Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成20年4月 第2313号 (4月23日)

「教育振興基本計画」を答申 教育投資の数値目標明示されず
  最終調整等経て教育振興基本計画閣議決定へ

 中央教育審議会(山崎正和会長)は、去る十八日、文部科学省の講堂で開かれた第六五回総会において、平成十八年に改正された教育基本法で制定が義務づけられた「教育振興基本計画について〜教育立国の実現に向けて〜」の答申を取りまとめ、渡海紀三朗文部科学大臣に提出した。同答申は、今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿として、公教育の質の向上などを掲げるとともに「必要な予算について財源を確保し、欧米諸国と比べて遜色のない教育水準を確保すべく教育投資の充実を図っていくことが必要である」としながらも、教育投資の目標額は明記されなかった。今後、文科省は可能な限り教育投資を充実させる方向で政府・与党と調整を図った上で同計画を策定し、五月にも閣議決定される予定である。

 答申された同計画は、第一章が「我が国の教育をめぐる現状と課題」、第二章が「今後一〇年間を通じて目指すべき教育の姿」で、@義務教育修了までに、すべての子どもに、自立して社会で生きていく基礎を育てるために、公教育の質保証、社会全体で子どもを育てることを強調している。また、A社会を支え、国際社会をリードする人材を育てるため、高等学校や大学等における質保証、大学等の国際化を推進する、などとしている。
 さらに、この章では「目指すべき教育投資の方向」として、学校段階別に多くの課題を掲げた上で、その課題を解決するために「必要な予算について財源を確保し、欧米主要国と比べて遜色のない教育水準を確保すべく教育投資の充実を図っていくことが必要である」との方向性を示した。なお「その際、歳出・歳入一体改革と整合性を取り、効率化を徹底し、めり張りを付けながら、真に必要な投資を行う」などとの記述にとどめた。
 第三章の「今後五年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策」では、基本的方向に沿った八一項目の施策を挙げ、特に重点的に取り組む事項としては▽確かな学力保障のための教職員定数の改善や全国学力・学習状況調査の継続実施、▽道徳教育の教材の国庫補助制度の早期創設、▽認定こども園の早期認定二〇〇〇件以上、▽学士力の達成等を目指し、教育内容・方法を改善するとともに、国公私を通じた大学間の連携による戦略的な取組の支援、▽科学研究費補助金の拡充を目指すとともに、国公私立大学を通じた共同研究研究拠点の整備の支援、▽「留学生三〇万人計画」の策定・実施、▽安全・安心な教育環境の実現のため、学校等教育施設の耐震化の推進などを盛り込んだ。
 最後に、第四章の「施策の総合的かつ計画的な推進のために必要な事項」では国や地方公共団体の役割のほか、「国は、教育振興基本計画に掲げられた施策の推進について所要の財政上の措置を講じていく必要がある」などと結んでいる。
 最後に、進捗状況の点検及び計画の見直しとして、策定から五年後を目途に、次期計画を策定する必要があるとした。
 当日の議論では、「閣議決定するためには、財務省等との折衝も必要であり、多くの項目について方向性を示すだけという不自由さを承知の上で議論してきた。この先、基本計画を策定するに当っては、文科省に大いにがんばっていただき、教育予算の獲得を期待したい」、「これらの方向性を実現させるためには教育予算の獲得は欠かせない。大臣のご尽力を賜わりたい」などといった意見が相次いだ。
 答申を手渡された渡海大臣は、「皆さんのご意見を重く受け止めている。この計画が一つの指標となるようがんばりたい」との決意を示した。
 また、山崎会長は総会後に「政府が掲げた教育立国を目指した案を、昨年の二月から一年余にわたって審議してきた。厳しい財政状況は十分承知しているが、教育立国実現のため教育予算を充実させていただきたい」と期待を込めた。

諮問「青少年教育の在り方」

 当日の総会において、渡海文科大臣は、「新しい時代に求められる青少年教育の在り方について」の審議を中教審に諮問した。
 検討事項は、次の四点。@これからの青少年教育の意義・役割について、A青少年教育における国、地方、民間の役割と連携について、B青少年教育施設の在り方について、Cその他今後の青少年教育の推進方策について

Page Top