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平成23年1月 第2428号(1月19日)

平成23年 年頭所感
 多様で質の高い教育を


 小出忠孝副会長(愛知学院大学学院長)

 新年明けましておめでとうございます。会員の皆様には健やかに新春を迎えられたことと、心よりお慶び申し上げます。
 私大協会は現在383大学が加盟する、わが国最大の大学団体となっています。高等教育の77%を私立大学が担っているわが国では、高等教育の将来は本協会加盟の各大学の双肩にかかっていると言っても過言ではなく、本協会の責任は極めて大であります。
 現在わが国では人口・産業・社会の各構造が大きく変化する中、世界的な経済危機に見舞われ、大変厳しい状況にあります。しかし本格的な知識基盤社会の到来により、高等教育を受けた人材の必要性が益々大きくなってきています。特に資源を有しないわが国では知的財産―人材が唯一の財産であり、高等教育の重要性が特に強調される所以であります。
 多様で質の高い教育により豊かな教養と専門的能力を身につけ、社会のため貢献する「21世紀型市民」の育成が重要であり、私立大学の責任は大であります。しかし最近の私立大学を巡る環境は一段と厳しさを増しています。その大きな原因は18歳人口の減少と大学新設ラッシュによる定員増が、大学全入時代と学生の学力低下を招来していることによるものと指摘されています。
 この状況に対し中央教育審議会では、先年「学士課程教育の構築に向けて」の答申を発表し、各大学に「学位授与」、「教育課程」、「入学者受入れ」の三つの方針の明確化と卒業生の学士力の強化を強く要請しました。さらに中教審では「中・長期的な大学教育のあり方」について、次々と審議経過を発表し、各大学に多様なニーズに対応する大学教育の質の向上のため、公的な質保証システムの構築、教育情報・財務状況の一層の公開を要請しています。教育情報では、「何を学ぶことができるのか」(教育の目標・内容・成果)を重視し、教育の成果を強く求めており、また入試別の入学者数・在学者数・留年率・卒業率・就職率等、大学の実態をすべてホームページ上に発表することが義務化されました。さらに公開の不充分な大学は補助金が減額される等、弱小大学には厳しい状況となります。
 一方、昨秋発表された大学卒業予定者の就職内定率は57.8%と前年比4.9ポイント減であり「就職氷河期」と呼ばれた2000年前半を下回っています。世界的な経済不況下にあるとはいえ、卒業予定者の半数近くが職業に就けないことは大問題であります。政府も産業界に採用枠の拡大、特に優良中小企業への求人依頼等、就職支援体制の強化に努めておりますが、各大学独自の努力と相俟って、就職内定率の改善が望まれています。
 このように私立大学を取り巻く厳しい環境の中、各大学は建学の精神に基いて特色ある教育を行い、社会の期待に応える人材を育成する責任があります。そのため全教職員が私学危機の現状をよく理解し、大学の教育・研究の質の向上に努められることを期待します。
 新春にあたり各大学の一層の発展を祈念します。

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