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平成18年9月 第2244号(9月6日)

3期科技計画受け大幅増 科学技術・学術研究3局の概算要求

 1 面に掲載のとおり、文部科学省は八月末に、十九年度概算要求を財務省に提出した。科学技術・学術研究三局は、本年度から始まった第三期科学技術基本計画や総合科学技術会議の様々な意見具申を受け、(1)科学技術関係人材の育成、確保、活躍の促進、(2)基礎研究の充実とイノベーション・システムの強化、(3)国家基幹技術など戦略重点科学技術への重点投資、(4)国際活動の戦略的推進を柱としている。主要事項の概要は次のとおり(カッコ内は前年度予算額との比較増分)。なお、項目には再掲・一部再掲も含まれる。

 ◇科学技術創造立国の実現
 1. 科学技術関係人材の育成、確保、活躍の促進
 一、次代を担う人材への理数教育の充実―一八六億三六〇〇万円(九五億一九〇〇万円)
  ○概要:次代を担う科学技術関係人材を養成するため、子どもが科学技術に親しみ、その能力を伸長することができる効果的な環境を提供する。
  ▽理数好きな子どもの裾野の拡大―理科支援員等配置事業【新規】―六〇億円、ティーチャーズ・サイエンスキャンプ(理科教員指導力向上研修)【新規】―五億円
  ▽理数に興味・関心の高い生徒・学生の個性・能力の伸長―スーパーサイエンスハイスクール―一四億四九〇〇万円、国際科学技術コンテスト支援―五億円
 二、若手、女性、外国人が活躍できる環境の形成―六五五億八四〇〇万円(八五億一九〇〇万円)
  ○概要:わが国は少子高齢化を迎え、科学技術関係人材の質と量の確保を巡る懸念が高まっている。このため、世界をリードする質の高い研究者を養成するとともに、若手、女性、外国人など多様な人材が能力を発揮できる創造的、競争的な環境を整備する。
  ▽若手研究者の自立支援―「若手研究(S)」(仮称)の創設(科学研究費補助金)【新規】―二二億円、若手研究者の自立的研究環境整備促進(科学技術振興調整費)―五〇億円、若手研究者への国際研鑽機会の充実【新規】―一二億九四〇〇万円
  ▽女性研究者の活躍促進―女性研究者支援モデル育成(科学技術振興調整費)―一〇億円、出産・育児等による研究中断からの復帰支援(特別研究員事業)―四億三七〇〇万円
  ▽外国人研究者の活躍促進―六八億二一〇〇万円
 三、大学における人材育成機能の強化と産学が協働した人材育成―一一五五億二〇〇〇万円(二九七億二〇〇〇万円)
  ○概要:大学院教育の抜本的強化や卓越した教育研究拠点の形成、人材養成面での産学連携の強化などにより、社会のニーズに対応した人材養成を行うとともに、博士号取得者等の科学技術関係人材が社会の多様な場において高度な専門性を生かして活躍することを促進する。
  ▽大学における人材育成―大学院教育実質化推進プログラム【新規】―一〇四億三四〇〇万円、グローバルCOEプログラム【新規】―二三〇億八七〇〇万円)、特別研究員事業(大学院博士課程在籍者)―一一六億八八〇〇万円
  ▽産学が協働した人材育成―サービス・イノベーション人材育成推進プログラム【新規】―四億五〇〇〇万円、ものづくり技術者育成支援事業【新規】(八億円)、ものづくり人材育成のための専門高校・地域産業連携事業【新規】―一〇億二〇〇〇万円
  ▽博士号取得者の産業界での活躍促進―科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業―七億四六〇〇万円
  四、科学技術に関する理解と意識の醸成―九五億七六〇〇万円(八億八〇〇〇万円)
  ○概要:「社会のための科学技術」を実現するため、科学者等がわかりやすく親しみやすい形で国民に科学技術を伝え、国民との対話を通じて説明責任と情報発信を強化する活動を推進する。また、国民が適切な判断の下に行動していくことができるよう、国民が科学技術に関する基礎的な知識や能力を身につけ向上させることに資する取組を推進する。
  ▽地域の科学舎推進事業―九億六二〇〇万円、▽独立行政法人国立科学博物館―五〇億三一〇〇万円、▽日本科学未来館―二九億三八〇〇万円

