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平成26年3月 第2557号(3月19日)

 私大協会・地方7大学 学長紙上座談会

  “地域を共に創る”全国私大の切実な声
  地域の衰退に歯止めをかける私立大学の挑戦

 平成25年7月、日本私立大学団体連合会は「私立大学アクションプラン」をまとめた。その重要なプランの一つが「地域共創」である。これは日本私立大学協会が創り出した造語であるが、大学は単に地域と連携したり地域に貢献したりするというだけではなく、一心同体の共に創るパートナーであるとの認識からである。
 一方、同協会には400校にのぼる加盟大学があり、その過半数は全国の地域に立地している。このたびは、「地域の声をもっと政策に届けたい」との大沼 淳同協会会長の呼びかけにより、各支部で地域共創に取り組まれている大学を編集部で選ばせて頂き、全国の加盟大学のうち、北海道支部からは旭川大学、東北支部からは東北福祉大学、関東地区連絡協議会からは新潟国際情報大学、中部支部からは松本大学、関西支部からは奈良大学、中四国支部からは吉備国際大学、九州支部からは志學館大学の各学長から意見を頂いた。その上で、紙上座談会の形式に取りまとめた。(敬称略)

地方私大の学生募集戦略

大沼(司会):日本私立大学協会の会長を務めております、文化学園大学理事長の大沼です。
 「大学の数が多い」、社会ではこうした言説がたびたび飛び交います。しかし、これは大いなる誤解であり、多くは人口流出を食い止め、地域を活性化させる機能も担っているのが地方の中小規模私立大学です。こうした大学が定員割れを理由に閉鎖したらどうなるのか。ますます若者の流出が進み、地域の活力が失われていくのです。
 文部科学省が昨年から始めた「地(知)の拠点整備事業」、いわゆるCOCにもそのような意図があったのだろうと思いますが、ふたを開けてみると、多くの国立大学が採択されました。これには多くの私学人が憤りを感じておりますが、採択・不採択に関わらず、地域と大学は一蓮托生、共に生きていくより道はありません。
一方、教育学術新聞では、新年号の新春座談会で、主に私を含めた日本私立大学協会の役員が出席して、私学振興に関わる様々な政策提言などを行っておりますが、やはり地域で取り組む大学からの主張が若干、弱いかなと感じています。
 このたびは、私の願いもあり、私が考えた三つの課題について、主に地域で取り組む加盟大学の学長7名から意見を頂きました。
 まず、一つ目が、「法人(大学)の経営基盤の充実に向けた学生確保」についてです。地域の中小規模大学にとって、最重要テーマの一つは入学定員を確保することだろうと思います。経営基盤の充実なくして、質の保証等大学改革も十分にはできないのです。まず始めに、先生方の大学で取り組まれている学生確保策について、地域との連携も含めてお教え頂ければと思います。
 まずは平山先生からいかがでしょうか。
平山:新潟国際情報大学の平山です。
 大学の経営基盤における学生確保は、その収入の大半を授業料に依存する私立大学にとっては正に生命線です。しかし、もともと国公立大に比べて授業料が高いというハンディを負っているうえ、高卒18歳人口の減少が比較的多い地方に立地しているため、経営基盤は近年極めて厳しい状況になってきています。学生確保に絶対的な方法はありませんが、本学では学長、教職員が手分けして県内高校を訪問、PRに努めると同時に大学へのニーズの把握に努めているところです。
 そうした中で、「国際化・情報化という二つの時代潮流に応えられる人材育成」という建学のミッションをより叶え、より魅力と専門性を高めるべく、これまで情報文化学部1学部だったのを本年4月より2学部制に改組し、国際学部を新設しました。これにより、語学留学制度の充実、英語集中コースの新設等も行うほか、情報分野についても、「人間生活すべてに情報は関係している」との考えから、システムを作るだけでなく、使いこなせる人材育成を強化すべく経営コースなどを強化しました。
 また、学生確保のために緩和しがちな入試条件を、逆に「3科目から2科目選択」を「3科目受験」と強化することで、大学のレベルアップの姿勢を明確に打ち出しました。
 それから高大連携については、本学主催による「高校生英語スピーチコンテスト」の実施、オープンキャンパスでの高校生向け模擬授業の充実などを図っております。
大沼:ありがとうございます。厳しい立地条件の中で試験科目を強化させるなど、色々な改革に取り組む姿が感じられます。続いて、住吉先生はいかがでしょうか。
住吉:松本大学の住吉です。
 本学では、一言で言うと、「A“B”CDポリシーに基づく学びで「学力=専門&教養」と「社会人力」を鍛えること」を目指しています。
 すなわち、アドミッション(A)、カリキュラム(C)、ディプロマ(D)の三つのポリシーを明確にした上で、入学後は学部・学科に特徴的な「専門性」に加え、コミュニケーション能力等に代表される「社会性」を兼ね備えた人間として、社会に送り出します。こうした原則的な教育活動が展開できていれば、有利な就職活動にもつながります。入口→中身→出口→入口という好循環の達成とその維持のための弛まぬ努力が、学生確保の王道と考えています。
 本学では、様々な資格の取得を含めた「専門の力」の向上、将来の社会が待ち受ける複雑な諸課題に対応できる“幅広い視野・洞察力と基礎的技術”など「教養の力」が、身に付けるべき学力だと考えております。もう一つの「社会人力」は、地域との交流を伴う学びの過程の他に、学友会等の自主活動でも多様な意見を汲み上げ運営するといった社会性を試される場面が多いので、これを大学がバックアップ(“B”)するポリシーとして、『負荷をかけ、それを乗り越えさせてこそ「自信」の獲得につながる』として、重視しているところです。
 こうした考えや、教育成果としての就職実績を入試・広報担当が、県内および近県の高校へ伝える努力をしています。
大沼:住吉先生、ありがとうございます。ユニークな四つのポリシーのお話でした。次に、山内先生お願いをします。
山内:旭川大学の山内です。
 本学は北海道北部の旭川市に立地しております。旭川市は人口35万人で仙台以北第3の規模ですが、札幌の5分の1であり周辺の過疎化が激しく、経済不況と相まって「少子高齢化」という地方私大の共通する構造的危機の最も弱い環を形作っていると言えるでしょう。今年三月をもって東海大学旭川キャンパス(芸術工学部)は閉校となり、札幌キャンパスに吸収されました。
