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平成20年4月 第2313号 (4月23日)

[新刊紹介]
  近代日本教育雑誌にみる情報の研究「受験・進学・学校」 菅原 亮芳 著

 明治中期から昭和の戦争前期に刊行された雑誌メディアや進学案内書が、どのような教育情報を発信してきたか、に光を当てた本。
 タイトルになった「受験」、「進学」、「学校(大学を含む)」の選択に関わる教育情報が、いかに発信され、どのように読者に届けられ、いかに定着したか、あるいはしなかったかを歴史的に検証している。
 第一部は「研究編」で第一章「受験」では『受験と小学生』、『受験と学生』(研究社)、『蛍雪時代』(旺文社)など、第二章の「進学」では進学案内書と総称される文献、第三章の「学校・大学」では『児童研究』、『大学及大学生』を取り上げた。
 団塊の世代には一章に出てくる『蛍雪時代』が懐かしいが、その検証は手厳しい。〈戦時下、多くの軍事関係記事を盛り込むなど受験参考書でありながら青年向け教育情報総合誌としての役割を果たした〉。
 二章の進学案内書は男女別に分析。明治後期の女性向けのそれには〈女子が上京して進学するにあたって、「堕落」を避けるためにも適切な学校を選ぶ情報が主だった〉。フェミニストが目をむきそうな指摘もある。
 三章の二種類の雑誌について〈特異な性格があった〉と編者はいう。しかし、『大学及大学生』の編者の橘静二を〈大学に対する全面的な肯定は注目される〉と論評する視座は評価したい。
 第二部の「資料編」は@戦前日本における受験雑誌一覧および出版点数A近代日本のおける進学案内書の文献目録(一八八三〜一九四六)。編者の菅原氏ら九人の研究者の汗の結晶。この方面に関心のある教育関係者は是非読んでほしい。

定価4,500円+税
発行 学文社
電話 03-3715-1501
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