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平成23年1月 第2427号(1月12日)

平成23年 年頭の所感 
 「人と知恵」の力で「元気な日本」の復活を


文部科学大臣  木義明

 平成23年の新春を迎え、謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
 政権交代から1年半、文部科学行政は国民の皆さまのご理解をいただきながら、高等学校等の授業料実質無償化の実現など改革の歩みを進めてまいりました。我が国を取り巻く環境が厳しさを増し、また大きく変化する中で、資源の乏しい我が国が引き続き世界をリードしていくためには、「人と知恵」の力を高めていくことが不可欠です。また、少子化が進む現代において、国民一人ひとりがその能力を最大限に伸ばし、発揮できるようにすることが、「元気な日本」の復活につながるものと考えます。本年も、改革を着実に進め、成果に結びつけるために全力で取り組んでまいります。
 先般、民主党政権として初の本格編成となる平成23年度予算案を決定しました。我が国の原動力である「強い人材」を実現するため、文部科学省予算として5兆5000億円余を確保することができました。厳しい財政状況の下で対前年度0.9%減の微減にとどめ、補正予算・予備費を含めると対前年度2.8%増となりました。特に「元気な日本復活特別枠」では、国民の皆さまからいただいた28万通ものパブリックコメントに支えられ、多くの予算額を確保することができました。国民の皆様のご理解と力強いご支援に心から感謝申し上げます。
 教育は社会の基盤であり、自立し、自己主張できる人間の形成、自然との共生、他人への思いやりや協調の精神の醸成が大事だと考えます。また、最近の日本人は内向きとの指摘がある中で、高い国際感覚を備え、国際社会をリードする人材を育成することも重要です。本年四月には、いよいよ小学校で、授業時数や教育内容を充実した新学習指導要領が全面実施されます。教員の質と数の充実や、情報通信技術を活用した新しい学びの創造とともに、教育費負担の更なる軽減や学校・家庭・地域の連携協力、学校施設の耐震化・老朽化対策などに引き続き取り組んでまいります。
 特に、少人数学級の推進については、40人学級がスタートした昭和55年以来、実に30年ぶりに学級編制の標準を引き下げ、小学一年生で35人以下学級を制度化することとしています。教員が子ども一人一人に向き合う時間を確保し、子どもたちの個性に応じたきめ細やかで質の高い教育を行うため、マニフェストでお約束した少人数学級推進のスタートを切ることは嬉しいことです。あわせて、地域や学校の実情に応じた柔軟な学級編制を実施できるよう制度改正を進めるほか、教員の質についても、中央教育審議会の審議を踏まえ、養成・採用・研修の各段階を通じた総合的な向上策に取り組みます。
 また、我が国の知的創造の中核機関である大学の教育・研究機能を強化していくことも重要です。来年度予算案では大学関係主要経費を増額したほか、奨学金や授業料減免措置への支援の拡充による教育費負担の軽減や、税制面での充実を図ることとしています。あわせて、医師不足の解消に向け、教育の質を確保しながら医師養成数を増員します。
 深刻な状況が続く新卒者の就職については、経済界、労働界、教育界の連携を進め、採用枠の拡大、卒業後3年以内の新卒者扱い、就職採用活動の早期化・長期化の改善などに取り組んでまいります。
 昨年は、科学技術について、幾多の困難を乗り越えた「はやぶさ」の帰還や、宇宙飛行士の山崎直子さんと野口聡一さんの国際宇宙ステーションでの活躍、鈴木北海道大学名誉教授と根岸パデュー大学教授のノーベル賞受賞など、日本の科学技術の水準の高さを示す多くの明るい話題があり、改めて科学技術の意義・重要性を感じた年だったと思います。
 平成23年度は、我が国の科学技術政策を総合的かつ体系的に推進するための基本方針となる第4期科学技術基本計画がスタートします。具体的には、科学技術とイノベーションの連携強化により、グリーンイノベーションやライフイノベーションをはじめとする我が国が直面する重要課題への対応を図るとともに、長期的視野に立った基礎研究と人材育成を推進します。これらの施策を確実に推進すべく、政府研究開発投資について、対GDP比1%や総額約25兆円といった具体的な目標を掲げています。
 こうした中、本年度の文部科学省の科学技術予算は、対前年度3.3%増の1兆683億円を確保し、菅総理のイニシアティブのもと新基本計画初年度にふさわしいものになりました。
 特に、我が国の基礎研究を支える科学研究費補助金について、制度創設以来、約半世紀に及ぶ歴史の中で最大となる633億円の増額を実現するとともに、特に若手の研究者のチャレンジを支援するメニューについては、研究現場の声を踏まえ、基金化による研究費の複数年度使用を可能とし、効果的・効率的に研究を行えるように取り組みます。未来をつくる基礎研究や若手研究者の支援を充実することにより、若者が希望をもって科学の道を選び、その柔軟な発想と能力を遺憾なく発揮できる環境を整備してまいります。
 さらに、研究開発を担う法人について、世界トップレベルの国際競争力と機動的で弾力的な運営の実現を目指し、内閣府をはじめ関係府省と連携し、国の研究機関に関する新たな制度の創設に向け、検討を進めてまいります。
 科学技術は成果がすぐには見えにくい一面がありますが、積極的に情報を発信し、国民の皆様のご理解を得つつ、科学技術の更なる振興に努めてまいります。
 昨年は「平城遷都1300年」記念の年でもあり、復原した特別史跡平城宮跡第一次大極殿で昨年10月に行った記念祝典には天皇皇后両陛下をお迎えし、期間中、県内外から予想を上回る来場者がありました。文化芸術は、心豊かな国民生活を実現するとともに、活力ある社会を構築して国力の増進を図る上で必要不可欠です。今こそ、国家戦略として文化芸術を振興するため、新たな基本方針の策定や美術品国家補償制度の創設などに取り組み、「文化芸術立国」の実現を目指します。
 この他、文部科学行政においては、様々な課題が山積しております。私は、文部科学行政の責任を担う者として、文部科学行政の重要性を心に刻み、「熟議」の取組などを通じて国民の皆様方の意見を十分汲み取りながら、その充実発展に全力を尽くしてまいります。引き続き、関係各位のご指導とご鞭撻をいただきますよう心よりお願い申し上げます。

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