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平成19年1月 第2260号(1月24日)

学生に希望と自信を

金沢星陵大学学長 早瀬勇

 日本人が描く猪(亥)は精悍な面構えで行動も猪突猛進だが、かつて在勤したドイツでは何でも食べるユーモラスな脇役で、その名も「野豚」。年男としては、やはり日本の猪のほうが好きだ。
 国際金融の世界から教育界に転じて六年、新たな発見や意義深い出会いの連続である。今でも学部や大学院で、国際金融論やPFI(民活による公共事業方式)を講じている。専門分野では、企業での経験や最新情報が直接役立つが、大学運営は関係者の理解と協力の上に成り立っており、猪突猛進は許されない。
 本学は今年、創立四〇年を迎える旧金沢経済大学で、建学の精神は「誠実にして社会に役立つ人間の育成」。その使命と目的は、創立者・稲置繁男氏の次の言葉に尽きている。
 「人は誰でも特性とか個性を持っている。その良いところを見つけ出す。百点満点の人をつくり上げるより、一人一人何らかの技能を身に付けさせる。自信を持って社会へ巣立つ人間を養うこと。二十一世紀も二十二世紀も、この原則は変わらない。」(平成二年四月)
 まったく同感である。
 経済学でいう「高度大衆消費時代」は終わり、「少量多品種の時代」に入った。大学としても、少ない学生に、いかに付加価値を付け、特性・個性にあった得意技を身に付けてもらうかが鍵となる。三年前、思いがけず負託を受けたとき、「学長は時代のニーズを読むことが第一の仕事」と自らに言い聞かせ、地元・石川県が唱える「観光立県」に呼応して、二年前「国際・観光ビジネスコース」を開設した。一割を切っていた女子学生が一六%を超え、キャンパスも華やいできた。
 大学に来て真っ先に感じたことは、主として二年生の中途退学者の多いこと。それには三〜四年次の専門課程へ進むための基礎学力向上が急務だと痛感し、一〜二年次全員に、小グループごとに教員が直接指導する基礎ゼミナール所属を義務付けた。また、平成十九年度からは、現在の経済学部一部及び経済学部二部(夜間学部)に加え、関係者の大変な熱意で準備された「人間科学部(スポーツ学科・こども学科)」もスタートする。
 ひところの学生は、みんなと同じであることに安心感を抱いていた。今では、独自性とか自分のアイデンティティを大切にするようになっている。そして、そこには「楽しさ」もなくてはならない。学生たちが大学で自分を発見し、自分を伸ばせる場所にしてもらいたいし、現場のわれわれも努力する学生を大いに褒めて、将来に希望と自信を持ってもらいたいと願っている。

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