教育学術オンライン
Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト

平成22年11月 第2423号(11月24日)

新刊紹介
 「大学生 キャンパスの生態史」
  橋本鉱市 編集

 本の紹介の前に、こうした良書を発行する大学出版部について一言。その団体である大学出版部協会のHPには、高邁な目的が書かれている。
 〈1963年6月、「大学出版部の健全な発達と,その使命の達成をはかり,もって学術文化の向上と,社会の進展に寄与する」ことを目的として設立された〉
 気になったのは、HPの表紙にある「科学研究費補助金研究成果公開促進費『学術図書』に関する要望」。「学術図書助成予算が大幅に削減され、研究成果の公刊機会が失われているのを憂慮する」とある。
 さて、本書は「リーディング 日本の高等教育全8巻」の第3巻。〈戦後の青年文化・消費文化の中で揺れ動く大学生の立ち位置を生活や思想運動、学生生活への不適応などの面から分析〉。
 〈高等教育プロパーの研究論文よりも、時代の持つリアリティーに実証的に切り込んだ論考を所収、戦後60年の変容が俯瞰できるようにした構成〉は成功している。
 第3部で「活動家学生」の典型的タイプを〈それほど裕福ではない地方在住の親から仕送りを受け、下宿しながら、アルバイト・勉強・運動という3つの生活空間に生きる人文・社会科学系の3年生〉と論及。この時代を生きた者にはよくわかる。
 重厚な全8巻を読むには重い。〈どの巻をとっても、その巻のテーマの基本的知識と社会背景がわかる〉とあるので、今回は読みたかった第3巻。そうだ、読みたい希求度の高い巻から読むことにしよう。
 冒頭の話だが、政府の事業仕分けの負の部分が、ここにも。閣議決定したものまで仕分けられ、財源捻出の役割も終えたのに。学術図書予算の削減は〈日本の、世界の学問の発展に大きな障害になりかねない〉(狸)

 「大学生 キャンパスの生態史」  橋本鉱市編集
 玉川大学出版部
 042―739―8935
 定価 4500円(税別)

Page Top