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平成22年3月 第2393号(3月3日)

玉川大学
 大学教育の“質”を考える
 80周年記念シンポを開催

 去る2月27日、東京都内のホテルを会場に玉川大学は学園創立80周年記念シンポジウムを開催。「大学の使命と責任『これからの大学教育のありかた』」をテーマに、大学教育のありかたを考える上で必須の条件である「質」の問題を取り上げて行われた。
 開会の挨拶で、小原芳明理事長・学長は「ユニバーサル化の中、社会に資質を備えた人材を輩出する大学の責任は大きい。これからの大学のありかたを教育の視点から考える機会としたい」と述べた。
 東京大学名誉教授の天野郁夫氏が「大学の教育改革と質保証」と題して基調講演を行った。教育、職業、学問の領域における構造変化を背景に、大学教育は変わらざるをえなくなった。時代の変化に対応し、社会の人材育成に寄与してきた私学教育の伝統の再発見が改革のカギになると述べた。そのような中で、教育の質の再構築には何が求められているのか。同氏は、新しいディシプリンの形成、学士課程教育の高等普通教育化にどう対応するか、教員の意識改革の必要性、大学の自己評価を促す文化の醸成等が必要であろうとの考えを示した。
 続いて、「高等普通教育の可能性」と題して、東京大学大学院教育学研究科教授の金子元久氏が、データをもとに話題を提供した。戦後の大学教育モデルと現在の学生のすれ違いから、社会が求める人材像と学生の就業意識のミスマッチに至るまでの流れについて、大学教育理念の再定義の時期にきていることを示唆した。誰に対しても意味のある「高等普通教育」を目指すのであれば、教育改革の戦略として、学習者のモニタリングを基にした授業へのフィードバック、また、他大学との連携の中でそれを対比させながら独自モデルを構築することが有効であろうと述べた。
 最後の講演者は、「学習者中心の理念と戦略としての質保証」と題して、新潟大学全学教育機構准教授/玉川大学客員研究員の加藤かおり氏。知識のありかがフラット化した現代において、学習者からみた大学教育とは何か。大学で学ぶ意味とは何か。そのような見方に対して、大学教育の価値について、教育の質の保証によりアピールできるのではないか。英国の質保証や質向上の具体的な取組事例を挙げて解説し、学内のシステムを「学習者中心」に再構築すること等を提案した。
 パネルディスカッションでは、さきに登壇した三氏をパネリストに、会場からの質疑も加えながら講演の内容を深く掘り下げて議論され、FD、コンピテンス、高等普通教育、日英比較の取組動向等に関心が集まる中、大学運営の責任において、教育の質の再構築とは、教育のシステムを再構築することにほかならないと、あらためて大学教育の改革の必要性が確認された。


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