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平成18年9月 第2245号(9月13日)

研究活動の不正行為への対応(上)

文部科学省がガイドライン

 1面に掲載のとおり、科学技術・学術審議会総会において、研究活動の不正行 為に関する特別委員会が「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについ て」の報告書を公表した。同報告書は、第一部・研究活動の不正行為に関する基 本的考え方、第二部・競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドラ インで構成されている。このうち第二部の概要を二回にわたって掲載する。

 ▽不正行為
 ク捏造=存在しないデータ、研究結果等の作成
 ケ改ざん=研究資料・機器・過程を変更する操作でデータ、結果等を真正でな いものに加工
 コ盗用=他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又 は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用
 ▽対象となる競争的資金
 科研費、科技振興調整費、二十一世紀COEプログラム、キーテクノロジー研 究開発の推進、地球観測システム構築推進プラン、原子力システム研究開発事 業、戦略的創造研究推進事業、先端計測分析技術・機器開発事業、革新技術開発 研究事業、独創的シーズ展開事業、産学共同シーズイノベーション化事業、地域 結集型研究開発プログラム、重点地域研究開発推進プログラムの一三制度のほ か、課題採択過程において競争的な要素を有するものとして、私立大学学術研究 高度化推進事業がある。
 ▽告発等の受付
 ク受付体制=研究機関及び資金配分機関は告発窓口を設置する。窓口の名称・ 場所・連絡先・受付方法などを定め、機関内外に周知。告発等の受付や調査・事 実確認担当の者が自己との利害関係を持つ事案に関与しないようにする。
 受付から調査に至る体制について、責任者として例えば理事、副学長等適切な 者を指定し、必要な組織で対応する。内部規程を定め公表する。
 ケ告発等の取扱い=原則顕名による。告発の事案の内容が明示され、かつ不正 とする科学的合理的理由が示されているもののみ受付ける。匿名の場合も内容に 応じ、顕名の場合に準じた取扱いとする。告発の意志を明示しない相談でも、相 当の理由がある場合は、研究機関等の判断で調査を開始できる。
 コ告発者・被告発者の取扱い=告発を受付ける場合、個室で面談したり、窓口 の担当者以外は見聞できないようにする。研究機関等は、悪意に基づく告発を防 止するため、原則として顕名によるもののみ受付け、告発者に調査協力を求める 場合があること、調査の結果、悪意が判明した場合は、氏名公表や懲戒処分、刑 事告発があり得ることを機関内外に周知。研究機関等は、悪意であることが判明 しない限り、解雇や配置転換、懲戒処分、降格、減給等を行ってはならない。
 ▽告発等による調査
 ク調査を行う機関=原則として告発のあった当該研究機関が調査する。
 ▽告発等に対する調査体制・方法
 ク予備調査=告発を受付け後速やかに告発内容の合理性、調査可能性等につい て予備調査を行う。その結果、本調査を行うかどうか判断する。本調査を行わな い場合はその旨を告発者に通知する。
 ケ本調査=本調査決定の場合には、告発者及び被告発者にその旨通知し、協力 を求める。調査に当っては、告発者が了承した場合を除き、調査関係者以外の者 や被告発者に告発者が特定されないよう周到に配慮する。
 調査機関は、本調査に当たって、当該研究分野の研究者であって、当該調査機 関に属さない者を含む調査委員会を設置し、その氏名・所属を告発者、被告発者 に示す。(異議申立て可)
 本調査は、当該研究に係る論文や実験・観察ノート、生データ等の各種資料の 精査や関係者のヒアリング、再実験の要請などによって行われる。調査対象に は、調査委員会の判断により調査に関連した他の研究をも含めることができる。
 なお、証拠の資料等の保全措置をとる。調査機関が研究機関である場合は、告 発等に係る研究に対する資金配分した機関の求めに応じ、調査終了前であって も、調査の中間報告を当該資金配分機関に提出する。
 ▽認定
 ク認定=調査委員会は本調査の内容をまとめ、不正行為が行われたか否か、不 正行為と認定された場合はその内容、関与した者とその関与の度合、研究に係る 論文等の各著者の当該論文等及び当該研究における役割を認定する。
 不正行為がなかったと認定される場合で、調査を通じて告発が悪意に基づくも のであることが判明したときは、併せてその認定を行う。告発者には弁明の機会 を与える。
 ケ不正行為の疑惑への説明責任=被告発者が疑惑を晴らそうとする場合には、 科学的根拠を示して説明しなければならない。そのために再実験等を必要とする ときには、その機会が保障される。被告発者が本来存在するべき基本的要素の不 足により証拠が示せない場合は不正行為とみなされる。
 コ不正行為か否かの認定=調査委員会は被告発者の説明を受けるとともに、物 的・科学的証拠、証言、被告発者の自認等の諸証拠を総合的に判断して、不正行 為か否かの認定を行う。
 サ調査結果の通知及び報告=調査機関は、調査結果を速やかに告発者及び被告 発者に通知する。被告発者が調査機関以外の機関に所属している場合は、当該所 属機関にも通知する。また、悪意に基づく告発の認定があった場合、告発者の所 属機関にも通知する。
 シ不服申立て=不正行為と認定された被告発者は、あらかじめ調査機関が定め た期間内に不服申立てができる。悪意に基づくものと認定された告発者も、その 認定について不服申立てができる。
 不服申立てがあった場合には、調査委員会はその趣旨、理由等を勘案し、再調 査を行うか否かを速やかに決定する。
 ス調査資料の提出=資金配分機関は、調査機関に対して調査が継続中であって も、資料の提出または閲覧を求めることができる。調査機関は、調査に支障があ る等、正当な事由がある場合は拒むことができる。
 セ調査結果の公表=調査機関は、不正行為の認定があった場合は、速やかに調 査結果を公表する。公表する内容には、少なくとも不正行為に関与した者の氏 名・所属、不正行為の内容、調査機関が公表時までに行った措置の内容に加え、 調査委員の氏名・所属、調査の方法・手順等が含まれるものとする。
 ただし、告発等がなされる前に取り下げられた論文等に不正行為があったと認 定されたときは、不正行為に係る者の氏名・所属を公表しないことができる。
 調査機関は、不正行為がなかったと認定した場合には、原則として調査結果を 公表しない。(つづく)

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