 2. 基礎研究の充実とイノベーション・システムの強化
 一、独創的・先端的基礎研究の推進
 (1)大学・大学共同利用機関等における独創的・先端的基礎研究の推進―一〇一八億六八〇〇万円(八一億九五〇〇万円)
  ○概要:大学・大学共同利用機関等において、世界をリードする研究成果を生み出す独創的・先端的な基礎研究を、全国の大学等から研究者が集って、施設・設備や学術資料等を共同で利用し、効果的な共同研究を進める学術研究システムである全国共同利用体制により推進する。
  ▽「スーパーカミオカンデ」によるニュートリノ研究の推進、▽大強度陽子加速器計画(J―PARC)の推進(高エネルギー加速器研究機構)、▽アルマ計画の推進、▽「大型光学赤外線望遠鏡『すばる』」による天文学研究の推進等
 (2)世界トップレベル研究拠点の構築【新規】―七六億円(再掲)
  ○概要:すでに世界的レベルに達している研究グループに対して資金を追加的に集中投入することにより、世界トップベルの研究拠点構築を加速する。(科学技術振興調整費)
 二、競争的資金の拡充等による研究開発の推進―四二六〇億六七〇〇万円(六七六億五九〇〇万円)
  ○概要:研究費の選択の幅と自由度を拡大し、競争的な研究開発環境の形成に貢献するとともに、イノベーションの源を潤沢化するため、科学研究費補助金等の競争的資金の拡充を図る。その際、府省共通研究管理システムの構築等を通じて、研究費の効果的・効率的運用を一層徹底するとともに、研究活動の不正行為に適切に対応していく。
  ▽競争的資金の拡充―科学研究費補助金―二一〇六億円、戦略的創造研究推進事業―五二一億五一〇〇万円、科学技術振興調整費―四七四億円、グローバルCOEプログラム【新規】―二三〇億八七〇〇万円
  ▽間接経費に関する調査研究事業の新設(私立大学間接経費加算措置等調査研究事業)【新規】―一億二〇〇〇万円
  ▽研究費の効果的・効率的運用の一層の徹底、府省共通研究開発管理システムの構築・運用(平成十九年度中に運用開始)―一億四〇〇〇万円、研究費の執行に係る指導・助言を強化するための体制整備【新規】―三二〇〇万円
 三、イノベーションを生み出すシステムの強化
 (1)基礎研究からの技術シーズの創出―六一〇億五一〇〇万円(一〇一億一〇〇〇万円)
  ○概要:基礎研究からイノベーションの種となる技術シーズを創出するため、競争的資金の制度改善や、優れた研究課題のポテンシャルを見極め、より効果的に研究開発を進める仕組みを導入する。
  ▽戦略的創造研究推進事業―五二一億五一〇〇万円
  ▽イノベーション可能性研究【新規】―三五億円
 (2)産学官連携の本格化と加速―四五二億四五〇〇万円(一四〇億七六〇〇万円)
  ○概要:産学官連携・知的財産戦略は、独自の基礎研究成果から絶えざるイノベーション創出を実現していくための重要な手段であり、その持続的・発展的な展開に向けて本格化と加速を図る。
  ▽大学等の体制整備の推進・システム強化―四〇億八五〇〇万円―優れた研究成果について、応用・発展性の評価分析等を実施し、切れ目なく実用化につなぐ仕組みを構築する。【新規】―五億円
  ▽大学等の研究成果を基にした本格的な共同研究や技術移転に係る研究開発支援の推進―二三億二〇〇〇万円
 (3)地域イノベーションの強化―三二五億八〇〇〇万円(七九億七〇〇万円)
  ○概要:地域の大学等を核に、産業ニーズ等を踏まえた新技術シーズを生み出すための産学官共同研究を実施し、新技術・新産業の創出等を図る。
  ▽「地域クラスターの形成」の支援―一六六億八七〇〇万円
  ▽地域イノベーション創出総合支援事業―一三二億九二〇〇万円
 四、科学技術振興のための基盤の強化―六五九億八七〇〇万円(二一九億七一〇〇万円)
  ○概要:先端的な研究施設・設備・機器、研究情報基盤や知的基盤等は、独創的・先端的な基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般を支える基盤として不可欠であることから、その整備や効果的な利用を促進する。
  ▽先端研究施設共用型イノベーション創出プログラムの推進【新規】―四五億円
  ▽先端計測分析技術・機器開発プロジェクトの推進―一二四億七五〇〇万円
  ▽特定先端大型研究施設の整備・共用の推進―二七四億八〇〇万円
  ▽研究開発に関する情報化の推進―五四億六二〇〇万円

