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平成24年4月 第2479号(4月18日)

私学教職員が不利益を被りかねない
  被用者年金制度の一元化問題の概要



 去る4月13日、公務員及び私学教職員を厚生年金に加入させる等被用者年金制度一元化法案が閣議決定され、今通常国会へ提出された。そもそも被用者年金制度の一元化問題とは何なのか。

 「私立学校教職員共済制度」は、昭和27年、日本私立大学協会をはじめ、私学団体総連合会(現・全私学連合)が様々な困難を乗り越えて私学共済法実現運動を展開した結果、昭和28年に私立学校教職員共済組合法が成立しスタートした。
●最も保険料率の低い公的年金に
 同制度以前には任意加入の「厚生年金」及び「私学恩給財団」があったが、同制度発足以後、引き続き一部の大規模大学等が主に民間企業が加入する厚生年金へ加入したほかは、この共済制度へ強制加入となった(多くの私学は組織基盤が脆弱だったため、厚生年金には加入できなかった)。現在では、私立学校教職員における厚生年金加入者数は2.5万人、私学共済加入者数は48万人となっている(平成23年3月末現在)。また、職域部分(3階部分)まで含めた私学共済保険料は、昭和29年のスタート時で厚生年金の約2倍だったが、着実な加入者の増加、そして、堅実な管理・運用の結果、昭和48年でこれが逆転、現在は厚生年金の約8割となっている。
 私学共済はおよそ60年かけて、最も保険料率の低い公的年金となったのである。
●平成19年の法案
 ところが、平成19年に「被用者年金制度の一元化」に関する法案が国会に提出され、私学共済は大きく次の2点で不利な変更を迫られた。
 @1・2階部分を、私学教職員が厚生年金に加入することで統一。保険料については、段階的に引き上げ平成39年に厚生年金に統一する。
 A私学共済の(公的年金としての)職域加算部分を廃止し、新たな私学共済3階部分を設立する。
また、これまで私学共済を1〜3階部分で、別々に保険料を徴収していたわけではないため、厚生年金への一元化にあたり、これまでの積立金を1・2階部分とそれ以外に仕分けする必要性が出てきた。
 これを受け、幼稚園から大学までの私立学校団体で構成する「全私学連合」は次の要望を行った。
 @.1・2階部分の保険料については、学校法人や加入者の急激な負担増にならないように、十分に配慮すること。
 A.積立金の仕分けについては、私学振興及び教職員に対する支援事業を行うに必要な十分な額を確保し、貸付事業は私学共済制度のもとで管理・運用ができるようにすること。
 B.職域部分の廃止・新設については、引き続き、私学共済制度の下で現行の水準が確保されるようにすること。
 全私学連合の運動等を通じて、同法案では、積立金を活用して掛金負担の軽減や新3階年金への原資とするほか、これまでどおり私学振興及び教職員に対する支援事業が可能な内容であったが、衆議院解散と同時に同法案は廃案となった。
●平成24年の法案
 今般国会へ提出の被用者年金一元化法案は、法案提出の過程において、民主党内で官民格差の問題が上げられ、職域部分廃止後に新3階年金は作らないといった議論がなされた。本紙3月28日付1面で既報のとおり、民主党四部門合同会議において、日本私立学校振興・共済事業団共済運営委員会の黒田壽二会長が私学としての主張をしたことなど、その後の政府・与党の検討を通じて、今回の一元化法案も平成19年の法案同様、職域部分廃止と同時に新たな3階年金を別な法律で定めることとされた。
 しかし、その内容は、政府では岡田克也副総理の下、有権者会議を設置し検討を進めるとともに、民主党内では四部門会議関係者によるプロジェクトを設置し検討を行うこととしている。その結果次第では、私学教職員が不利益を被りかねないことから、今後の動向を注視する必要がある。
 小出秀文同連合事務局長は「私学共済制度は、私学の先達が苦労して創り上げたもの。管理・運用も他の公的年金と比べて堅実で、むしろ理想的ともいえる。私学共済が築いてきたものが損なわれることのないように主張していく必要がある」と述べている。


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