 学校基本調査(文部科学省)のシミュレーションによる「大学進学者減少予測」によると2013年を100とした指数で、10年後の2023年では全国は83に対し、北海道は75となっています。ただ、北海道はエリア占有率が7割近くあり、課題は、札幌圏への流出をどう防ぐかが大きいのです。
 対策としては、第一に地域貢献の理念の具現化を図る教育研究実践を示していくこと、第二に市内、道北の高校と高大連携など密なコミュニケーションを醸成すること、そして第三に貸与制を含む奨学金の充実、特待生制度の活用等を重視しております。
大沼:山内先生、ありがとうございます。課題先進県の北海道でのお取り組みを伺いました。萩野先生、いかがでしょうか。
萩野:東北福祉大学の萩野です。
 学生の確保については、インターネット出願等の入試改革やキャリア支援による就職率向上等の対策はもちろん講じていますが、大学の使命である教育・研究・社会貢献を確実に実行するとともに、社会が求める人材育成に向けて常に改革を続けていくことが重要であると思慮しているところです。
 本学の取組については、本年度文部科学省が実施した私立大学等改革総合支援事業(タイプ1=大学教育質転換型、タイプ2=地域特色型、タイプ3=多様な連携型)の全てに選定されたこと、また、入学時アンケート(入学時重視した事項)でも、「資格、教育内容」「社会貢献、地域貢献」が特に重視されていたことからも客観的に評価されているところです。
 建学の精神である「行学一如」を実現するため、健康・福祉・保健・医療、子育て支援、特別支援教育、生涯学習等の地域への提供や関連法人による福祉施設・認知症介護研究研修施設の設置・運営、エネルギーセンター(ガス、太陽光等によるコージェネレーション発電)の設置等、子どもから高齢者まで、地域の課題解決から政府の政策の推進までの様々な社会貢献を「行」の一環として教育・研究に活かしていることが、学生確保に繋がっていると確信しています。
大沼:建学の精神と地域での連携活動が見事に結びついたお取り組みでした。続いて、清水先生はいかがですか。
清水:鹿児島の志學館大学の清水です。
 本学では3年前に大学移転が成功し、学生数がV字回復しました。しかし、県では少子化が進み、また、4年制大学への進学率はずっと全国最低で30%を下回っています。今後も、いわば下りのエスカレーターを登っていかなければ、定員が維持できない困難な状況が続いていきます。
 この状況における学生確保の主要な方策が、地域における優れた大学としてのブランドの確立なのです。そのために特に、教員がボランティアで行う課外講座を広く整備し、そこでの各種資格試験や採用試験等の合格実績をテレビなどで広く地域の人々に知ってもらえるようにしました。合格等の一例をあげれば、有力法科大学院への進学を指導し、今年度初めて司法試験合格者を出し、今後も合格者が毎年出る予定です。課外講座受講者数は延べで全学生の3分の1になっています。これらの合格(率)は地域に対する分かりやすい指標ではありますが、全学的な学士力の質保証のための教育改革が課外講座を後ろで支えていることは言うまでもありません。
 また、「地域協働センター」を創設しまして、地域の中小企業との産学連携や、近隣地域のコミュニティ活動への参加を行うことでブランド作りにも励んでいるところです。
大沼:ありがとうございます。地域協働センター等の活動を通じてのブランドづくりなど努力されているお話でした。続いて、石原先生いかがでしょうか。
石原:奈良大学の石原です。
 本学は、奈良での学習を目指して全国から学生が集まる全国区型の大学ですので、学生確保のためには全国での知名度を高めることを第一に考えています。
 そのため、奈良大関係者の研究成果を解りやすい形でまとめたシリーズ本『奈良大ブックレット』を、出版社から出版し、全国の書店で市販し好評を得ています。
 また、地歴甲子園とも称している「全国高校生歴史フォーラム」を、既に7回に亘って主催しています。これは、高校生の歴史や地理の研究成果を奈良の地で発表してもらうイベントで、年々盛んになっています。
 また、本学の通信教育部文化財歴史学科は、生涯学習の場として人気があり、関東地方から最も多くの学生を集めています。
 とは言うものの、通学部の入学生の約半数は近畿地方一円の学生です。したがって近畿地方中心に各高校への訪問によるPRは、他大学同様、入学センター職員によって継続的に行っています。教員による出前授業も積極的に行っていますし、地元奈良県の公立高校で実施している郷土学習「奈良タイム」への協力なども実施しています。とりわけ繋がりの深い一部の高校については、学長による高校訪問、高校生・保護者の大学訪問で、連携を深めています。
大沼:奈良大学の特徴がいかんなく発揮されているようですね。次に、25年度のCOCに採択された吉備国際大学の取組について、松本先生お願い致します。
松本:吉備国際大学の松本です。
 本学は、日本人学生に関しては、最近、文系学部(学科)に応募してくる学生数が減少しています。このため、文系学部(学科)の再編と定員数減を図る一方で、医系や理系の学部・学科の増員や新設を考慮しているところです。
 また、留学生については、社会情勢から中国・韓国からの留学生が激減しております。近辺の留学生向け日本語学校では、中国・韓国に替わってベトナムやカンボジアなどの東南アジアからの学生が増加していますが、漢字が通じないため、従来の中国・韓国の学生のようには日本語が上達しないという現状があります。
 基本的に私共の学園では、その時代と社会の要望を見極めたうえで、要望の高い学部・学科の創設や再編を常に考えてはいますが、18歳人口の減少に伴い、生き残る大学としては、地域に密着し、地域発展に貢献出来る大学、すなわち、地域の行政や産業と密接に係わりあい、将来の地域発展に不可欠な人材を育成する大学にならねばならないと考えています。
 また、ひいては広く国際社会と日本社会の行く末をも見つめ、常に時代の先端を走って行く努力も必要であり、たとえ厳しい世の中になろうとも、常に前向きにチャレンジ精神を失わないよう頑張っていきたいと考えています。
大沼:皆さん、ありがとうございました。
 まさに、地域の問題から国際の問題まで、様々な取組がなされていることを伺いました。