 3. 国家基幹技術など戦略重点科学技術への重点投資
 一、分野別研究開発の戦略的推進
 (1)ライフサイエンス―八八六億八一〇〇万円(一八七億七二〇〇万円)
 (2)情報通信―六二七億八一〇〇万円(一〇七億九九〇〇万円)
 (3)環境―九七一億六九〇〇万円(二九四億八五〇〇万円)
 (4)ナノテクノロジー・材料―四一二億五八〇〇万円(一二〇億三八〇〇万円)
 (5)原子力―二八五四億八一〇〇万円(一八〇億一〇〇〇万円)
 (6)宇宙・航空―二二八五億八二〇〇万円(四八二億七四〇〇万円)
 (7)南極観測・海洋地球科学技術―六〇〇億三七〇〇万円(一三三億九一〇〇万円)
 (8)地震・防災―二九三億五一〇〇万円(八八億四〇〇〇万円)
 (9)ものづくり技術―七〇億九一〇〇万円(二二億四〇〇〇万円)
 (10)新興・融合分野―一六四億九一〇〇万円(二六億三六〇〇万円)
 二、国家機関技術への集中投資
 (1)宇宙輸送システム―四四三億六二〇〇万円(一八八億二三〇〇万円)
  ○概要:我が国が必要な時に、独自に宇宙空間に必要な人工衛星等を打ち上げる能力を確保・維持するための「宇宙輸送システム」は、極めて高い信頼性をもって製造・運用する技術が要求され、幅広い分野に波及効果をもたらすため、長期的な国家戦略の下に推進する。
 (2)海洋地球観測探査システム―三三八億六〇〇万円(一九二億九〇〇万円)
  ○概要:地球規模の環境問題や大規模自然災害等の脅威に対する危機管理を自律的に行うとともに、エネルギー安全保障を含む我が国の総合的な安全保障を実現するため、衛星による全球的な観測・監視技術と海底探査技術等により多様な観測データを収集・統合、解析及び提供するシステムを構築する。
 (3)高速増殖炉サイクル技術―三一〇億八〇〇〇万円(六九億五四〇〇万円)
  ○概要:使用済燃料を再処理し、回収されるウラン・プルトニウム等を高速増殖炉で有効利用する高速増殖炉サイクル技術を確立することにより、長期的なエネルギー安定供給を確保することは、国の存立基盤をなす重要な課題であり、国家基幹技術として強力に研究開発を推進する。
 (4)次世代スーパーコンピュータ―八七億円(五一億五三〇〇万円)
  ○概要:平成二十三年度からの共用開始を目指し、世界最先端・最高性能の一〇ペタフロップス級計算機システムの開発・整備及び、スーパーコンピュータを最大限利活用するためのソフトウェアの開発・普及等を総合的に推進する。
 (5)X線自由電子レーザーの利用開発―七七億六四〇〇万円(五四億五八〇〇万円)
  ○概要:現在の一〇億倍を上回る高輝度のX線レーザーを発振し、原子レベルの超微細構造、化学反応の超高速動態・変化を瞬時に計測・分析することを可能とする世界最高性能の研究施設を平成二十三年度からの共用開始を目指して整備する。また、ライフサイエンス分野やナノテクノロジー・材料分野など、様々な科学技術分野に新たな研究領域を開拓し、欧米に先んじる成果の創出を目指す。
 三、安全・安心に資する科学技術の推進―一九〇億一二〇〇万円(三五億七二〇〇万円)
  ○概要:第三期科学技術基本計画においては、「社会国民に支持され、成果を還元する科学技術」を基本姿勢とし、「安全が誇りとなる国―世界一安全な国・日本を実現」を一つの政策目標としていることに基づき、安全・安心な社会の構築に資する科学技術の研究開発等を推進する。
  ▽安全・安心に資する科学技術の推進【新規】―八億九三〇〇万円
  ▽個々の脅威に対する対策技術の研究開発等―一八一億一〇〇〇万円
 四、経済活性化のための研究開発プロジェクトの推進―九〇一億七七〇〇万円(四八一億三六〇〇万円) ○概要:我が国の経済を活性化するため、大学等での研究開発の成果や産学官の技術力の活用等により、実用化を視野に入れた研究開発プロジェクトを戦略的に推進する。
  ▽リーディングプロジェクト(LP)の推進―二五四億六九〇〇万円
  ▽キーテクノロジー研究開発の推進―二〇〇億四三〇〇万円
  ▽世界最高性能の研究設備(次世代スーパーコンピュータ、X線自由電子レーザー)の整備―一六四億六四〇〇万円
  ▽宇宙・航空分野における産業化・利用の推進―一五九億六四〇〇万円

 4. 国際活動の戦略的推進
 一、科学技術の国際活動の強化に向けた取組―二〇八億六一〇〇万円(四一億六五〇〇万円)
  ○概要:「知」をめぐる世界的な国際競争の激化や、国際協力が求められる課題の増加に伴い、科学技術・学術分野の国際活動への取組みの強化が求められている。また、国内における研究環境の整備や就業支援などによる優秀な外国人研究者の定着促進や若手研究者の海外での活躍・研鑽機会の拡大を図る必要が高まっている。このような状況を受け、以下の取組について重点的に推進する。
  ▽外国人研究者の定着促進支援プログラム【新規】―一億八七〇〇万円
  ▽戦略的国際科学技術協力推進事業―二二億円
  ▽若手研究者の海外での活躍・研鑚機会の拡大―二八億四三〇〇万円
  ▽アジア諸国との協力―二九億六〇〇〇万円

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