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平成20年6月 第2318号 (6月4日)

国公私通じた共同研究を推進 大学共同利用機関のあり方も検討

 文部科学省は、このたび、「国公私立大学等を通じた共同利用・共同研究の推進」について検討し、これをまとめた。国公私立大学を通じた学術研究機関における研究組織や、国による関与・支援等、学術研究の推進体制の今後について報告されている。概要は次の通り。

 従来、共同利用・共同研究の拠点として利用されてきた大学共同利用機関や国立大学の附置研究所等は、国大法人化に伴い、法人内の資源配分の中に位置付けられることなり、大学の意向と研究者コミュニティの意向との調整が必要な場合が生じるなど、大学の枠を越えた取組が困難になる可能性が指摘されている。共同利用・共同研究の意義・役割を再確認するとともに、今後の方向性を検討することが求められている。
 このような状況を踏まえ、平成十八年十一月より文部科学省の科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会で審議を開始。国公私立大学を通じた共同利用・共同研究の推進の在り方等について、基本的な考え方と今後の方向性を示した。
 報告では、まず、研究の多様性確保の観点から研究者や大学が自主性を発揮できる環境整備を行うため、国は基盤的経費の措置と競争的資金の充実により支援すべきという基本的な考え方を示している。
 大学の学術研究組織の整備においては、各大学の主体的判断による設置・改廃が原則である。国は多様な研究活動を支援するが、必要な拠点的組織については学術政策として重点的に支援すべきである。
 特に、私立大学は、人文学・社会科学分野で優れた研究を行ったり、自然科学分野で優れた人材育成を行っている大学も少なくないが、研究は外部資金によって行われていることから、必要な組織を整備したり、研究に専念させることが困難である。私立大学の研究機能を活用する仕組みの整備が必要である。
 また、大学の枠を越えた共同利用・共同研究の拠点となる研究組織は国が一定関与し、重点的に支援すべきである。さらに、この拠点の制度的位置付けと支援の在り方の明確化が必要である。分野の特性に応じて、ネットワーク型の拠点形成が可能となるような形態も推進すべきである。
 新たな共同利用・共同研究拠点を形成する際には、研究者コミュニティからの要請に基づき大学等が計画案を策定し、学術分科会が妥当性を審議する。既存組織についても、研究者コミュニティの意向を踏まえて、定期的に評価・見直しを行う。必要な経費は、国として各大学の優先順位とは異なる観点から財政措置を行うことが適当である。
 また、大学共同利用機関法人は、大学との連携を強化し、関連分野全体をリードする中核としての機能を果たし、学際的分野や新たな学問領域のコミュニティと拠点の育成を行うことが期待される。
 最後に大型プロジェクトは、我が国の国際的なリーダーシップを発揮する上でも大きな意義がある。学術研究全体や今後の財政状況等に留意し計画的に推進するべきである。なお、推進の際には、研究者コミュニティの合意形成に基づき大学共同利用機関法人等拠点組織が計画をまとめ、学術分科会において審議すること、進捗状況や成果の定期的な評価が必要である。

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