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平成22年12月 第2425号(12月15日)

新刊紹介
 「名門大学スキャンダル史」
  海野 弘 著

 残念ながら日本の名門大学の話ではない。英国のオックスフォードとケンブリッジ、米国のハーバードとエール大学の教授たちの醜聞。
 海野 弘の博覧強記ぶりを示す力作に「モダン都市東京」(中公文庫)があるが、この本も同一線上にある。
 帯の〈世界のエリート校は奇人変人の巣窟〉から紹介する。まず英国。
 ジョン・ラスキンの〈ヴィクトリア朝の童貞男にはありそうな話〉、ウォルター・ペイターの〈美男の若者との交際〉、バートランド・ラッセルの〈旺盛な性的エネルギー〉には驚かされた。
 米国。〈ケネディはハーバードの教授たちをホワイトハウスにかき集めたが、マリリン・モンローのほうに関心があった〉、〈ベトナム反戦デモではハーバードのエリートとアウトローが並んで行進した〉
 海野は〈秘密結社を調べていて、大学というのも一種の秘密結社ではないか、と思われてきた〉と書き出し、〈大学教授はなぜえらいのか〉と論を進める。
 17世紀から知識人を作り出す制度が確立。〈大学教授は知識人の一部である〉とし、〈知識人のインナーサークルは檀という字で示される。それは一段高いプラットフォームである〉
 奇しくも、朝日新聞(11月24日)が「崩れゆく『檀』の権威 画壇も文壇も楽壇も」と、〈最近、日本芸術院会員になるのに嫌気さす人材も出ている〉と書いていた。日本の「檀」の権威の失墜は、17世紀と現代という時代のせいか、西欧と日本の違いか、海野に聞きたいものである。(狸)

 「名門大学スキャンダル史」  海野 弘著
 平凡社新書
 03―3818―0743
 定価760円(税別)

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