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平成19年3月 第2267号(3月28日)

学士課程教育の在り方など  大学分科会 制度・教育部会で審議

  初等中等教育分科会 教育課程部会 高校必修科目など協議

  第四期中央教育審議会(山崎正和会長)は、先の教育関連三法案の改正に向けた答申取りまとめ後、各分科会の部会等が本格的な審議をスタートさせた。大学分科会の制度・教育部会では高等教育制度及び大学教育の在り方について、学士課程教育等を中心にした専門的な審議、また、初等中等教育分科会の教育課程部会では学習指導要領改訂に向けた小・中学校の授業時数や高校必修科目の在り方、到達目標の明確化などの審議、さらに、教育振興基本計画特別部会では教育基本法第十七条に規定された教育振興基本計画の策定に向け、教育の振興についての基本方針・施策等の基本的な計画の審議を展開している。

  大学分科会 制度・教育部会

  第四期中央教育審議会大学分科会の制度・教育部会の初会合が、去る三月十九日、東京・神田の如水会館で開かれ、部会長に郷 道子お茶の水女子大学学長を選出するとともに、学士課程教育の在り方をはじめ、大学等設置基準や質保証システムの審議を深め、夏前までに意見取りまとめを行うことになった。
  この第四期における制度・教育部会は、第三期の制度部会と大学教育部会とを統合した部会であり、制度部会での大学設置基準等の在り方・質保証システムの在り方、大学教育部会での学士課程教育のカリキュラムの在り方などを中心に審議することになる。このうち、学士課程教育に関しては、同部会に「学士課程教育の在り方に関する小委員会」を設置して専門的な調査審議を行うことになり、四月六日に第一回会議が予定されている。
  第三期中教審において、学士課程教育については、次のような多岐にわたる課題が出されていた。
  ▽高等教育の規模の拡大に伴う「教育の多様化」と「教育の質」との関係をどう考えるか。学生にとって知識基盤社会等で生きていく能力を身に付ける場になっているか。国際的な通用性はあるか、など学士課程教育の質の評価。
  ▽大学の個性化・特色化を推進していく上で、個々の大学が学生の視点に立ってディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー、アドミッション・ポリシーを明確にし、相互に関連づけて運用していくことが重要ではないか、大学間の自主的・自律的な連携・協働を活性化させる環境整備が大切ではないか。
  ▽学士課程として完結する性質と大学院の準備教育としての性質をどう整理し、学習成果を考えるか。
  ▽大学と経済社会との人材需給のミスマッチがあるとすれば、それぞれの立場で考えるべきことは何か。
  また、設置基準についても、次の検討事項案が示されていた。
  ▽学部等の人材養成の目的その他の教育研究上の目的の制定及び公表の義務化
  ▽複数の授業方法を併用した場合の単位の計算方法の明確化
  ▽FD実施の義務化
  ▽シラバスの作成及び成績評価基準の明示の義務化
  ▽設置認可・届出の手続き等の見直し
  そのほか、質保証の在り方についても、専任教員・実務家教員等の要件及び審査等の在り方、校地面積基準の在り方や運動場・空地に係る要件の在り方、情報の積極的公表に関する規定の在り方などについての検討などが必要であるとされていた。
  当日の会合では、「学位の“学士”の分野名が限りなく多い。見直す必要があるのではないか」「教育は利益の上がるものではない。社会が負担すべき面もあるのではないか」「大学の特色や多様性が失われないように、画一性と多様性のバランスが大事だ」など多岐にわたる意見が出された。

  初等中等教育分科会 教育課程部会

  初等中等教育分科会の教育課程部会の初会合が、去る三月十六日に開かれ、部会長に梶田叡一兵庫教育大学学長(副部会長=木村孟大学評価・学位授与機構長、田村哲夫渋谷教育学園理事長)が選任された。
  当日の会合では、第三期の同部会が一月二十六日に取りまとめた「第三期教育課程部会の審議の状況について」を踏まえての審議を行った。
  今後の検討項目としては改正教育基本法に対する教育内容の在り方、国語力の育成、理数教育の充実、小学校英語の教育課程上の位置づけ、体験活動の充実、小・中学校の授業時数の在り方、高等学校の必履修科目の在り方、到達目標の明確化、学習評価の在り方などが事務局より示された。
  このうち、注目される小学校英語と高校の必修科目について、次のような方向性が提示された。
  ▽小学校英語については小学校の教育課程全体の中でどんな位置づけが可能なのか検討を深める。このことと関連して、教育内容・方法についても検討する。そのため「小学校部会」において外国語専門部会の協力も得ながら検討を進めてはどうか。
  ▽高校の必履修科目の在り方については、幅広く知識と教育を身につけさせることができるように検討する必要がある。「高等学校部会」の委員を中心に関係の専門部会委員の協力も得ながら具体的な見直しを検討してはどうか。
  なお、学習指導要領に盛り込むとされる学力の「到達目標」については、来たる四月二十四日に実施される全国学力・学習状況調査の結果が参考となり、「学力水準」や「学力格差」(“正規分布”か“ラクダの二こぶ型”かなど)がある程度検証されることになるものと思われる。梶田部会長も「当部会でも報告会などを持ちたい」と述べた。

  教育振興基本計画特別部会

  教育振興基本計画特別部会(部会長=三村明夫日本経団連副会長、副部会長=田村哲夫渋谷教育学園理事長)は、去る三月十二日、東京・神田の如水会館で第二回会合を開き、教育振興の在り方について臨時委員二名の意見発表が行われた。
  ▽幼児教育の在り方について(無藤 隆白梅学園大学・短期大学学長)=幼児教育振興アクションプログラムとして、認定こども園の設立・充実、幼児教育の無償化、公私格差の是正(保育料、教職員の待遇)、幼小連携の推進、一種免許取得者の増加などを挙げるとともに、家庭教育の支援の充実、預かり保育の位置づけ、幼稚園の自己評価・外部評価、教育の質の確保など学校教育法等の改正について、また、保育所等との関連などについての考えを述べた。
  ▽生涯学習社会の実現に向けて(山本恒夫八洲学園大学教授)=改正教育基本法に「生涯学習の理念」が規定されている。生涯学習社会の教育・学習支援システムには、@教育・学習機会等の提供の仕組み、A学習機会等の選択援助の仕組み、B学習成果の認定・認証サービスの仕組みの三つのサブ・システムが大事であるとし、今後、この三つのサブ・システムをしっかり作り上げていくことが生涯学習理念の実現には欠かせないこと、さらに、次世代を育成するために、子育て機能の社会的変化に対する国民の意識改革、生涯学習社会における子育てのシステムづくりも急がれるなどと述べた。
  二人の意見発表を受けて活発な協議が行われた。

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