多様な地域共創活動

 続いて、2点目の課題は、「地域の振興としての社会貢献」です。「地域の活性化なくして、大学の振興なし」「大学の振興なくして地域の活性化なし」と言われます。地域の活性化によって、地域の特徴や魅力が地域で共有され、高校生の地元定着や他地域からの流入なども期待されるのではないでしょうか。その意味で大学の他、地域としての取組が重要となります。かつてのGPや、このたびのCOC事業等もそのカテゴリに入ると言えます。他大学や自治体、企業等との連携について教えて下さい。
平山:おっしゃるとおり、大学の三つ目の役割としての「地域貢献」は、近年一層重要性を増していると認識しております。それは低迷する地域経済等を活性化するためこれまで以上に地域における「知」の拠点としての大学が重要になっているためです。そのため、県内大学コンソーシアムへの積極参加や、新潟市との市内大学連携研究(高齢化社会への地域対応)などに参加しております。
 本学は昨年開学20周年を迎えたのですが、新潟市の中心に10年前に設置した「中央キャンパス」で市民向け生涯学習講座「オープンカレッジ」を提供しています。本年、その10周年を迎え、年々参加者が増加していまして、すっかり市民に定着しました。25年度下期では文化・教養、資格、語学、パソコンなど174講座に1747人が参加し、一部企業からは社員の自己研鑚プログラムとしても活用されています。
 さらに、このキャンパスでは市民の皆さんが気楽に集える「コワーキング・ラボ」スペース(共同で利用できるオフィス)を提供しています。
 そして、「国際交流インストラクター養成講座」をGPプログラムで開始しましたが、現在は本学の授業として実施しています。この講座を受講した学生が県内小中高校を訪問し、外国の文化・歴史、風俗・習慣等について解説するプロジェクトを実施して、非常に好評を得ているところです。ほかにも地域からの要請も含めて収穫祭などのイベントに参加させて頂き、商店街の空き店舗への学生ショップの出店なども行っています。
 ユニークなところでは、学長講座の「地域経営」での演習で、学生が検討した「新潟市の活性化」案などを市に提言しています。
大沼:ユニークな「学長講座」については、別の機会にお聞きしたいですね。山内先生、いかがでしょう。
山内:実は私も講義を行っており、大学院で「地域教育文化論研究」を指導しています。理念にこだわりたいからです。
 本学の理念は、「地域に根ざし、地域を拓き、地域に開かれた大学」であり、地域貢献を目標とした教育研究を設立当初から追及しています。この点の「元祖」を自負しております。とりわけ、3・11以後の日本の姿を見ればこの歩みは正しかったと思います。
 この方針のために、北海道上川振興局、東神楽町等との連携協定や旭川市と市内四つの高等教育機関から成る「旭川ウェルビーイングコンソーシアム」を4年前に結成し、様々な取り組みをしています。
 最近は、生協や農協といった経済、生活の各機関との連携や、北海道新聞旭川支社、NHK旭川放送局といったメディア、三浦綾子記念文学館との連携と、地域活性化のための積極的政策を図っています。
 最近の特筆すべき例として、「限界集落」を教育研究として重視しています。この概念を定義した大野 晃教授を招へいし、その再生について地域研究所を中心に追及しています。
大沼:限界集落は、全国の地方でも課題になっていますね。今後の研究成果に期待したいと思います。萩野先生にお願いしましょう。
萩野:「大学は地域とともにある、大学と地域が協力し新しい価値を創り上げ、ともに発展する」=「地域共創」の取組の一つとして、「まごのてくらぶ」があります。地域社会の衰退や危機を乗り越えるためには、地域に愛着を持ち、課題を知り、解決のために行動する若者を育てることが大切であるとの考えのもと、学生サークル「まごのてくらぶ」を結成しました。祭りの神輿かつぎや防災パトロール、庭の草むしり、荷物の整理など痒いところに手が届く「孫の手」のような実践活動を通して、学生が接着剤となり、家族が繋がり、隣近所が繋がり、そして地域全体の絆が深まっていくことを期待しています。この取組は、大学(社会貢献センター地域共創推進室)、町内会、行政の三者が協定を結び、定期的に協議をしながら推進しているところです。
 また、COC事業の取組として、地域と地域を繋ぐ地域共創コーディネーター(仮称)の育成を目指しています。
 他大学との連携については、神戸学院大学、工学院大学と「防災・減災・ボランティアを中心とした社会貢献教育」を展開しています。
 企業等との連携については、地元企業や上場企業等と健康福祉分野における福祉機器や健康維持増進プログラムの研究、開発を行っています。実際に役立つものづくりを目指しています。
大沼:まさに「地域共創」を銘打った取り組みの実践ですね。ありがとうございます。次に清水先生はいかがでしょうか。
清水:本学では、「心理相談センター」と「発達支援センター」による地域での心理的ケア活動が大きな社会貢献活動です。九州で両センターを擁する大学は、九州大学と本学にしか存在しません。また、「生涯学習センター」による地域への教育資源の開放を地道に行っています。しかし、これらの活動は地域の振興に直接強く働きかけるものではありません。
