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平成23年2月 第2432号(2月16日)

授業改善のための小さな実践
  パワーポイントよりワードでプレゼン 〈1〉


帝京大学  若山 昇

 FD義務化により、各大学内のFD活動が盛んになっている。学生のために一歩ずつでも授業が良くなることが期待されている。このたびは、クリティカルシンキングの授業実践を通してユニークな授業改善を行なっている帝京大学の若山 昇氏に、授業改善のための小さな実践を寄稿してもらった。

●ワード巻物とは
 パワーポイントが持てはやされ、流行っている。授業だけでなく、プレゼンテーションや就職の必需品と考えられているようだが、なぜだろうか? 図1a,bは、ワードとパワポのスクリーン表示を比較してみる。
確かに、パワポの方が若干美しいかもしれないが、作成は煩雑で時間がかかる。私の授業ではパワポを使わず、ワードを活用している。ワードは機能的であり、授業での表示に適しているからだ。図1aでは、スクリーンに映っている部分は読めるが、その前後が隠れて見えないので、絵巻物ならぬ「ワード巻物」と呼ばれている。その作成方法は、次の通り。
 一、ワードの「ページ設定」を横長にする。
 二、「背景」を、紺(または、薄黄色)にする。
 三、「フォント」は「MSPゴシック」、サイズを36(〜28)にする。
 四、「ページ幅を基準に」表示する。
 五、スクリーンのルーラー、水平スクロール、ツールバーを隠す。
●ミニレポート
 授業の終了時に、このアンケート(図1a)をミニレポートとして、学生が無記名で記述する。これで、A学生の理解度を確認でき、B理解不十分な箇所を明確にできる。Cさらに、有用なコメント・質問等を次回の授業で全体化できる利点がある。学生が携帯からバーコードの専用アドレス(図2)に送付するので、管理が極めて簡単である。授業で全体化すべき内容を、簡単にコピー&ペーストでき、授業の冒頭で復習を兼ねて映し出している。これは双方向のコミュニケーションを拡充する効果がある。
●ワード巻物は、授業で使えるか?
 黒板、ワード、パワポの使いやすさの比較を表1に示す。
ワードには多くのメリットがある。まず、授業の準備が楽になる。なぜなら、コピー&ペーストが極めて簡単であるからだ。さらに、授業のまとめを次回の授業の冒頭に簡単に提示できる。授業準備はパワポより数倍楽になる。また、教員が講義ノートを作成する必要がなくなる。従って、講義ノートを作成する時間や板書する時間を、授業内容の充実に使うことができる。
 検索機能もワードの方が使いやすい。数回の授業で使用する内容を一つのファイルに纏めれば、質問時などに、瞬時に必要な個所を提示できる。そのうえ、ワードでは上下にスクロールができる。これを使えば、スクリーンに1行ずつ見せることもできる。これらはパワポのスライドショーにはない機能である。
●ワード巻物で板書?
 「スクリーンでは、授業での板書ができない」と、おっしゃる方もいる。板書をすれば、学生がノートを取るからだ。実は書き示す行動でも、スクリーンの方が優れている。授業中に学生がスクリーンを見ているところで、教員がスクリーン内のワードに直接書き込めばよい。その方が、板書よりインパクトがあり、文字がきれいで、学生はノートを取りやすい。さらに、ワードはパワポと異なり、作成中にフォントが変化しないので読みやすい。
●ワード巻物から講義内容の確認シート
 一回分の講義内容を一覧で確認したい場合には、講義内容の確認シートを次の方法で印刷すればよい。
 一、図1のスクリーン表示のワードから、一回分の授業をコピー&ペーストする。
 二、A4縦長のデフォルト状態にテキスト(フォント10・5)で、貼り付ける。
 三、「段組み」を、2段組とする。
 四、「印刷」で、印刷の向きは縦のまま、「2ページ/1枚」でプリントする。
●ワード巻物から講義ノート
 学生には見せない教員用のメモやパワポのノートに相当する内容、つまり講義ノート(手持ち資料)が必要ならば、次の方法で容易に印刷できる。これでスクリーン20〜30ページ分でもA4で1ページに収まる。
 一、図1のスクリーン表示のワードから、一回分の授業をコピー&ペーストする。
 二、教員だけが見られる内容(手持ち資料)を、そのまま挿入する。
 三、挿入部分だけ、フォントを1か2にする。
 四、それでも、体裁が気になるならば、文字を背景と同じ色にする。
 五、学生への提示内容には、手持ち資料の分は見えなくなる。
 六、上記の講義内容の確認シートを印刷すれば、手持ち資料がフォント10・5で現れる。
●ワード巻物でアニメーション?
 「ワードではアニメーションが付けられない」と、おっしゃる先生もいる。確かにアニメーションは難しいが、一寸とした次のような工夫で下からのスライドインならば可能となる。
 一、スクリーンに映し出す内容の各行間を、数行ずつ開ける。
 二、学生が見ているスクリーン上で、その行間を1行ずつ削除する。
 三、文字列は自然に上昇してスクリーンに現れてくる。

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