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平成18年11月 第2252号(11月1日)

学校法人 経理担当者研修会を開催 会計処理の周知徹底図る

 文部科学省は、去る十月十一日、東京・港区のメルパルクホールにおいて、「平成十八年度学校法人経理事務担当者研修会」を開催し、文科大臣所轄学校法人の経理事務担当者及び各都道府県の私立学校事務担当者ら多数が参加した。
 同研修会は、学校法人業務に関わる法令・学校法人会計基準による適切な会計処理の周知徹底を目的に、平成元年(一九八九年)から毎年実施されている。
 はじめに、主催者挨拶として杉野 剛私学部私学行政課長が、学校法人を取り巻く諸情勢を語った。
 まず、少子化の影響等で平均すると入学定員と入学者数が同じになり、大学の四割、短大の五割が定員未充足となっていること、次に、国の財政状況は悪く、来年度は私学助成の一%減が基本とされていること、さらに、国立大が法人化されて活性化し、特区では株式会社立大学等も生まれるなど、私立大の役割が問われていることなどを述べた上で、今後、学校法人に、@学校経営のガバナンスの確立、A情報の開示(公教育の一端を担っており、国民の理解が必要)、Bミッションの明確化(建学の精神に立ち戻り、個性ある教育の展開)などを期待したいと結んだ。
 次に、「学校法人会計基準の改正等に伴う学校法人の会計及び監査に係る諸問題について」を日本公認会計士協会の大橋玲子学校法人委員会副委員長が、次の四つのポイントを解説。
 (1)社会経済情勢の変化を受けて、新しい有価証券等の実務に対応した取扱いを明確にするための「学校法人会計問答集(Q&A)第一三号・有価証券の評価等について(平成十七年六月十三日改正)」=有価証券の会計上の取扱い方、有価証券を売買した場合の会計処理の時期などの問答集。
 (2)公認会計士が寄付金収入等をどのように監査しているかを理解するための「学校法人委員会研究報告第九号・寄付金収入等の監査手続(平成十八年三月三十一日)」=リスク評価手続き、リスク対応手続き、実証手続きの例示など。
 (3)基本金要組入額を超える基本金の実務上の取扱い及び取崩しの取扱いを明確にするための「学校法人会計問答集(Q&A)第一六号・基本金に係る実務上の取扱いについて(平成十七年六月十三日最終改正)」。
 (4)学校法人の財務状況の透明性確保や説明責任の明確化のための「学校法人会計問題集(Q&A)第一七号・計算書類の注記事項の記載について(平成十七年六月十三日)」。
 休憩の後、「学校法人の財務状況と会計の諸課題について」を日本私立学校振興・共済事業団の比留間進私学経営相談センター経営相談班長が解説した。
 大学・短大等の財務状況(平成十七年度の帰属収支差額比率が〇%(赤字)以下の大学法人が一四五法人あることなど)、学校法人活性化・再生研究会の中間まとめ付属資料(学校法人の経営に関するチェックリスト)による説明。さらに学校法人会計の諸課題(基本金の取崩しとして基本金明細表などを説明)、平成十七年度決算の注記事項の記載状況(有価証券の時価情報の工夫及び関連当事者との取引などを説明)、職員像の在り方などについて述べた。
 引き続き、「最近の私学助成の状況について」を文科省の吉田 潔私学部私学助成課課長補佐が解説した。
 骨太の方針二〇〇六等を踏まえた平成十九年度私大関係予算(概算要求)について経常費、施設・設備費等を説明するとともに、私立大学等が補助金により整備した財産の処分の手続きに触れ「五〇万円未満の機器は財産処分制限が適用されないので、承認を受けずに個々に処分できるが、五〇万円以上の機器は条件に応じた文科大臣の承認が必要である」との注意を促した。
 そのほか、「研究費の不正な使用への対応について(通知)」(平成十八年九月四日)の説明も行い、十二月にはガイドラインもまとまる予定であるとした。
 なお、補助金の十八年度分第一次交付が私学事業団から十一月に行われることも報告した。
 最後に、「学校法人の情報公開について―情報公開から情報提供へ」と題して同省の大高弘士私学部参事官付学校法人調査官が解説した。
 財務情報については、最低限の項目開示が定められており、利害関係者への閲覧が義務付けられているが、一般の人でも分かるように公開することが“情報提供”という意味であると述べた上で、@入学定員未充足であっても、事業計画や事業報告書などを用いて、「このような計画で改善する」といった積極的なPRも情報として公開してほしいこと、Aインターネットでの財務状況の公開(四一%)が多いが、さらに、経営努力を示すような内容も入れてほしいこと、B学校法人の管理運営や経営面の指導助言体制を強化したいこと、さらにD基本金の組入れを行って欲しいこと、特に、二号基本金に組入れをしなければ、内部留保とみられるかもしれないので、バランスよく組入れを行うためにも中・長期計画をしっかり立てることが必要であることなどを強調した。

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