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平成22年11月 第2420号(11月3日)

新刊紹介
 「早稲田の力」
  白井克彦 著

 様ざまな話が“ごった煮”。早大の改革、創立125周年、大学の抱える問題、自身の生い立ち、学生への期待…。著者は02年から務めた早大15代総長を11月退任するが、本は総長の卒論に終っていない。
 序章がワセダ、ワセダでないところがいい。大学の大衆化、少子化やグローバル化というなかで〈私立大学の多くは定員確保に苦しんでいる。今後の日本の高等教育の方向性について考えたい〉と書き進める。
 〈国立大学と私立大学の学生1人当たりの公財政支出のギャップは埋めがたいほど大きく、とても競争にならない〉
 〈一部の国立大学の力を上げることで高等教育への支援だとして私立大学助成からむしろ手を引こうとしている〉
 早大がらみでは、留学生の増加、入学生に対する全学基礎教育、生涯学習としてのeスクールや医学部でなく医理工学など、「早稲田からWASEDAへ」の意気込みが伝わってくる。
 早大改革では正直に告白。〈学生運動により、90年代、時代のニーズに見合った学部の新設など慶応大学に遅れをとった〉と認め、〈奥島前総長が過激派セクトの徹底排除を行い負の遺産を清算、改革が加速、国際化が進んだ〉
 冒頭の「ごった煮」という表現は、学生の気風、サークルの数など早大を象徴しており、早大総長らしい。著者が言いたいのは序章にある次の言葉ではないのか。
 〈秀れた教育環境を作れば学生達は必ず反応して自分達で行動する。学生諸君が新しい日本をつくってくれることを信じて、ともに取組むことが大切であろうと思っている〉(狸)

 「早稲田の力」  白井克彦 著
 角川学芸出版
 п@03―5803―1587
 定価 1200円税別

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