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平成22年9月 第2415号(9月8日)

新刊紹介
 「日本人へ 国家と歴史篇」
  塩野七生 著

 著者の本が売れている。近くの書店でもコーナーを設けて、山積みしていた。なぜ、塩野七生がいま人気なのか。
 「文藝春秋」巻頭随筆に06年10月号から10年4月号までに書いたものをまとめ新書化した。前著の「日本人へ リーダー篇」に続くもの。
 〈戦争は、ほとんどとしてよいくらいに侵略戦争である。なぜなら、防衛のつもりで行った戦争に勝ったとたんに、その防衛線を確実なものにしたくなってさらに敵地深く侵略することになる〉「戦争の本質」を書く。
 前著でも〈誰でも納得できる客観的な基準にもとづいた大義が存在するならば、人類はとうの昔に戦争という悪から開放されていたはずである〉
 戦争についてだけでなく、リーダー、映画、葡萄酒と論は及ぶ。それを古代ローマの皇帝や哲学者の言葉、そしてイタリアの政治家、歴史などさまざまな事例を挙げながら論証していく。
 リーダーでは、小沢一郎を取り上げている。民主党代表選以前に書いたものだが古びていない。著者は自民党との大連立をけしかける。
 〈浮き足立つ人を計算に入れないでも大丈夫という数を有しない限り、日本の政局の安定はできない〉と〈あなたも、政局屋でなく政治家として、名を残したいと思われませんか〉
 冒頭の人気だが、読んでいて小気味よい。著者の主張は、国益を考え論理的。いまの政権政党には、「理想や理念だけを語り、現場を知ろうとする努力をしない」政治家が蔓延している。この軽薄な風潮に、我慢できない人たちが塩野にすがる。

 「日本人へ 国家と歴史篇」  塩野七生 著
 文春文庫
 п@03―3265―1211
 定価 850円+税

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