 そこで今年度創設されたのが「地域協働センター」です。このセンターは、全学的に地域を志向する教育・研究と地域貢献を進める際に中心的役割を果たします。特に地域振興との関係について言えば、このセンターは、今後地域課題の解決にあたって、リーダーシップを取れるような地域コミュニティの成員に学生を育てるべく、地域のNPO法人や諸企業、諸コミュニティに派遣して、そこで研修を行うシステムとなるよう構築をしている最中です。
 このために中小企業同友会と産学連携協定を結んだり、事務職員によるプロジェクト・チーム(3名)を立ち上げ、大学所在地周辺の地域団体(町内会、公立学校、PTA、法人会など)からの要望を聞き取る作業を行っています。また教員にも年間1回の地域活動への参加を呼びかける計画を立てています。
大沼:「地域協働センター」の成功を期待しています。同様の取組をされている石原先生のところはいかがでしょうか。
石原:清水先生のところと同様に本学も、地域への社会貢献は附属の「地域連携教育研究センター」を中心に進めています。ここでは、地元の文化遺産のデジタルアーカイブ化、地元小学校区や中学校への教育上の協力、奈良県や京都府南部の要支援生徒への援助などを行っています。
 また、附属の「臨床心理クリニック」では、地域の臨床心理センターとして、カウンセリングや心理学的な訪問支援などを行っています。さらに、附属の「総合研究所」では、奈良市などとタイアップして、数多くの公開講座を開催しており、地元の生涯学習に貢献しています。
 また、地元奈良市、法隆寺の立地する斑鳩町、飛鳥保存財団、財団法人大和文華館、地元銀行の南都銀行などと連携協定を締結して、様々な地域貢献事業を行っています。例えば、斑鳩町との連携事業では、商工祭への参加のほか、藤の木古墳の公開事業への協力、未発掘古墳の発掘調査への協力など、奈良という土地と本学の特長を生かして貢献しています。
大沼:奈良大学の特徴がいかんなく発揮されているようですね。次に、25年度のCOCに採択された吉備国際大学の取組について、松本先生お願いします。
松本:本学は平成2年に岡山県高梁市から強く誘致を懇願されて創立した、地域に根差した私立の総合大学です。創立当初は中四国で最初の社会学部のみの単科大学でした。その後、次第に学部が増設され、平成26年4月からは六学部を有する総合大学となっています。また、昨年4月に兵庫県南あわじ市に開設した「地域創成農学部」は、10年来大学誘致を渇望していた南あわじ市の強い要望により、廃校となった高校跡地に設立され、高梁市と同様に南あわじ市と密接な連携の下に運営されています。
 本学は、これまで高梁市において、急速に進んだ「国際化」と「情報化」の中で取り残され、少子高齢化によって衰退に向かいつつある地方社会の再生・発展に貢献することを目指してきました。
 こうした中で平成25年に文科省より提示された「地(知)の拠点整備事業」に「だれもが役割のある活きいきした地域の創成」というテーマで応募し、岡山県内で採択された唯一の大学となりました。その要旨は次の通りであります。
 「本学が関係する岡山県の山間地域である「高梁市」と山里海の連環構造をもつ「南あわじ市」は、若年人口の減少、地域経済の低迷、社会的弱者の社会参加の困難性、観光事業の不振など共通の課題を背負っている。これら二つの自治体にまたがる本学は、各々のキャンパスで固有の教育・研究分野を有するが、それぞれの持つ特徴を互いに提供し利用することにより、さらには二つの自治体と連携・協働して、単独ではなしえないシナジー効果を生むことによって、地方の農村地帯が背負った課題の解決を図り、活きいきとした持続可能な地域社会を創成しようとするものである」
大沼:最後に、「課題解決型」の人材育成に焦点を置かれている松本大学の取組はいかがですか。
住吉:私は皆さんと少し意見が異なりまして、教育と社会貢献を分けるのではなく、学生を育てることが最大の社会貢献であり、結果として地域の振興につながると考えています。本学の本来的任務は、将来の地域社会を担う有為の人材を育てることだと心得ていますので、教員の研究活動や社会貢献活動も、教育活動との関係の中に位置付けています。
 学生は教員の指導・助言の下、フィールドワーク(アウトキャンパス・スタディ)を通して地域社会の課題を認識します。問題意識を持てば、インキャンパスでの学びにも積極的に取り組むことができますし、納得しながら問題の本質に迫っていけます。このような課題はいつも「正解」が未確立ですので、学びのスタイルは必然的に課題解決型となります。個別学習で蓄積した知識や独創性、交流や集団学習で得た協調性、コミュニケーション能力、プレゼンテーション能力など、社会が求める力が養成されていくのです。
 こうした能力育成に地域社会の持つ教育力を活かし、大学と一緒になり若者を育ててもらっています。その“見返り”として、地域社会は自分たちも育てた活力ある人材を得て活性化を図る、このWin―Winの関係性の成立が持続可能な地域貢献の源泉だと思っています。
大沼:ありがとうございました。
 各大学は、それぞれの歴史や方針に沿って地域での取組を行っていることが分かりました。

