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平成18年9月 第2245号(9月13日)

私大協会創立60周年
大学図書館司書主務者研修会開催
外部資金活用など意識改革が必要

メインテーマ 全入時代の大学図書館

 「全入時代の大学図書館」をメインテーマとした日本私立大学協会(大沼 淳会長)の平成十八年度「大学図書館司書主務者研修会」(担当理事=石田恒夫広島経済大学理事長・学長、委員長=吉村善太郎京都外国語大学図書館副館長)は、去る八月三十日から九月一日まで、京都市内のホテルに加盟三七一大学から一一二大学一三二名が参加して開催された。私立大学の経営環境が一層厳しさを増す中での研修会は、記念講演のほか、外部資金の活用、教育研究支援機関としての大学図書館などについての講演、班別研修で熱心に討議が行われ、最終日には視察研修が実施された。各講師からは、私立大学の現状、図書館員の意識改革、図書館員からの主体的な教育支援の発信など、それぞれのテーマに則った解説があった。

 開会にあたり同協会の小出秀文事務局長から、「今回の研修会は、全入時代の大学図書館というテーマのもと、三日間の日程で行われます。各大学での改革・改善に結びつけられるような成果を収めていただきますよう念願しております」と開会の挨拶を行った。
 続いて、森田嘉一同協会副会長・関西支部長(京都外国語大学理事長・総長)、石田担当理事、吉村委員長からそれぞれ挨拶が行われた。
 森田支部長からは、「高等教育を取り巻く情勢が、いろいろな意味において変化しつつあるときに、教育・研究の実をあげていく大きな中核となるのが図書館、情報センターです」と、石田担当理事からは、「本年度は私大協会創立六〇周年の節目の年にあたり、この間、一貫して私学振興と高等教育の充実に努めてきました」と述べるとともに、研修会の日程、講師の紹介が行われ、吉村委員長からは、「大学図書館のとるべき役割も一層重みを増しております」などと述べた後、研修に入った。
 はじめに、小出事務局長から「私立大学を取り巻く諸情勢について」、同協会創立六〇周年の軌跡と私学振興上の諸課題、私立学校法の一部を改正する法律、被用者年金一元化問題、学校教育法の一部を改正する法律、私学経営を巡る諸問題等について丁寧な説明が行われた。
 二番目は、「みやこの祭―その諸相と本質―」と題して、芳井敬郎花園大学副学長・文学部教授からの記念講演では、京都には数多くの神社、寺院があり、それぞれに祭りがあることから、一月は初詣、四方拝の儀(護王神社)、若水祭(御香宮)、白馬奏覧神事(上加茂神社)、通し矢(三十三間堂)など、各月ごとの代表的な祭りの紹介が行われた。祭りは、この世の顔でなく、化粧をしたりお面をかぶることや、本来は山にいる神を必要に応じて里に迎えて神をなぐさめるのが祭りであることなど興味深い解説があった。
 三番目は、総論「全入時代における私立大学と大学図書館」と題して、森 茜(財)国連大学協力会理事・事務局長から、全入時代の私立大学の現状について、一八歳人口及び高等教育機関への入学者数や進学率等の推移、収支が悪化している学校法人の推移、次に大学の生き残りをかけた改革と認証評価について、大学改革の歩み、大学改革に関する取組みなど、さらに大学運営と図書館改革について、サービス状況など、それぞれの資料をもとに丁寧な説明が行われた。
 二日目の最初は、読書運動プロジェクト「フェリスの一冊の本」と題して、加藤庸子フェリス女学院大学附属図書館事務室長から、平成十七年に、「読書運動」で特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)を、「地球温暖化抑制に向けた環境教育」に関するものと、「若い女性の視点からの音楽コンテンツ創造」に関するもので、現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)を同時に獲得したこと、特色GPは、はじめから計画したものではなく、大学全入時代を迎えて、経営的に図書館でも何かできる企画はないかと考え、フェリスの建学の精神に基づいて行ってきたこと、さらに今後、情報発信や読書の種を蒔く活動を進めている旨の説明があった。
 二番目に、「大学図書館の外部資金活用〜国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の充実について」と題して、荒木秀治文部科学省高等教育局大学改革推進室改革支援第一係長から、大学改革のこれまでの取組や我が国の高等教育の将来像などについての説明の後、特色GP、現代GPの公募内容を中心に、国公私立大学を通じた大学教育改革の支援の充実の各プログラムについて解説が行われた。特にどのような分野でも応募できるという意味では、特色GP、現代GPの申請は可能で、図書館関係でも検討のうえ、相談してほしいと呼びかけた。
 最後に、「教育研究の高度化と大学図書館の役割〜立命館大学の経験」と題して、大島英穂立命館大学図書館事務部長から、学園創造と図書館について説明の後、図書館サービスの質の向上を図るために、同大学出資の子会社に業務委託を図り、サービスの拡大とコストの両立に取り組んだ。このことから、図書館の専任職員に期待されるのは、マネジメント能力であること、利用者のニーズを汲みあげて改善していくことが大切であると述べた。
 休憩をはさんで、大学図書館の管理運営と実務について六班に分かれて班別研修が行われた。
 研修最終日は、国立国会図書館関西館と京都大学附属図書館に分かれて視察研修が行われ、すべての日程を終了した。

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