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平成22年2月 第2389号(2月3日)

文部科学省
  学校法人の運営等の協議会開催
  関係所管から諸施策の動向を説明
  「新成長戦略」「教育・財務情報の公開」「奨学金事業」「授業料減免の拡大」など解説

 文部科学省は、去る1月26日、東京・港区のメルパルクホールで、「学校法人の運営等に関する協議会」を開催した。同協議会は学校法人及び私立大学等の円滑な運営に資するため、関連する諸施策の概要や事務の適正な処理等に係る基本的な事項の周知を目的に毎年開かれている。河村潤子私学部長の開会の挨拶の後、10の関係所管の担当課長等から説明が行われた。

 河村私学部長は、まず始めに「私学は公益性、公共性が求められている」と述べ、「厳しい経営環境ではあるが法令等を守り、社会の信頼を得ることが欠かせない。教育環境の状況等を積極的に情報公開していくことが肝要である」と挨拶。
 引き続き、各所管事項について関係各課等から説明が行われた。
 ▽私学行政課(村田善則課長)=平成22年度税制改正大綱における市民公益税制(寄附税制)に触れ、所得税の寄附金控除適用下限額が5000円から2000円に引き下げられたことから、少額寄附者の裾野の拡大を図ることを促した。また、新たに設置する市民公益税制プロジェクトチームの今後の検討課題を示した上で、改革の方向性は所得控除から税額控除・給付つき税額控除・手当への転換を図ることになると説明。
 そのほか、昨年12月30日閣議決定の、従来の「骨太方針」の位置づけとも言える「新成長戦略」の大学関連部分の概略を説明した。その中の環境・エネルギー問題に関連して、全私学連合の『環境自主行動計画』にも触れた。
 ▽私学部参事官室(伊藤 勲参事官)=21年度の私立学校の経営状況について、地方・小規模大学ほど入学定員未充足の割合が高く、46.5%に及んでいること、地域間格差も大きいこと、また、帰属収入で消費支出を賄えない大学が39.7%(20年度)に達していることなどを説明。次に財務情報の公開状況調査結果では、「事業報告書」の記載内容について、事業の概要で「卒業者数、修了者数、学位授与数の状況」、財務の概要で「主な施設設備の整備状況」などの記載割合の低いことを指摘した。そのほか、資産運用の点検等の取組状況では、規程等の未整備法人が25.6%あることなどを説明した。
 ▽高等教育企画課高等教育政策室(榎本 剛室長)=中央教育審議会大学分科会の「中長期的な大学教育の在り方」を審議する質保証システム部会での教育情報の発信の議論について説明したほか、大学におけるキャリアガイダンス(社会的・職業的自立に関する指導等)の審議経過と、それに伴う大学設置基準の改正に当って、「教育課程の実施及び厚生補導を通じて、社会的・職業的自立に必要な能力を培うことができるよう、大学内の組織間の連携を図る」といった趣旨を設けることになると解説した。
 ▽高等教育企画課国際企画室(氷見谷直紀室長)=真正な学位と紛らわしい呼称等についての実態調査結果及び各国で認定された高等教育機関の正確な情報を得ることを目的に設置されたユネスコのポータルサイト(留学生向けの情報や各国の高等教育システム、質保証制度の概要などを掲載)を説明した。また、大学間交流について、欧州高等教育圏の交流の枠組構築が整備されつつあることから、我が国も早急にアジア地域における質保証を伴った大学間交流の枠組の検討が不可欠であると述べた。
 ▽大臣官房国際課国際協力政策室(浅井孝司室長)=ユネスコ・スクールと持続発展教育(ESD)について解説。ESDとは、持続可能な社会づくりの担い手づくりであり、環境教育、国際理解教育、人権教育等の様々な分野をつないで総合的に取り組むことであると述べた。一方、ユネスコ・スクールの研究テーマ(地球規模の問題への理解、人権・民主主義の理解と促進、異文化理解、環境教育等)がESDの理念と重なることから、文科省ではユネスコ・スクールをESD推進拠点と位置づけ、加盟校増等の強化に取り組んでいることなどを説明した。
 ▽初等中等教育局(袖山禎之主任視学官)=公立高校の授業料無償化及び、私立学校に通う低所得世帯の生徒への助成金(11万8800円〜23万7600円)等の高等学校等就学支援金の創設、特別支援教育推進事業等を説明した。
 昼食休憩の後、引き続き、説明が行われた。
 ▽学生・留学生課(下間康行課長)=22年度の就職採用活動に係る大学等側の「申合せ」、企業側の「倫理憲章」等に触れた上で、昨年12月1日現在の大卒就職内定率73.1%(私大は70.5%)という厳しい状況を示すとともに、業界団体への採用への要請文書の発出等を行ったことを説明した。また、22年度予算案における大学等奨学金事業(1兆55億円、対前年度3.5万人増)や授業料減免の拡大等(私大の経常費補助金〈特別補助〉での40億円)についても説明した。
 ▽私学助成課(小山竜司課長)=22年度私学助成予算案において、経常費では一般補助で地方中小規模大学について教育研究に係る経費支援のため単価を増額し、対前年度4億円増としたことのほか、教育研究装置・施設の整備費の耐震改修事業費を対前年度3億2700万円増額したことなどのポイントを説明。
 ▽初等中等教育企画課(今井裕一課長補佐)=新学習指導要領の円滑な実施のほか、学校評価、全国学力・学習状況調査の私学の利用についてなど説明した。
 ▽科学技術・学術政策局(大西啓介企画官)=ポスト第三期基本計画の主要事項として「基礎科学力強化」、「重要政策課題への対応」、「社会と科学技術イノベーションの関係深化」などを説明。その上で、二十二年度の予算案の概要と科学研究費補助金が2000億円を突破したことなどを合わせて説明した。
 ▽大学振興課(藤原章夫課長)=22年度予算案のうち、大学教育の質保証と高度な教育研究拠点の形成支援について事業内容(大学教育・学生支援推進事業、就業力育成支援事業〈新規〉)などを説明するとともに、21年度の教育関係共同利用拠点制度の概要と認定についても説明して全日程を終了した。

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