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平成18年9月 第2247号(9月27日)

私大協会第568回理事会
  創立60周年記念事業など協議  「学校法人債」問題の経緯と功罪

(財)私学研修福祉会 理事長候補に廣川副会長を推薦
(9月25日の同財団理事会で正式決定)

 日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、去る九月二十二日、東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷において第五六八回理事会を開催した。協議事項は、
(1)
創立六〇周年記念事業について、
(2)
役員補任について、
(3)
第一二五回総会(秋季)の運営についてのほか、文部科学省の山中伸一私学部長を始め担当課長等を招いての
(4)
学校法人債問題について、
(5)
平成十九年度私大関係政府予算並びに私学関係税制改善対策の今後の推進方策についてなど協議した。また、(財)私学研修福祉会の役員等の任期満了に伴う後任候補者の推薦、被用者年金制度の一元化問題のその後の動向等についての報告が行われた。終了後には懇親夕食会も催された。

60周年記念事業及び 125回総会(秋季)関係
  開会に当たり、大沼会長は「二か月ぶりの理事会であり、重要課題の協議をお願いするとともに、今日は文科省の山中私学部長のほか、予算・税制等担当の幹部の方々からもご説明いただき、共通理解を図るなどしていきたい」と挨拶。
  議事に入り、初めに、来たる十一月三十日に東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で実施する同協会創立六〇周年記念事業について、廣川利男副会長(同事業実行委員会委員長)より、記念式典、記念祝賀会の日程、実施要領のほか、記念誌の内容等についての提案が行われた。
  記念式典における創立六〇周年宣言を黒田壽二副会長(私立大学発展構想委員会担当理事)が行うことのほか、式典での来賓祝辞等についての人選などの案が了承され、総会に諮った上で決めることになった。
  なお、創立六〇周年宣言については、理事らから“宣言する”という形よりも“決意する”といったニュアンスでよいのではないかとの意見が出され、文案等を微調整し、総会に諮ることになった。
  次に、常務理事の欠員補任として中国・四国支部から推薦のあった井尻昭夫岡山商科大学理事長・学長が承認された。なお、理事の欠員補任については、各支部から推薦される予定であり総会での審議になる。
  続いて、来たる十月六日に北海道・札幌で開催する第一二五回総会(秋季)の運営等についての協議では、小出秀文事務局長が、平成十七年度収支決算の承認事項のほか、創立六〇周年記念事業等の協議事項、報告事項等を説明した。また、森本正夫北海道支部長から「秋たけなわの北海道へぜひお越しください。翌日には小樽方面への視察研修も予定しています」などと挨拶があった。

「学校法人債」問題の経緯と今後の基本的な考え方
  引き続き、学校法人債問題について、小出事務局長から経過説明が行われた。
  この問題は、従来からの保護者や卒業生を対象にした借入金明示型の学校債とは別に、学校法人による流動性(市場流通性・譲渡性)のある新たな「学校法人債」が発行できるようにするもの(私立学校法の改正を伴う)であり、他団体から文部科学大臣に要望書が出され、その内容が私学全体に関わることから、文科省から私大協会に話が持ち込まれた経緯がある。
  その要望の背景には、平成十五年の国立大学法人法の成立に伴い、国立大学法人による、商法並びに証券取引法上の有価証券として位置づける債券発行が認められたため、国立大学とのイコール・フッティング等の観点から、不利な財政的立場にある学校法人(私立大学)が金融機関より低利な資金調達の多様な選択肢を開拓しようとするもの。
  この問題について、山中私学部長及び片山純一私学行政課長から、今後の学校債、学校法人債の在り方の検討の方向案が示された。学校法人債の法的性格は有価証券、金融商品取引法上の開示義務は同法施行令で指定したレベルと同程度のもの(有価証券報告書提出等、投資者への目論見書交付など)が求められ、具体的在り方は私学法で規定、債券の流通を確保する制度として、私学法で投資者が安心して取引できるよう諸規定を整備することが求められる。
  説明の後、理事らからは「経常費補助金の縮小につながるのではないか」「イコール・フッティングの観点というが、根本問題が解決されていない」「私学が格付け競争に走り、株式会社と同様の財務体質になってしまうのでは」「従来の学校債だけでよいのでは」「一般投資家が教育研究に発言権を持ち、私学の自主性が損われるのではないか」「教育に供する土地・建物が担保化されるとすれば大問題だ」など、学校法人債の推進については、異論が多く出された。また、「私学事業団に全ての私学に道を開いていくような施策も考えられるのではないか」といった意見も出された。
  今後は、その影響・功罪は多岐多様にわたることが想定され、論点についての基本的な考え方の合意形成が必要と思われる。

