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平成23年1月 第2427号(1月12日)

平成23年 年頭所感 
 機能分化と情報公開で個性輝く大学に!


黒田壽二副会長(金沢工業大学学園長・総長)

 辛卯年、あけましておめでとうございます。
 昨年は、大学にとって改革に向けた多くの指針が発出された年であったかと思います。
 大学は少子化時代、ユニバーサル・アクセスの時代の到来で大学経営は困窮の度を増していた。この打開に向け逸早く対応してきた私立大学は、アカデミック学位を授与する機関としての能力を維持しながら建学の精神の高揚を図り、それを基盤とした教育目標・目的を掲げ機能分化が進み、日本の津々浦々にある私立大学は、地域文化の担い手として、その大学の目的に賛同する18歳進学者はもとより、社会人や再履修者が多く集い、その学びの館は昼夜を問わず学生たちで賑わいを呈していた。やはり、私立大学は強い底力を秘めていたのだ。感動と喜びを覚えながら私の初夢は醒めてしまいました。現実の世界に引き戻された私は、この夢を実現するために何をなすべきかを考えさせられました。
 我が大学の機能分化に合った学士課程教育プログラムとは、三つのポリシーの明確化で何を訴えるべきか、出口管理と社会との接続をどう図るか、教育情報の公表、財務・経営情報の公開の義務化に対し大学の持つ膨大な情報を誰のためにどのように整理し、どのような内容をどの程度公開すべきか等々、社会が変化する中で、地域社会に受け入れられ、地域に愛され、地域文化発揚の担い手として、さらにはグローバル化された国際社会の一角を担う大学として変革すべきか、大学改革に向けた課題の多さに頭を痛めるばかりです。
 一方では文部科学省の政策誘導策として、教育情報の公表、社会的・職業的自立に向けた指導、就職活動支援、キャリア形成支援、大学教育の質保証と向上、多様な学生に対する受け入れ態勢の整備・促進など、学校教育法や関連法規の改正、大学設置基準の改正など数多くの政策が施行されてきました。
 特に今年は4月1日施行で義務化される教育情報を自ら公表しなければなりません。この公表は、誰のために、何をどのような目的を込めて公表したらよいのか今から準備する必要があります。しかも、大学法人は教育情報、財務・経営情報についてホームページを介して公表すべきとしています。
 このことは、大学が機能分化をしていく上でも避けて通れない重要な課題となっており、各大学がどのような大学であるかを自ら国民に訴えていかなければ、多様に変化する中で埋没しかねません。大学の広報力も併せて問われる時代でもあります。
 義務化された教育情報開示の公表項目は九項目あり、これらはすでに各大学において、大学要覧や募集要項に記載されているものと解されていますが、これらの項目を受験者や保護者、一般社会人により広く分かり易く理解してもらえるように系統立てた公表の在り方を工夫しなければなりません。また、努力義務化されたものについては、より詳細な情報を網羅することを求めており、国際競争力向上に向けては、より具体の国際比較可能な情報の開示を求められています。
 この情報開示の目的は、今まで画一化されてきた大学が、中教審の「将来像」答申で示された機能別分化の七つの分類において、どのような機能に重点を置くのか、濃淡の付け方が各大学に任されています。すなわち、大学教育の内容(学士課程教育プログラム)の多様化が進展することになり、自ら大学教育の内容を開示しなければ、どの様な大学であり、何を学べる大学なのかが分からなくなります。したがって、教育情報の公表は義務というよりも大学に与えられた責務であると考えるべきでしょう。ここに「教育情報の公表」の主体があると考えています。各大学が自ら率先して改革を進め、個性輝く大学になることを切に願っています。

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