メニューのうち、学術研究高度化推進四事業を「戦略的研究基盤形成支援事業」として一本化。
 (2)申請は、Aゾーン(地域社会のニーズに応える教育の推進)、Bゾーン(個性豊かで多様な教育の推進)、Cゾーン(教育研究活動の高度化・拠点の形成)のうち一つのゾーンを選ぶ(平成十九年度と異なってもよい)が、他のゾーンのうち、重複しないアミかけの他のメニューを選ぶこともできる。ただし、その場合は算定額の八〇%の補助となる。なお、アミかけのない部分は申請不可。(下表参照)
 研修の最後には、会計検査院の実地検査状況について、同私学事業団の助成部補助金課の野田文克課長補佐より解説が行われた。
 検査の観点は、会計処理が予算や法律、政令等に従って適正に処理されているかという合規性のほか、経済性、効率性、有効性、正確性等にあると述べた上で、実地検査状況、実地検査の傾向(ODA予算関連での「外国人留学生受入れ」や医科系大学を主とする科学研究費補助金やGP等の競争的資金など)のほか、最近の不当事項例を具体的に挙げた。

 なお、円滑な補助金算定業務に係わる電子窓口の利用の協力要請があった。

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