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平成18年10月 第2250号(10月18日)

青少年の“自立への意欲”促す
  5つの視点・方策を提言

 中央教育審議会(鳥居泰彦会長)では、平成十七年六月の文部科学大臣からの諮問を受け、青少年の生活全体を視野に入れながら、青少年の意欲を巡る現状とその背景を検証するとともに「青少年の意欲を高め、心と体の相伴った成長を促す方策について」検討してきた。このたび、去る九月二十八日開催の第五六回総会において「中間まとめ」を取りまとめたので、その概要を掲載する。

■基本的な考え方
  青少年には、社会的存在として一定の役割を担おうという「自立への意欲」を持つことが期待される。わが国社会の活性化と持続的発展のためにも、大人の責任として、社会全体ですべての青少年が「自立への意欲」を持てるよう促すとともに、成長過程全体にわたって心と体の調和の取れた成長を促すべきである。

■現状と課題
  「意欲に欠ける」とみられる青少年の状態は具体にはさまざまである。個々の青少年の状態を的確に把握し、各状態に対応した手当てが必要である。

(1)
基礎的な体力の低下や不足がみられる場合には、正しい生活習慣、運動習慣の下での充足感のある生活を送らせることが必要である。
(2)
青少年の価値観等と社会的期待との相違がみられる場合には、実社会との関わりを通じた社会的に許容される価値観や判断基準を体得させることが必要である。
(3)
意欲から行動に移る段階でつまずいている場合には、体験を通じた目的達成に必要な手段方法を学習させることが必要であり、特に身近なモデルから学習させることが効果的である。

 青少年の生活実態等について、各種データ及び研究成果等から次のような課題がみられる。

(1)
基本的生活習慣の乱れ―生活習慣が乱れると不定愁訴を感じ集中力が低下する。規則正しい生活習慣は自然とは身につかないため、親子関係が密接な乳幼児期に家庭において身につけさせる必要がある。
(2)
希薄な対人関係(子どもへの保護者の関与の度合いの低さ、地域の大人の青少年への関わりの少なさ、仲間と交流する体験の少なさ)―子どもの発達の基盤として乳幼児期に親子間の愛着形成が重要である。良好な親子関係、地域の大人の働きかけや異年齢集団等での体験により、自己を客観視する力や自立性・主体性を育成する必要がある。
(3)
直接体験の少なさ(スポーツ等の体を動かす体験の少なさ、自然体験の少なさ)―成長期に十分に体を動かさないと心身の発達全体に影響を及ぼすため、スポーツ等を青少年の生活に意識的に取り込む必要がある。また、集団での自然体験は社会性の育成効果が高いことから、自然体験の機会を増やす必要がある。
(4)
情報メディアの急速な普及に伴う問題―情報メディアの青少年への影響については今後研究が期待される分野であるが、情報メディアを悪用した犯罪等から青少年を守るとともに、情報メディアを活用して青少年の社会性を高める等の方策が必要である。

■提言
  家庭・学校・地域社会・企業等のすべての大人が自らの課題として受け止め、積極的に行動することを期待する。

(1) 家庭で青少年の自立への意欲の基盤を培おう

  《視点》
▽家庭の役割を強く自覚し、家族全員で子どもに積極的に関わる。
▽学校や企業、地域社会が家庭での自立への基盤づくりを支援する。《方策》
▽求められる基本的生活習慣や基礎的な体力の重要性について、実践的な調査研究を通じて啓発する。
▽家庭での基盤づくりを進める国民運動を展開し、地域での取り組みを支援する。

(2) すべての青少年の生活に体験活動を根づかせ、体験を通じた試行錯誤や切磋琢磨を見守り支えよう

  《視点》
▽多様な体験活動の機会を提供し、体験活動をすべての青少年の生活に根づかせる。
▽体験を通じた青少年の試行錯誤や切磋琢磨を大人が見守り支援する。
  《方策》
▽青少年の生活圏内に多様な体験を提供する場や機会をつくる。
▽青少年教育施設等を中核として、教育効果の高い体験活動を計画的に提供する。

(3) 青少年が社会との関係の中で自己実現を図れるよう、地域の大人が導こう

  《視点》
▽社会との関係への興味・関心を育て、社会との関係の中での自己実現を導く。
▽「第三の大人」として地域の大人が青少年に関わっていくという価値観を醸成する。
  《方策》
▽社会との関係の中で自己実現を図った大人の生き方から学ぶ機会を提供する。
▽青少年の努力や社会貢献を積極的に評価する。
▽地域の大人が地域の青少年の成長に継続して関わることのできる場や機会を広げ、その連携を進める。

(4) 青少年一人ひとりに寄り添い、その成長を支援しよう

  《視点》
▽ガイダンスの発想に立ち、青少年一人ひとりの成長を支援する。
  《方策》
▽国民一人ひとりがガイダンスの発想に立って青少年を支援できるよう、意識の涵養と指導力育成に努める。
▽学校における教育相談体制の整備や関係機関が連携したサポート体制の充実などにより、児童生徒一人ひとりの成長をきめ細やかに支援する。

(5) 情報メディアの急速な普及に伴う課題へ大人の責任として対応しよう

  《視点》
▽情報メディアを通じて社会規範等を学び社会参画を図れるようにする。
▽青少年への悪影響を予防する観点から情報メディア環境を見直す。
  《方策》
▽青少年の健全成長に資するコンテンツづくりを促進する。
▽コンテンツの作成・発信者と受信者がともによりよい情報メディア環境づくりに貢献できる仕組みを整える。
▽情報メディアを悪用した犯罪等に巻き込まれないよう青少年一人ひとりに届くメッセージを送る。
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