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平成22年12月 第2424号(12月1日)

新刊紹介
 「全学連と全共闘」
  伴野準一 著

 話題の本が出ると、アンチテーゼの本が出る。本欄でも紹介した「1968」(小熊英二著、新曜社)を意識している。小熊の著は1968年の東大闘争に象徴される全共闘運動から連合赤軍まで若者たちの叛乱を描いている。
 「1968」には〈文献は完璧に渉猟しているのだけど、直接の取材は一切していない〉(評論家、福田和也)の批判もあった。この著者の伴野は関係者にみっちり取材。「1968」からの引用がないのはスマートだ。
 全共闘を語るなら日大闘争が不可欠だが〈あえて触れていない。対象を絞り込んだ〉。古賀康正、塩川喜信、篠原浩一郎、最首悟ら当事者への取材は物語をビビットにしている。
 60年6月15日の国会突入で東大生、樺美智子死す。〈指揮した京大の北小路敏がマイクをとった。「女子大生が死んだ。亡くなった女子学生のために黙祷を捧げよう。警官も人間なら鉄カブトをとってくれ」〉
 北小路はのちに中核派幹部として革マル派と内ゲバを繰り広げた。全共闘後の新左翼各派は〈妄想と狂気に突き動かされたテロルと堕ちてしまった〉の主張に同調した。
 北小路は11月13日に敗血症のため死去、74歳。同じ頃、英国やイタリアでは教育費削減で学生が大暴れ。内向き志向の日本の学生がもどかしい。全学連も全共闘も遠くなりにけり。(狸)

 「全学連と全共闘」  伴野準一 著
 平凡社新書
 03―3818―0743
 定価800円(税別)

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