予算・税制改正要望の内容とその実現対策
  予算・税制改正関連の今後の推進方策のうち、税制改正については片山私学行政課長から、奨学金返還時の控除制度、寄附金税制の拡充要望等が説明された。
  次に、小松親次郎高等教育企画課長、芦立 訓私学助成課長、伊藤学司大学振興課大学改革推進室長等から、予算要望について説明があった。初めに、小松高等教育企画課長が国公私立大学を通じた大学教育改革の支援事業のうち、主に新規事項を説明した。

社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラムでは、各地域の産業等との連携によりスキルを身につけ、修了証を出すなどといったプログラムを展開する取組を支援。
新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(仮称)では、入学から卒業・就職までの厚生補導等の学生支援の取組支援。
グローバルCOEプログラムでは、「二十一世紀COEプログラム」の後継事業として、特に若手研究者育成と国際的拠点形成の強化を支援。
大学院教育実質化推進プログラムは、「魅力ある大学院教育」イニシアティブの後継事業。
ものづくり技術者育成支援事業では、地域や産業界と連携した実験・実習と講義の組合せによるプログラムで、ものづくり分野を革新させる知識及び技術を持った技術者育成を支援。
サービス・イノベーション人材育成推進プログラムでは、社会科学と自然科学の融合による新たな知識体系を通じた教育モデル構築により、高いレベルのサービス・イノベーションを創出できる人材育成を支援。

  また、私学助成については、芦立私学助成課長が、

(1)
定員割れ大学等に対する助成の見直しがある一方で、たとえそうであっても改善努力に取り組んでいる大学には特別補助の新設を考えていること、
(2)
各大学の特色を活かせる特別補助のメニュー化など、私学事業団とも十分に打合せた上で我が国高等教育機関の七四%を占める私立大学等の活性化を支援していきたいなどと語った上で、これらの多様なメニューが用意されており、各大学の特色を発揮して地域との連携等を図り、積極的に取り組んでほしいと結んだ。

  なお、科学研究費補助金についても、従来の二〇〇〇万円以上の事業に配分されていた三〇%の間接経費について、二〇〇〇万円以下の事業についても措置するように要望していることなども説明された。
  予算・税制改正とも要望実現に向け、一致協力して対応することで承認された。

(報告事項)廣川副会長が 私学研修福祉会理事長に
  報告事項に移り、まず、(財)私学研修福祉会の役員・評議員の任期満了に伴う後任候補者として、理事長候補に廣川副会長、常務理事候補に福井直敬常務理事が推薦された(九月二十五日の同財団の第二八四回理事会において決定した)。
  また、理事に石田恒夫副会長、小林素文常務理事、評議員に高柳元明副会長、平尾和義常務理事、大橋秀雄常務理事、香川達雄常務理事、中村量一常務理事、矢内原千鶴子理事の各氏を推薦したことが報告された。
  そのほか、大阪工大摂南大学からの評議員登録変えに伴う理事の欠員について東松孝臣総長から坂口正雄新理事長への交代、また、去る八月三十日から京都市で開催された図書館司書主務者研修会等が報告された。
  被用者年金一元化問題のその後の動向等については、山下 馨私学行政課私学共済室長及び私学事業団の佐藤憲昭理事から報告された。
  報告事項の最後に、(財)日本高等教育評価機構の活動状況等について、同機構の原野幸康専務理事から報告があり、終了した。
  なお、理事会終了後の会場を移しての懇親夕食会では、文科省幹部も交えて、予算・税制改正の要望実現めざしての一層の連携を確認した。

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