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平成19年2月 第2263号(2月21日)

“6度目の猪”の願い

 阪南大学学長 大槻眞一

 世の中には、これだけは必ず起きるという時代のトレンドが必ずあるものである。例えば、社会のグローバル化、少子高齢化、女性の社会進出、情報通信技術の発達、地域経済の再生を願うリージョナリズムなどである。
 大学改革とは、これらの時代のトレンドにふさわしい役割を大学が果たしていくことではないかと思っている。いずれの大学も、それぞれ時代のトレンドソーシャル・ニーズとして、大学の伝統や特徴を活かした施策を工夫し、見事に実践している。
 阪南大学も、今年は、この時代のトレンドに合わせて二つの試みを強めたいと願っている。一つは、グローバル化で空洞化した地域経済の再生のために、中小企業と連携を深めることである。例えば、中小企業の経営者による中小企業論や中小企業における長期インターンシップなどである。また一つは、少子高齢化がもたらす経営者の後継者難を緩和するために、女性経営者を育成することである。
 中小企業は、アメリカやEUでは、地域経済の担い手、雇用の源泉として扱われている。残念ながら、わが国では、いまだマイナーな存在である。これは社会通念の違いであろうか。
 また、女性経営者育成の必要性は、少子化による事業の後継者難からだけではなく、女性の社会進出から生じた多彩な消費者ニーズからも生じている。ちょうど世界市場に進出する企業が、相手国のニーズに合わせて新製品を開発するように、女性のセンスを生かした商品やサービスを開発する必要がある。それには、女性の発想や女性の可能性が十分に発揮されなければならない。かくてニーズの多様化は、女性経営者の出番を待っているのである。しかし、今のところ、わが国の女性経営者の比率は約五%と、二五%を超えるアメリカやEUに比べれば足元にも及ばない。
 女性が事業を起こし、企業を運営していくには、ジェンダー特有の障害や制約がある。やはり、女性の役割や能力に対する固定観念や先入観が社会通念となっているのであろう。人類の半分を占める女性の才能集団(タレントプール)が起業家として活躍するために、また、中小企業が欧米諸国のように「経済の動力車」となるために、阪南大学がこうした社会通念の変革に少しでもお役に立てればと願っている。今年六回目の年男となった“老いたる猪”の願いでもある。

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