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平成18年11月 第2254号(11月22日)

「シニア世代受入れ」で協議会 私立大学の在り方等を研究・協議

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る十一月十三日、午後一時から五時まで、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷を会場に、「シニア世代の受入れ推進に関する研究協議会」を開催した。この協議会では、同協会の私立大学発展構想委員会(担当理事・黒田壽二金沢工業大学学園長・総長)が取りまとめた「シニア世代の学び・生きがい・交流の場としての大学づくり(中間報告案)」を中心に、今後の私立大学の在り方等を含めて研究・協議を行った。当日は、同協会の加盟大学から、一一九大学約一六〇名が参加して行われた。

 同研究協議会は、はじめに黒田担当理事から「今言われている団塊(シニア)世代の退職問題、また、中教審の高等教育の将来像答申を見ても、大学には教育と研究、そして社会貢献(再教育などの機能)を求めている。そこで、社会人の養成とシニア世代の受入れを合わせて、私立大学はどのように取組んでいくかの重要な時期となっており、社会の変化に応じた大学の在り方も含めて考えていただきたい」などと趣旨説明を含めて挨拶をした。
 協議に入り、一番目は、「シニア世代の学び・生きがい・交流の場としての大学づくり(中間報告案)―シニア世代受入れの必要性について―」として、同協会の小出秀文事務局長から説明が行われた。
 同氏は、団塊の世代がまもなく六〇歳の定年を迎える。一八歳人口も減少しており、元気なシニアを積極的に私立大学へ取り込むことが、今後の発展の鍵となる。また、新しい大学像をつくるという意味でも、シニア世代の受入れは様々な可能性が潜在しているなどと述べるとともに、私立大学発展構想委員会の中間報告案を詳細に説明した。
 二番目は、「大学とシニア世代との新しい関係を考える」として、谷口弘行神戸学院大学前学長・教授から提案が行われた。
 同氏は、今後、競争によって成長する部分と共生により発展していく部分のある成熟社会となる。競争社会を生きた質の高いシニア世代とは単に年を重ねただけではないことから、その意味と役割を考える必要がある。
 また、シニアは、若者以上に個性化、生活の個別化がある。そういう問題を考えて、私たちは力を合わせてノウハウを作り、マネジメントする必要がある。それには、教職員の意識改革も必要となるが、強引でもよいから制度改革をすれば、必ず意識が変わることなどについての提案があった。
 三番目は、「シニア世代受入れに関する課題と提案について」として、魚津貞夫関西外国語大学教授・顧問から提案が行われた。
 同氏は、大学がシニア世代受入れのために、入学試験や三年次編入学試験、科目等履修生制度などの受入れやすい条件及び学びやすい環境づくり、また、シニア学生の呼称を学修生とした方が適切ではないか、学修生相談センターの設置などきめ細かい対応について、具体的な提案をした。
 四番目は、「シニア学生の受入れと大学の活性化について」として、濱名 篤関西国際大学理事長・学長と窪田八洲洋同大学経営学部講師・シニア学生アドバイザー・学習支援センター次長から発表が行われた。
 同大学では、原則六〇歳を対象にしたシニア特別選考を行い、現在一〇名のシニア学生が学んでいる。濱名氏は、受入れに際して物分りの良い人ばかりではなく、十分な気配りをしてから望むべきであることなどを述べた後、シニアの経験・体験が、学生に親や教員との関係とは異なる関係を作り出し、良い影響を与えるなどの期待ができること、シニアを再び地域に戻すために地域との関係づくりを積極的に推進すること、また、具体的な活動状況等を発表した。
 五番目は、文部科学省の中岡 司大学振興課長から「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援について―社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムなど―」として解説が行なわれた。
 同氏は、生涯学習時代の大学では、学習者の視点にたったユニバーサルアクセスの実現のため、教育機関相互の接続、履修形態の弾力化、学習成果の証明(履修証明)等について解説。また、十九年度概算要求において、社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムとして四八億円が新規に措置され、これは、社会人を対象に体系的で短期、そして、履修証明により社会的認知度を高めることが必要などと解説した。
 最後に、文部科学省生涯学習政策局の濱口太久未民間教育事業振興室長から、「『生涯学習』という考え方の過去と未来について」として、講演が行われた。同氏は、生涯学習の重点として、@職業能力の開発、A家庭教育、B地域教育、C高齢者への対応、D地域課題解決への取組みなどを挙げ、大学に求めることは、多種多様な学習への質の保証の取組み及び現代的課題で社会の要請に応えることなどを重視して欲しいと述べた。

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