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平成22年4月 第2399号(4月28日)

新刊紹介
 「『全球』教育論」
  中嶋嶺雄 著

 タイトルの「全球」は、〈国家と国家を水平的に結ぶ関係が「国際化」だとしたら、グローバル化は「全球化」という中国語の表現が示しているように立体的な概念である〉とする。
 著者は、近頃、評判の国際教養大学学長で、元東京外語大学長。「教育危機と日本の大学」に始まり、「大学院」、「愛国心」、「英語教育」、「国際教養」まで幅広く論じる。
 各種審議会委員として、会議の場で歯に衣着せず、徳育や愛国心を説く。
 07年の教育再生会議の第2次報告の記者会見では〈徳育の教科化を、浅利慶太氏と記者会見で述べたが、マスコミは徳育については一言も報道しなかった〉、03〜06年の教育基本法改正案で「愛国心」を、どう盛りこむかの議論で〈中教審は「国を愛する心」と表現、与党案は、それさえ取ってしまった〉、ともに大憤慨する。
 そうかと思えば、グローバル化、英語教育を熱く弁じる。そこでは、〈徳育や愛国心と英語能力を高めることは矛盾しない〉ときっぱり。
 〈小学校で英語をやると国語がダメになる〉という論には組しない。〈国際化に乗り遅れるな、英語教育は国家戦略〉と一途なのだ。
 「国際教養大学の挑戦」で一章を割き、〈グローバルに学びつつも、新渡戸稲造「武士道」(英文)を必読書として読み込んだ国際教養人を育成したいというのが建学の使命である〉。ここに、著者の思いの真髄がある。
 著者を一口でいうなら、柔らかな思想の持ち主。加えれば、こうと決めたら一途の信念の人。でなかったら、国際教養大学のようなユニークで今日的な大学を創れっこない。

 「『全球』教育論」 中嶋嶺雄 著
 西村書店
 п@03―3239―7671
 定価 1500円+税

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