国立大の定員を減らし、 国私学費格差解消を!

 さて、最後の課題は「地方私学振興に向けた政策提案」です。これまでのお話の実現に向けた当協会としての事業や行政の施策に対する要望など、平素お考えになっている忌憚のないご意見を頂ければと思います。
萩野:では、忌憚なく(笑)。
 日本の人口は、2010年から急激に減少しはじめ、2040年には約1億700万人まで減ると推計されています。そのような状況の中でさらに東京圏一極に人が集中し、地方から人がいなくなっています。何の対策もせず放置すれば、地方の小規模自治体は消滅していくことでしょう。
 現実、宮城県内のある自治体は、昭和30年代に約5400人だった人口が、現在は約1700人まで減少しているのです。東京圏への一極集中を回避し、少子高齢・過疎に悩む小規模自治体を活性化させることが、持続可能な国づくりになると思慮しております。
 地方の少子高齢・過疎に悩む中、山間地域の自治体に大学の知と若い学生の力を注ぎ込み、産学官連携で自治体に活力を生み出していく必要があります。この待ったなしの状況に対して、国の全省庁が連携した国策として実施し、資金も投入して頂きたいです。
平山:全く同感です。「地域においても高等教育を受けることが出来る」という条件を整備・維持することは、道路・病院などと同じ“社会共通資本”の整備として必要なことと考えるべきというのが私の主張です。そう考えると、高等教育機関の地域的配備を全く考慮していない(各県に国立大学を配置しているので十分果たしているというのであれば不十分と言わざるを得ない)、現在の国公立大と私立大の競争条件上の不平等さは大きな問題と言えます。
 このまま行けば早晩、大学受験人口の減少は殆んど地域中小私立大学の定員割れ、閉鎖という結末で終わることが目に見えています。国家としては地域政策上地域の衰退を早めるこの筋書きでよいのか、と問いたい。単なる教育問題や、骨太の方針以来の「大学にも競争原理を!」ということで済ませてよい話であるはずがありません。日本という国が「人口減少下で高齢化が進む」という極めて困難な条件の中で、どういう地域政策を立てていくかがあって地域大学問題も論じられないと、「知」を失った地域は取り返しのつかないスピードで衰退します。
 例えば、私立大の定員割れに対する補助金カット率を強化したのを改め、むしろカット率を緩やかにした上で、教員の確保が困難にならないよう一定のカットまでに止めるといった施策を即急に実行して欲しいですね。
住吉:私も平山先生と同意見です。少子化時代だからこそ、定員問題(超過学生数への制限など厳しい対応を含む)にも、国は強力な指導性を発揮すべき時ではないでしょうか。努力する大学ならば、地方であっても健全経営ができるように、大都市とのバランスを考えるべきでしょう。これは大学だけではなく地方自治体の存亡にも関わる問題です。
清水:私もそう感じております。国立大学は現在の配分予算を減ずることなく、学生定員を減ずるべきです。このことは私立大学の経営に利するし、また国立大学の教育の質を上げることの一方途につながることでしょう。学生1人あたりの国の負担は増しますが、現行予算の増額になるわけではなく、それを上回る質の保証がなされればよいと思います。
平山:なるほど、私は大学進学希望者の減少に合わせて国公立大の定員も逐次引き下げ、それによって生じる運営費交付金の減少分を私立大の経常費補助に回すことを考えていましたが、そのような提案も可能ですね。
石原:やはり、まず何よりも、先進国で最低の我が国の高等教育費支出割合を、少しでも高めることが第一でしょう。次いで、公教育としての高等教育の八割を担っている私学に対する支出割合を、もっと高めることが第二だと思います。
 さらに言えば、私学助成の中で、経常費の助成が年々減少していることは、地方私学にとって特に痛手で、ぜひとも歯止めが欲しいところです。
住吉:国公私の学費の格差を縮めるべく、私学への助成金を大幅に増額すべきですね。
松本:私も賛成します。我が国の高等教育費はGDPのわずか0.5%であり、OECD加盟国28か国中最下位です。また国からの経常費や設備整備費の援助は国立大学では、私立大学の27.6倍であり、学生1人当たりでは13.5倍とされています。私立大学の財政は8割が学生の学納金で賄われ、公的資金はわずか10%程度です。何とかこの格差を是正してほしいものです。
大沼:皆さんのおっしゃる通り、我が国の高等教育への公財政支出(特に私学への支出)は大問題です。折あるごとに日本私立大学団体連合会としても、政府、与野党や文部科学省等に要請を繰り返しているのです。
