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平成19年3月 第2266号(3月14日)

第23回総会・研修会を開催
  新会長に中村洋東京理科大教授

 私立大学環境保全協議会(新会長:中村 洋東京理科大学薬学部教授)は、去る三月五日、六日に、東京・豊洲の芝浦工業大学において、第二三回総会・研修研究会を開催、約一七〇名の関係者が参加した。総会では、野上祐作会長の任期満了に伴い、中村新会長が選出された。

 研修研究会の第一日目では、まず、中村新会長の開会挨拶、芝浦工業大学の平田 賢学長の開催校挨拶があった。
 続いて、平田学長は、「地球温暖化抑制を目指して」と題して講演した。平田学長は、日本コージェネレーションセンター会長等を務め、大気中の二酸化炭素増大を背景に、地球温暖化抑止を目指して、エネルギーの有効利用について訴えてきた。「コージェネレーション」とは、熱を高温から低温まで無駄なく使う、例えば高温の熱は発電機を駆使して電力を作り、温度を下げてエンジンから排出された熱を風呂や暖房に用いる、といった直列型のシステムをいう。我が国は、高価な代金を払って石油、石炭、液化天然ガス、核燃料など一次エネルギーの九〇%以上を輸入している。熱力学の第一法則によれば、エネルギーは不滅であり、その総和は常に一定である。そして、人間にとって有用な仕事を終えた後、全てのエネルギーは「常温の熱」となって、大気や海水など環境の中に入り雲散霧消する。このようにエネルギーは、高温の熱に始まり常温の熱となって、その一生を終えるまで、温度の高い方から低い方へ一方向に不可逆的に流れ、自分では決して戻らない。従って、熱は生まれたときの高温から、常温まで下がってくる間にコージェネレーションなどで有効利用しつくさなければならない。具体的取組として、平田学長は、本田技研工業とガスグループが開発したコージェネレーションシステム「エコウィル」について、実際の実用状況等を紹介した。
 次に、特別講演として、「大学の実験室における事故実例と保安」と題して、群馬大学工学部の田中陵二氏より講演があった。田中氏は、大学の化学系研究室で頻繁に発生する事故実例を集めた著書「実験室の笑える?笑えない!事故実例集(講談社サイエンティフィク)」をもとに、いかにして安全な研究実験を行い、事故の無い研究室を運営するかについて述べた。
 まず、実験する学生に対しては、@使用する試料の性質および危険性について知識を有する、A機器および装置の正しい使用法及び原理を習得している、B事故の際に応急的に回避及び対応することが可能である、ということを繰り返し指導する必要がある。また、指導者については、@実験者の行う実験を正確に把握している、A実験に伴うリスクを見積もることができ、そのリスクを極限まで減らす行動を取ることができる。残存リスクが受け入れられる水準に達しない場合、その実験を中止させることができる、B実験に伴うリスクを実験者が理解できているか確認し、理解していない場合は指導することができるとし、「根本的に、「知らないこと」が一番恐ろしいこと」と述べた。
 また、田中氏の周囲で起こった事故では、@ガラス破断部による刺傷・切傷、A試薬・有機溶媒による中毒・薬傷、であり、こうした事故は例えばガラスについての危険性に無知であるために起きる、としている。こうした事故を起こさないためにも、大学における保安指導は非常に重要であり、「何よりも、深夜に一人で実験させることが一番やってはいけないこと」と注意を促した。最後に、田中氏が実際に経験した事故実例等を紹介し、「過去の事故実例を知り、潜在リスクを予想し、リスクアセスメントの考え方で事故予防する必要がある」と述べた。
 続いて、研修講演にうつり、芝浦工業大学財務部の小山 武担当次長から「環境・安全・衛生を配慮した大学キャンパス計画」と題して講演があった。
 小山氏は、大学を取り巻く情勢の変化や、環境・安全・衛生に関連する法令への対応について、「ファシリティ(施設)マネジメントシステム(FMS)」を紹介した。FMSとは、大学という組織体の施設・環境を、経営的視点から総合的に企画、計画・整備、管理・活用、評価する戦略的な「施設管理」の手法である。小山氏は、同大学の豊洲キャンパスの環境・安全・衛生に係わる配慮状況について述べた。同キャンパスでは、ビル・エネルギー・マネジメントシステムを導入し、中央監視・自動制御の設備を配備している。また、全体免震構造や屋根集水・雨水再利用、地域冷暖房、日照調整等を紹介した。
 続いて、グループ討議では、「環境保全、安全衛生管理に係わる現場の課題とその対策」についてディスカッションが行われた。参加者は各自の事例などについて積極的に意見交換を行った。また、一日目の夜には、懇親会が開催された。
 二日目には、前日のグループ討議の続きが行われ、その後、事例報告として「環境保全、安全衛生管理に係る事例報告」では、金沢工業大学企画調整部の谷正史次長、東京理科大学財務部環境保全室化学物質管理部門の安原昭夫部門長による発表があった。
 休憩を挟み、グループ討議の報告と共に、パネルディスカッションが行われ、環境安全等をテーマに議論された。最後に、閉会の挨拶があり、大学の豊洲キャンパス見学会となった。

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