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平成20年6月 第2318号 (6月4日)

大学発!! エコ技術・エコ商品 女子栄養大学
  芋+おから+貝殻=? 高校生主役に素材開発

 青森県で活躍するハーブ農家、大西正雄さんとふとしたきっかけで出会い、ハーブの話を聞いた。その返礼に、二〇〇四年、本学創始者である香川 綾を記念する講師派遣事業の一環として、青森県立百石高等学校食物調理科で講演を行った。「豆腐の比較文化論」と題し、豆腐製造法の地理的・歴史的変遷からアジアの人々の生活を考えるものだった。最後に、「かつては豚の餌として循環していたおからが、都市化と分業化の中で産廃となり、現在では全国で年間八〇万トンが吐き出されている」ことに言及、アイディアとして芋等の加工で生じる屑デンプンとおからを合わせたおからシートを提案した。
 この講演を、生徒だけでなく担当の先生、校長先生も受け止め、二〇〇五年度の授業に組み入れだった。生徒のアイディアから野外で敷石にする案が採用されたが、結着剤としてデンプンを用いれば水に弱く野外では使えない。そこで、地元の特産物であり、同様に処理問題の渦中にあるホッキ貝の殻に着目、廃棄物同士の組み合わせによって新たな価値を生み出す試みが開始された。青森県の「夢実現・人づくりプラン」に採択され、生徒も学校も活気づいた。
 試作した新素材は強度試験の結果、期待を裏切る弱さだった。建築材料には不向きだったが、弱いなりの使い道があるはず、との信念で生徒と用途の模索を始めた。その結果、一定期間使用して役割を果たすと自己崩壊して土に帰る土留めブロック、さらに、植物種子を仕込み、根が張ると同時に自らは崩壊するような、積極的崩壊プロセスも考えられた。高校や地元役場の敷地、公園などで野外試験を進めたところ、雨の日には雨水を吸収、保持して泥を防ぎ、晴れた日にも水遣りの必要がないことがわかった。このことを発展させれば、森林破壊による表土流出を防いだり砂漠緑化に応用できる。地元建設業者の協力で実用試験を重ねている。自分たちのアイディアから新素材が開発されつつあり、それが環境問題解決の一助になる―生徒の視野が広がり、自信を持つようになった。
 現在では、調理実習廃棄物の肥料化、地元農協と共同での農作物プロデュースなど、地域社会と一体になった活動を展開している。また、一連の活動は文部科学省の補助による「目指せスペシャリスト」事業として三年継続の二年を経過し、本年度が総仕上げの年となっている。(食文化栄養学科高橋勝美教授)

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