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教育学術オンライン

平成24年2月 第2473号(2月15日)

大学は往く 新しい学園像を求めて〈39〉
  関西外国語大学
  語学力+専門知識修得
  充実する留学制度 海外留学1700人、留学生600人

 「GO FOR IT!― 語学の、その先へ。」が大学のキャッチコピーである。関西外国語大学(谷本義高学長、大阪府枚方市)は、「高度な語学力+αの専門知識の修得」を実践し、グローバルに活躍する人材を輩出してきた。年間約1700人の学生が海外留学、受け入れる外国人留学生は約600人にのぼる。このように国際交流を果たす留学制度が充実、日本全国から学生が集まる。2011年度、「英語キャリア学部」を新設。「語学力+α」を踏襲しつつ、英語プロフェッショナル、国際教養、グローバル・ビジネスの3つの分野を学ぶことで、国際社会に貢献するプロフェッショナルの育成をめざす。外国語学部英米語学科に「小学校教員コース(仮称)」を2013年度に設置する構想を打ち出すなど改革の動きが続く。「本学は、『外国語を学ぶ』ことはもちろん、『外国語で学ぶ』ことができる大学です」と語る学長に、関西外語大学のこれまでとこれからを聞いた。(文中敬称略)

小学校教員コースも英語キャリア学部新設

 関西外大は、太平洋戦争の終わった1945年、大阪市東住吉区に創立した「谷本英学院」が淵源だ。47年、関西外国語学校を開設、53年、関西外国語短期大学となり、66年、枚方市に関西外国語大学(外国語学部)を開設した。
 73年、大学院を開設、96年、国際言語学部を設置、02年、中宮キャンパスを開設。同キャンパスを拡大して2011年、英語のプロフェッショナルを育てる英語キャリア学部を同キャンパスに開設、3学部体制となった。
 現在、外国語学部(英米語学科とスペイン語学科)、国際言語学部(国際言語コミュニケーション学科=中国語、フランス語、ドイツ語、国際ビジネス、国際メディア英語の各コミュニケーションコース)、英語キャリア学部に1万880人の学生が学ぶ。
 学長の谷本が大学を語る。「私学の私学たる所以は、建学の精神にあります。前身の谷本英学院以来、『国際社会に貢献する豊かな教養を備えた人材の育成』と『公正な世界観に基づき、時代と社会の要請に応えていく実学』を建学の理念に掲げ、その具現化に努力を重ねてきました」
 英語キャリア学部について。「ユニクロ、楽天など英語を社内言語とする企業が出てきました。これからは、通訳するだけではなく、実用英語と異文化の壁を乗り越える法律など社会科学や経済学などの知識も必要になります。英語プラス発信力、そして判断力をもった即戦力の学生を育てたい」
 英米語学科の「小学校教員コース(仮称)」設置について。「小学校での外国活動(英語教育)の義務化に伴い設置を考えました。これまで、小学校教員志望者は他大学で必要科目を履修しなければならなかった。定員30人という少人数で現場重視の優れた小学校の先生を養成したい」
 同大の最大の特徴は全国でもトップクラスの留学ネットワーク。海外の単位互換提携校50か国・地域の334大学に派遣する学生は毎年、長期留学、短期留学を合わせて約1700人、受け入れる外国人留学生は約600人になる。
 全国トップクラスの留学ネットワークを築いた要因は?「本学が開学した当時、関西地方には大阪外大、京都外大、神戸市外大など先発組が多言語教育を展開していました。後発として、言語は英語とスペイン語にしぼり、国際交流と交換留学を充実させることに早期から全力投球しました」
 こう付け加えた。「最近の若者は内向きといわれます。それを否定しませんが、本学への志望者は外向きの若者が多い。また、長期留学プログラムの多くが、費用は渡航費だけで済むという本学の留学システムもあるかもしれません」
 言語教育の特色のひとつが特別プログラム。IES(Intensive English Studies)プログラムは、外国語学部の英米語学科入学者を対象に行われるテストで、成績が特に優秀な学生に開講。
 IESをさらに発展させたEIP(English Intensive Program)は英語キャリア学部の全学生が必修です。また、スペイン語学科ではCIE(Curso Intensivo de Espan~ol)という同様の特別プログラムを開講しています」
 Business Preview Coursesは、将来ビジネス界でのキャリアを目指す学生を対象に、日本やアメリカの企業等で働いた経験を持つ教員が、机上の勉強だけでなく、企業で働いていた経験を生かした実践的な講義を英語で行う。
 留学生別科共同開講科目は、外国人留学生を対象として開講されている留学生別科の講義科目を、彼らと共に受講するプログラム。講義は全て英語だ。受講しておけば、1年間以上の長期留学予定者も現地での授業にすぐさま十分に対応できる。
 こうしたプログラムもあって、学生の英語能力は高い。04年と06年の大学別TOEIC平均スコアでは、04年度が全国7位、06年度は全国9位となった。
 就職では、キャビンアテンダントなど、航空関連企業に強いことでも知られる。キャビンアテンダント採用数の全国1位を維持している。また、毎年数名のパイロットも輩出している。
 「専科のような特別コースは設けていません。毎年2回、航空関連企業への就職を希望する学生のため、全日本空輸や日本航空などから内定を貰った学生や、OG・OBを招き、航空ガイダンスという説明会を行っています」
 教育研究面では、建学の理念を現代に生かす取り組みとして推進してきた二つのプロジェクトがある。ひとつが、08年の文部科学省の教育GPに採択された「『ASEAN+3』大学コンソーシアム構想」。
 「本学とアジア諸国の大学が手を携えてアジアの未来を担う『次世代国際人』の養成をめざします。各国の大学との交流は、アジア・太平洋交流センターを拠点に着々と実現。堅固なアジアネットワークの構築に向けて進めています」
 10年には国際言語学部の「8つのコンピテンシーを核とした就業力育成」が文部科学省の「大学生の就業力育成支援事業」に採択。「社会人としての基礎力をコンピテンシーと位置づけ、授業内外の活動を就業力に結びつけるのが目的。学生や教職員が一体となって取り組んでいます」
 学生のクラブ活動が活発であり、過去に格闘家やプロサッカー選手、プロ野球選手を輩出している。チアリーダー部パイレーツは、ジャパンカップ優勝を収めるなどの実績を持つ。
 学生のボランティアは海外を向いているのが特徴だ。09年度の朝日新聞出版の「大学ランキング」では、国際ボランティア参加数、エコ・ボランティア参加数で全国一位を獲得している。
 大学のこれからを聞いた。「グローバル化が一段と進むなか、高い語学運用能力を持ち専門性を備えた国際人の育成は喫緊の課題。国や文化を問わず、自分自身のアイデンティティーをもって、外部に発信できる学生を育てたい。
 09年度から『語学+アルファ』の方針に沿ってカリキュラムを一新。語学運用能力に磨きをかけ、その先に、キャリアを見据えた専門知識が習得できるようにしました。就職力強化も全学挙げて取り組んでいます」
 最後は、語学大学の学長らしく、こう強調した。「留学ネットワークは、引き続き強化したい。シーイングイズビリービング、といわれるように実際に世界に出てみないとわからない。願わくは、全員の学生を留学させたい」
 学長のめざす大学像は、『外国語を学ぶ』ことはもちろん、『外国語で学ぶ』ことができる大学の、より一層の進化にある。


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