清水:現在の国の財政状況では今後教育予算の増額は難しいことは理解していますし、また、今後の少子化の進展によって地方大学がつぶれることがあれば、その地方の疲弊は一層進むこととなります。そこで、地方大学優先の、また各地域の状況をより勘案した傾斜的な私学補助が考えられるべきでしょう。
石原:大学の設置認可にかかる規制緩和政策の下で、大都市の大規模大学がかなり規模拡大を続けて来ました。18歳人口が減少する環境下で、地方中小規模大学はその煽りを食って、真っ先に学生確保の困難性に直面しているのですから、国私間の格差のみならず、特に大都市の大規模私立大学においても、規模不拡大、あるいは入学実員の抑制を、ぜひ実行してほしいと思っています。
松本:私立大学は、建学の理念を持ち、教職員全体がこれをビジョンとし、使命として、高等教育に邁進し、そこに価値観を見出してきましたね。しかも地域の行政や産業、住民との結びつきも強く、地域が必要とする人材育成や研究を行ってきました。しかも私立大学は我が国の高等教育を受ける学生の8割を担っているのです。
 他方、国立大学では建学の理念もなく、地域志向よりも中央や世界に目を向けた高等教育がなされ、時には素晴らしい成果が生まれることもありますが、地域に速やかに還元できる成果が生まれることは数少ないのではないか…。
山内:それにしても地域の中では、「国公立への進学」というマジックワードに覆われた基準で高校間格差が在り、その中で私大の教育の内容を浸透させてゆく困難も大いに感じているところですね。
 高大連携事業を通して、いかに高校の先生方に私たちの教育実践を伝えて行けるのか、大きな努力が必要であると痛感しています。こうした取組は1大学だけでは限界があるので、団体としても、文部科学省としても、多いに支援をして頂きたいところです。
平山:それから、役所が縛る規制は本当に最小限にして、大学をもっと自由にして欲しいですね。それが経営の自己責任の前提です。
 COC事業などの補助金事業で地域大学を支援しても、単年度の補助では地域の活性化にどれほど役に立つかは疑問で、もっと大学自身の自由な活動を尊重するとともに、一定年限で打ち切る事業は極力止めて欲しいです。
松本:本当にその通りで、COCは、その予算の使い道がやかましく制限されています。地域振興のためと謳いながら、大学のカリキュラムに地域振興を促進する目的での教育や研究の改善を盛り込む目的にしか利用できない仕組みになっているのです。地域振興、地域再生・創成を目的とするなら、もっと地域のために予算が使用出来る配慮が必要ではないでしょうか。文科省の柔軟な姿勢を期待したいと思います。
山内:COC事業は、これまで述べたように本学のためにあるような補助事業と思い、応募しましたが、落ちました。冒頭にも大沼先生が指摘された通り、採択の5割以上が国公立大であったのには納得がいきません。とりわけ京都大が採択されたのには驚きました。
 先程からも話に上がっていますが、私立大と国公立大では財政基盤の不完全競争がある上に、こうした補助事業も一律の選考基準で採否が決まるなら、地域別、規模別格差は絶対なくならず「質保証」も評価基準が今のままなら、地方の中小私大は不利なまま底上げができません。
 何故なら、「大学の国際化」「大学院の充実」「社会人学生の受け入れ」等々条件に差がありすぎます。さらに言えば、冬期が長い積雪寒冷の立地では「建築費」「光熱費」のコスト負担等大きなものがあり、支出構造に弾力性がどうしても足りません。「地方私大の存在価値」が3・11以降改めて見直さなければならず、その点の政策的配慮をすべきだと思います。
石原:山内先生の意見に賛成です。COC事業は募集枠が少ない上、応募条件が大変厳しく、対応に苦慮しています。地方中小私学も対応可能なように、募集枠の拡大や応募条件の緩和を、特に希望します。いくら景気浮揚策とはいえ、耐震工事も必要ですが、ハコものにばかり補助金が集中するのは、高等教育政策としていかがなものかと思います。その点ではソフト面を重視したCOC事業に賛成です
住吉:確かにCOCには疑問もありますが、良い点もあろうかと思っております。
 地方小規模大学では、自らが実施している教育がどの水準で展開できているのか、これまで比較して把握出来る機会がありませんでした。これを変えたのがGP制度です。本学は第1回目の特色GPに採択されたことで、教育活動が高い水準にあると自信を持つことが出来ました。その後も自校の優れている点、改善すべき問題点等を系統的に考えられるようになり、次々とGPに採択されるようになりました。その集大成が、この度のCOC事業採択と考えています。
