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平成22年6月 第2405号(6月16日)

新刊紹介
 「南海ホークスがあったころ」
  永井良和・橋爪紳也 著

 プロ野球の南海ホークスの熱心なファンだった二人の著者の「フィールド・オブ・ドリームス」である。
 著者の永井は、都市社会学・大衆文化論専攻の関西大学教授。橋爪は、建築史・都市文化論専攻の大阪府立大学教授。阪神ファンの多い関西にあって南海ファンであり続けた不撓の意志。
 半世紀に及んだ南海ホークスの球団史であり、パリーグ史であり、地域史。南海ファンの喜怒哀楽、球団、球場そして地域の盛衰が哀愁を誘う。
 著者の思いは「あとがき」に濃く刻まれる。〈いまでも御堂筋の南端に立つと、その道路の先にある球場のかたちを思い浮かべることができる〉
 映画「フィールド・オブ・ドリームス」は、ケビン・コスナー主演のヒット作。野球を題材にして夢や希望、家族の絆―アメリカで讃えられる美徳を描いた野球ファンタジー。
 この本に、「男だったら、誰にだってフィールド・オブ・ドリームスがある」と背中を押された読者は多いはず。
 ぼくにとってのそれは、神宮球場。10代の頃、外野の芝生席に寝転んで、野球でなく、ただ空を見上げていた。人生の煩悶か、失恋の悲哀か、記憶は定かでない。背中の芝生の心地よさと空の青さが忘れられない。
 神宮球場の芝生席は今はないが、ぼくの「フィールド・オブ・ドリームス」は消えずに、ずっと心の中にある。読者に、こうした郷愁を呼び起こしてくれる嬉しくて、そして切ない本である。

 「南海ホークスがあったころ」 永井良和・橋爪紳也 著
 河出文庫
 п@03―3404―8611
 定価 950円+税

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