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平成22年4月 第2396号(4月7日)

新刊紹介
 「対決! 大学の教育力」
  友野伸一郎 著

 著者は、ライター・ジャーナリスト。河合塾のプロジェクトチームで、「大学の教育力」の調査に加わった。06年からの教養教育、09年の初年次教育という二つの調査から現在の大学の教育力を分析する。
 〈大学を選ぶ基準は、大学のブランド力であったり、難易度であったり、立地であったりさまざまだ。それだけの視点でよいのか〉と疑問を投げかけ、〈大学は教育力で選ばれる必要がある〉。時機を得た着眼がいい。
 教育力を知ることは、〈受験生、企業の人事。採用者にとって大きな価値がある〉とし、大学の教育力は〈教養教育と初年次教育が重要であるという確信を得た〉。卓抜な教養教育、初年次教育を紹介。この種の調査は本来、大学自らがすべきだ。
 東大と京大の教養教育を比較し〈京大のほうが合格可能性が高いから選ぶ、ブランド力で東大のほうを選ぶ、というような大学選びは、大きな禍根を残す〉という結論、慶大SFCと早大国際教養学部を比較しての〈向き、不向き〉論は、中辛だが正鵠を得ている。
 〈初年次教育をテコに大学改革を行った〉嘉悦大学、〈初年次教育のフロントランナー〉の関西国際大学、〈資格直結の初年次教育を行う〉神戸学院大学薬学部といった、小さな大学の大きな成果に光を当てた。著者の低い目線、広い目配りが冴える。
 神髄は、四章に見つけた。〈学生を誇りに思っている大学は、優れた教養教育や初年次教育を行い、学生を「こう変えたい」というビジョンと手法を持っている。学生を恥じている大学というのは、学生の現実の前に途方に暮れている〉

 「対決! 大学の教育力」 友野伸一郎 著
 朝日新書
 п@03―5540―7793
 定価 740円+税

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