 このような、地方小規模私立大学の特色を引き出し、意欲的な取組を評価できる政策の継続も必須だと思います。
山内:たしかにGP制度がもたらしたプラスの側面は評価しなければなりません。本学もキャリア支援でGPを頂き、不況下の北海道で学生の就職に大きな成果を上げることができました。
大沼:ありがとうございます。最後に、何か補足的なご意見などはありますでしょうか。
萩野:一点よろしいでしょうか。
 最後になりましたが、東日本大震災から3年が経過しました。全国の皆さんからのご支援に感謝申し上げます。しかし、復興はまだまだ成り立っておりません。本学も復興支援のボランティア等を継続していまいりますので、今後も皆さまのご支援をお願い申し上げます。
大沼:私大協会としても、「教育の復興なくして国と地域の再生なし」の掛け声のもと、事業計画の重要事項と位置付けて、引き続き復旧・復興支援を行って参ります。
清水:私からも補足を。
 新大学等の設置にあたって周囲の大学の同意が必要とする考えがありますが、これには反対です。確かに教育の世界での営利企業的な競争は不向きですが、新しいタイプの大学の新規参入や大学間の競争は必要であると思います。同意が必要となれば既存の大学等が反対するに決まっておりますし、新規参入が不可能になるでしょう。冷静な話し合いの場が確保され、一定程度の並立の可能性が示されるならば、新設を可能とするシステムの構築が必要です。以上です。
平山:私からも…。
 地域に必要な大学の存続策として、県・市による「地域大学統合政策」の実施と社会共通資本としての公設民(公)営大学への新たな支援制度を検討するということです。
住吉:今回のCOCの取組を通じて、都道府県によって高等教育に取り組む姿勢に温度差があるように感じています。また大学の新設、学部・学科の認可、定員の変更等についても、分野の重複を避けるなど高等教育のあり方について、省庁間の垣根を取り払って制限を設けるなど何らかのガイドラインを考える必要があると思います。この意味で、都道府県間の温度差も放置できないと思います。
 国公立大は私立大とのミッションの違いを募集定員にも反映させ、絞られた数を設定するなど、少なくとも学費の安さを武器に官(国・公)が民(私)を圧迫するような事態は避けるべきです。競合する分野を新設するような場合は、官側が「官でなければ出来ない方向」へ路線変更を考えるべきでしょう。将来像答申に示されたように、各大学は自らのミッションを明確にして、棲み分けを図りながら、国全体の高等教育の質を上げる方向を探るべきです。
山内:東日本大震災のあった3年前、私大協会総会を東北・青森で開かれたことを私は大変感動を持って受けとめました。
それは多くの私立大、とりわけ中小規模の私立大は、地域に根ざして高等教育機会の提供、人材の供給、経済・文化のシーズの形成、アメニティ効果等の大きな貢献をしており、その地域貢献を象徴的にアピールしようという熱意を感じたからです。「学長ガバナンス」がしきりに要求される中、いささか弱気になったりする中、エールを頂いた思いでした。
大沼:お褒めを頂き、ありがとうございます(笑)。私立大はかくも多様な教育研究を、各地域の風土文化に合わせて工夫をしてきているのです。多様性は、私学を語る上で重要なキーワードだというふうに感じています。
この度は、私からの三つの課題提案に対して、地方で日々奮闘される先生方に思うところを語って頂きました。
一つ目の課題に関連して、厳しい環境下にある地方中小規模校等の定員未充足校の経常費補助金について、一律に減額するのではなく、地域の特性や状況を考慮した配分のあり方、二つ目の課題に関連して、地域の知恵を出し合って地域に貢献し地域で必要とされる存在となれるような組織的対応方策、さらに三つ目の課題として、国立大学と私立大学という設置者の違いによる予算・税制面での格差の是正等、大きな課題として受け止めて参ります。
 当協会としても、折に触れ行政への意見具申等を積極的に行っていますが、皆さんの御意見・ご要望に十分に応えてきたか、反省すべき点も多く感じられました。今後とも、各支部のご意見等として取りまとめて、理事会などでの意見吸い上げができるような形を考えていきたいと思います。
このたびは年度末の御多忙の中、ご協力を感謝申し上げます。
(おわり)

