Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成24年12月 第2506号(12月5日)

 災害時の広域大学間連携
 神戸学院大学と東北福祉大学の事例から



 日頃の大学間連携教育が、東日本大震災時の学生安否確認を促進させた。防災・減災をテーマに神戸学院大学(兵庫県)は東北福祉大学(宮城県)と工学院大学(東京都)とは連携事業を行っていたが、震災時に神戸学院大学が東北福祉大学の学生安否確認を支援した。今後、東南海地震等が発生すると予測されている中で、大学はどのように連携をしていくべきか、神戸学院大学の社会連携部社会連携グループの小笹誓子氏(当時、学際教育機構 防災・社会貢献ユニット事務室職員)と同コーディネータ四宮千佳子氏(当時、TKK3大学連携プロジェクト コーディネータ)に話を聞いた。

 2011年3月11日、14時46分東日本大震災が発生。
 直後から、連携大学である東北福祉大学(以下、福祉大)、工学院大学に、あらゆる手段で状況確認を続ける。
 12日、「東日本大震災災害支援対策本部(本部長:学長)」を立ち上げる。
 13日、福祉大より「連絡が取れない学生が多くいる」との連絡あり。大学として安否確認を支援する用意があると提案、福祉大より「お願いしたい」との回答があった。
 14日、安否確認支援のための準備(専用電話の設置、専用Eメールアドレス作成、マニュアルの作成、体制の整備等)を行う。大学のウェブサイトに、福祉大の安否情報確認を行っている旨を掲載することで行われる。
 15日、ニュースリリースし、ラジオやニュースで情報が流される。
 16日、安否情報2件、安否問い合わせ2件がEメールにて寄せられる。
 28日、福祉大の安否確認終了、支援活動も終了する。
 四宮氏は、当時を振り返る。「福祉大への固定電話は不通でしたが、連携事業で教職員同士は日頃からコミュニケーションをとり続けていましたので、個人の携帯電話に連絡を取り、現地のコマ切れの情報が伝わってきました」。
 通常は遠隔授業、夏休みには学生合同授業もあったため、2大学の学生同士は親交を深めていた。彼らは携帯電話のほか、フェイスブックやツイッターを利用して連絡を取り合い、安否確認をし、職員に伝えてくれたりもした。
 安否確認の支援について。「県内への電話は繋がりづらい状態が続きましたので、情報を持っている方には、まずは本学に連絡してもらい、それを確実に福祉大にお伝えする、という支援を行いました。
 また、当日に関西にいた福祉大の学生について、福祉大と連絡を取り合い、本学の施設で保護することになりました」。
 災害時だからこそ、トップの決断だけで行えたこともある。しかし、単に広域大学間で災害協定を結べば、即効力を発揮するわけではない。
 「重要なことは、大学間の教職員、学生の日ごろのコミュニケーションです。災害研究のような教員個人の繋がりで結ばれる協定だけではなく、日常の現場の面と面の繋がりがこのたびの支援につながったと思います」と振り返る。お互いに当事者意識を感じられるかが重要だ。
 思わぬ盲点もある。「受援力といって、災害発生時に支援を受け入れる力を言います。受援力が低いと、多数の物資やボランティアを受け入れられません。「自分の身は自分で守る」と言われがちですが、「お互い様」の精神で、一方的に与え、与えられる、の関係ではないことを再認識することが重要です。そして、災害は起こるもの、支援・受援活動を行いやすい環境づくりをしておく必要があると思います」と小笹氏は指摘する。
 災害時に効力を発揮するのは、新しく協力協定を結ぶことはもとより、すでにある大学間の現場の繋がり。これまで行った大学間のあらゆる連携を総ざらいしてみてはどうだろうか。

 

Page Top