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平成19年1月 第2258号(1月10日)

教育改革スタートの年

文部科学大臣 伊吹文明

 平成十九年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。  昨年九月に文部科学大臣をお引き受けして以来、安倍総理が最優先の政策課題とする教育改革を担当し、その責任の重さを感じるとともに、教育基本法の国会審議等もあり多忙な毎日を送っておりました。
 教育改革は、約六〇年ぶりの教育基本法の改正により、ようやくスタート台に立てたといえましょう。しかし、教育を取り巻くさまざまな問題が、この改正法の成立により、すぐに解決できるわけではありません。例えて言えば、仏を創ることはできましたが、その仏に魂を入れなければなりません。関連諸法の改正、教育振興基本計画の策定、予算による肉付けなどさまざまな具体的施策に取り組むことはもとより、文部科学省も含め、教育関係者が熱い志をもって諸問題に臨むことが必要となります。教育問題は国家百年の計であるだけに、その成果は、私達がこの世を去った後に出てくるでしょう。そのことを肝に銘じ、本年も精一杯、国家・国民のために努力したいと思います。
 私は政治家として、日本社会に受け継がれてきた良き習慣、伝統により、自由競争原理・市場経済のどうしても避けえぬ欠点を補い、自助の気概と創意工夫が生かされる、活力ある「日本の国のかたち」を目指してまいりました。教育改革においても、人間力回復の教育改革により、これしかない国家社会の運営イズムである自由競争原理のやむを得ぬ副作用を抑え、品性ある国民による品格ある国・日本を創りあげたいと願っています。
 文部科学行政の当面の主な課題は、安倍総理も掲げる学力向上とその結果の検証、規範意識を広く自覚してもらうことのほか、教員の資質向上や給与体系の検討、必履修科目の未履修問題を踏まえた高等学校教育や大学入試の在り方の検討、いじめに悩む子どもたちを守るための仕組みの再構築などです。幼児教育や特別支援教育の充実、学校施設の耐震化、情報化などの環境整備も引き続き重要な課題です。また、食育や健全な生活習慣の育成、勤労観・職業観の育成、学校安全の取り組みや放課後子どもプランの実施などにあたり、学校・地域・家庭の協力を進め、それぞれの教育力の向上を図らなければなりません。
 高等教育にとり何より大切なことは、リベラルアーツの厚みに裏打ちされた立派な研究者、知識人を創ることです。国立大学等の活性化、私立学校の振興などを通じ国民の学習機会を保障すること、大学院教育の充実、教育の質保証や留学生交流の拡充などを含め、国際競争力に富む個性豊かな大学づくりが望まれます。
 科学技術・学術の面では、経済発展と国民の豊かな暮らしに不可欠な科学技術によるイノベーションの創出を目指すため、基礎研究の充実や、知的クラスターの形成や産学官連携によるイノベーションなどのシステムを整備すること、科学技術を支える人材の育成や研究環境の整備充実を進めることです。併せて、国民の血税で賄われる研究費の公正で効率的な使用をお願いしなければなりません。また、国家基幹技術など各分野の重要な研究開発課題に戦略的に取り組むことや、安全・安心科学技術、国際プロジェクトの推進などを着実に進めていくことが重要です。
 文化、スポーツの分野では、世界から尊敬を得ている日本文化の充実・発展を目指し、感性豊かな文化の担い手の育成、文化財の次世代への継承、メディア芸術の振興と時代に応じた著作権施策の推進、スポーツの国際競技力の向上、生涯スポーツ社会の実現、子どもの体力向上などを推進していくことが重要です。
 本年も、これら文部科学行政全般にわたり、関係者の皆さまと話しあい、文部科学省の職員とともに微力を尽くし、最大限の努力をいたします。引き続き、関係各位のご理解とご協力をお願い申し上げますとともに、皆様の今年のご健勝をお祈りいたします。

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