旭川大学・短期大学部理事長・学長
山内 亮史

北海道旭川市。地域共創の一部は次の通り。
@旭山動物園との太い絆がある。動物たちの行動展示で動物園に革命をもたらした元園長が短大の講師であり、特色科目「北海道学」を坂東園長が講義。2008年には、「論、旭山動物園」(ぎょうせい)を出版。さらに同園の「ボルネオへの恩返し」プロジェクトに協力している。
A保健福祉学部コミュニティ福祉学科の学生を中心に、開設以来、周辺町村の集落でのひとり暮らし高齢者宅を訪問し語り合うクリスマス企画を行っている。NHKローカルニュースで取り上げられ、涙ぐむお年寄りの姿が見られた。
B学びの特色として、少人数ゼミナール一貫教育体制が挙げられる。
北海道と東北地方の8大学11チームが参加した「北海道・東北ブロック学生発表会2014」において、商店街マップ作りやイベントへのラーメン店出店などから街づくりに取り組んだ経済学部の江口ゼミナールが最優秀賞を受賞したことはその成果の一つである。

東北福祉大学学長
萩野 浩基

宮城県仙台市。地域共創の一部は次の通り。
課題の探究や課題の解決に向かう際に必要となる、内容に関係する知識と方法に関わる知識を合わせて理解する能力を育成するため、さまざまな試みを行ってきた。
1993年からは「自立(自律)した市民の育成」を掲げ、全国の大学として初めてとなるボランティア活動のカリキュラム化を実施してきた。
2002年からは、福祉系大学では本学が独自に開発して最初に始めた「実践現場における学び(実習)」と「大学における学び(講義・演習・グループスタディー等)」を有機的に結び付ける、少人数の教育システムである、『実学臨床教育』を開講してきた。
さらに、2005年からは、文部科学省の「特色ある大学教育支援」「現代的教育ニーズ取組支援」「新たな社会的ニーズに対応した学生支援」「質の高い大学教育推進」などのプログラムに数多く採択され、教育改革に積極的に取り組んでいる。

新潟国際情報大学学長
平山 征夫

新潟県新潟市。地域共創の一部は次の通り。
同大学は「生まれた地域で高等教育を学びたい」という地域の強い要望を受けて、平成6年4月「国際化・情報化という2大潮流を乗り越えられる人材育成」を目的に設立された。
入学者の95%以上が県内出身者であり、また就職先も8割近くが県内企業で、文字通り「地域の大学」として機能している。
その意味では「地域への貢献」は、同大学では教育・研究や事業を組む以前に、現在の存在状況自体が果たしているとも言える。
その上で、地域での取組を挙げるとすれば、地元「新潟日報社」と組んだ「異文化塾」は年2回、5連続講座でテーマを変えながら実施しているが、大変好評で10年続いており、年々受講生が増えている。
また、「高校生スピーチコンテスト」は、予想以上に高校生の反応が大きく、参加者を増やしながら継続していく予定にしている。

松本大学学長
住吉 廣行

長野県松本市。地域共創の一部は次の通り。
@運動指導による健康づくり(スポーツ健康学科)
日頃の学習成果を活かし、主に高齢者を対象として個々人に適正な運動を処方し、体力の維持・向上に取り組んでいる。ピンピン・コロリ(PPK)を目指し、松本市の健康寿命延伸都市宣言に応えようとしている。こうした活動は自治体のみならず、企業との提携に発展し、ホテル、病院も健康づくり・予防医療等へ経営範囲を拡げている。
A買い物弱者支援と高齢化対応のまちづくり(観光ホスピタリティ学科)
規格外農作物の廃棄を目の当たりにした学生の感性に基づく“もったいないプロジェクト”は、高齢化した地域への捨てられる運命にあった農作物の安売り行商から始まった。その中で経営感覚を磨くだけではなく、中心市街地の空洞化の実態に気付いた学生は、新しく高齢者のたまり場、語らいの場づくりへと活動を発展させている。

奈良大学学長
石原 潤

奈良県奈良市。地域共創の一部は次の通り。
@3月または7月のオープンキャンパスで、時々の考古学のトピックに関して、奈良大の教員や卒業生の研究者による公開シンポを行っている。「邪馬台国からヤマト王権」「平城京の謎」「縄文人の祈りと願い」「飛鳥と斑鳩」等がテーマで、毎回満員の盛況で、その成果は『奈良大学ブックレット』として公刊している。
A公開講座とは別に、毎週土曜日の午後、大学の正規科目として開講している「奈良文化論」を、一般市民に無料公開している。本学教員や学外の専門家によるリレー講義で、毎年異なった内容で構成されており、市民の人気が高い。
B社会学部社会調査学科では、ゼミ活動の一環として、スナック菓子「やまとうまいも」を開発した。奈良県特産のやまといもを原料に、学生の企画・デザインにより商品化したもので、奈良県各地で好評販売中。

吉備国際大学学長
松本 皓

岡山県高梁市。地域共創の一部は次の通り。
高梁キャンパス:平成17年に学園、高梁市、高梁商工会議所の産学官による連携協力協定締結。「学園文化都市づくり協議会」が設置された。
@地域在住高齢者の健康作りキ拷芸療法の立ち上げ。Aワークシェアリング就労支援プロジェクト:障害者の社会復帰を目指しての就労支援など。
南あわじキャンパス:開学1年余前より就任予定の教員と行政・産業界・市民との間に「大学誘致推進協議会」を立ち上げ、10数回に及ぶ協議がなされた。開設後は「南あわじ市大学連携研究会」を数回開催。平成25年5月には、学園と南あわじ市、兵庫県の間で「連携協力協定」を締結した。
@地域講座・地域課題講演会:大学教員と南あわじ市が協力して住民のために開講。A植物クリニックセンターの開設:市や農協などと大学が協力して農作物病虫害に対する予防や処置を検討する活動など。

志學館大学学長
清水 昭雄

鹿児島県鹿児島市。地域共創の一部は次の通り。
@移転前の大学所在地である霧島市と移転後も親密な関係を維持し、同地域が歴史的な由来をもつ名称「隼人」と呼ばれることから始まった、地域をよく知るための公開講座(通称「隼人学」)を現在まで10年以上を行い、南九州に遺された歴史、文化、社会、自然にまつわる宝を掘り起こし、未来に繋ぐことを意図した『隼人学―地域遺産を未来につなぐ―』という本も出版した。
A鹿児島県と姉妹県である岐阜県の青少年がともに両県の自然・生活・文化について学び、そのことによって両県の架け橋となる「鹿児島・岐阜青少年ふれあい事業」(県主催)に積極的に参加している。
B地域の高齢者を支援するために、高齢者の認知能力を評価するシステムを開発するプロジェクトで、慶應義塾大学などと並んで拠点となり、地域の高齢者の意思決定能力を調査している。




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