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平成22年1月 第2388号(1月27日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦
  女子大学研究会
  女子大の可能性探る   連携強化で活性化促す
 

女子大学研究会代表
武庫川女子大学情報システム室システム課長 私市 佐代美

 1.研究会発足の背景
 2009年4月現在、日本の女子大学は国公私立あわせて79校。在学生の約9割を女性が占める短期大学は409校で、いずれも10年前(女子大学95校、短大585校)に比べると大きく減少しており、規制緩和の流れの中で四年制大学が増加し進学率が上昇しているのとは対照的な動きとなっている。
 少子高齢化社会の進行によりこれまで以上に女性の活躍が期待され、女性のライフスタイルにも大きな変化が現れているが、国際的にみると、日本女性の社会進出は特に低い順位を示している。このような現状に対し、女子大学の役割は重要性を増していると考えるが、先にみたように「女子大学」あるいは「女子教育」は、受験生からの十分な信頼や期待を得られなくなってきている。
 そんな危機感から、大学職員としての意識改革・教育への知見が必要と痛感し、大学院で学びながら、大学行政管理学会の研究会にも参加するようになった。初めて参加したのは、学会発足当初から11年の活動を誇る「職員・教学研究会」である。この研究会は、2007年10月、名古屋で発展的解散をされたが、その最後の懇親会席上で、初めて女子大学研究会の立ち上げを宣言した。そこには、大学職員の熱い思いと確かなPowerがあって、検討中だった思いを「設立宣言」にまで変換していただいた。その時、即座に顧問役を名乗り出てくださったのが、当時学会会長の福島一政氏である(「女子職員研究会」の聞き間違いだったとの後日談もあるが)。
 懇親会の酔いから覚めると、研究会運営の困難を思って迷いも生じたが、無謀な宣言を聞きつけた三人(筑紫女学園大学の竹山優子氏、公立大学協会の清水栄子氏、ノートルダム清心女子大学の藤原久美子氏)の仲間が設立に賛同してくれた。翌年7月上旬に、実践女子大学に移られていた元会長の井原 徹氏をお訪ねすると、やはりその場で研究会顧問をお引き受けくださった。こうして勢いを得た発起人メンバーが「設立趣意書」を作成し、活動の決意を確認しあったのは、7月20日(日)、広島の暑い夏のことである。その後、発起人に大阪樟蔭女子大学の春口昌彦氏が加わり、10月9日「女子大学設立趣意書」を学会に提出。10月25日の常任理事会で承認された。
 2.これまでの活動
 以後、今日までに三回の研究会を開催した。女子大学関係者だけでなく、共学大学の教職員や企業からも多数ご参加いただき、熱心な意見が交わされている。毎回の研究会では参加者全員の写真撮影を行い、記録やアンケートの集計結果と共にメールで送信し、以後の交流や研究成果の共有に努めている。
 (1)第一回研究会:平成21年1月31日(土)武庫川女子大学で開催。参加者、51名。第一回目の研究会では、様々な視点やデータから女子大学の現状を把握し、問題点や今後の取り組み方針等、活動のスタート時点を明確化することとした。発表@「女子大学の自己像」(武庫川女子大学:安東由則先生)では、大学案内や自己評価報告書の中で、女子大学自身が女子大学であることを十分に主張できていないと分析。続くA「私立女子大学を取り巻く環境変化と生き残りへの道」(春口昌彦氏)では、1990年代以降の環境変化を詳細に分析すると供に、全国の女子大学へのアンケート結果から、強い女子大学の条件を分析。
 (2)第二回研究会:平成21年5月17日(土)、大阪樟蔭女子大学で開催。参加者80名。@講演「女子大学の存在理由―それは、これまでどのように主張されてきたか―」(立教学院本部調査役:寺ア昌男先生)では、女性の高等教育史及び女子専門学校創始者らが主張した女子大学の使命について解説。続くA「パネルディスカッション:女性のための大学とは」では、3名のパネラーが持論を展開、参加者とのディスカッションを行なった。
 (3)第三回研究会:平成21年10月17日(土)、岡山のノートルダム清心女子大学で開催。中国・四国地区研究会と初の合同研究会。参加者50名。発表@「リーダーシップ育成―女子大学の可能性―」(愛媛大学:秦敬治先生)では、アメリカの大学や愛媛大学でのリーダーシップ育成の実績から、女性の方がリーダーシップの能力は高いとの分析結果を報告。女子大学でのリーダーシップ育成の可能性を示唆。発表A「進学分析」(藤原久美子氏)では、女子高校生の進学要因分析論を紹介。女子大学が受験生を獲得するために、どのような戦略が必要か持論を提言した。
 3.今後の活動
 歴史的にみると、高等教育は、どの国でも男性を対象に開始されている。研究書によると、男性のための教育制度に女性が参入したのは、概ね欧米では19世紀、アジアでは20世紀のことであり、それぞれの社会情勢や教育政策から「女子大学」の無い国もある。
 日本は、男女平等社会を実現するため、戦後の教育改革で大学を共学化するとともに女子大学を設置したが、女子大学の意義や役割は、その時々の社会の中で変化し常に問われ続けてきた。
 現在を決定付けている過去を歴史に問いながら、これからの女子大学あるいは高等教育の展望を探りたいというのが、女子大学研究会を立ち上げた理由である。研究会の活動はスタートしたばかりだが、協力者も増えつつある。今後、女子大学史の他、女子大学の改革や経営の現状、キャリア教育、カリキュラム、海外の女子大学の状況等について研究を進める予定である。そして、それらの成果としての女子大学の現代的意義を、受験生や保護者、女子大学職員などへも発信して共有し、女子大学間の連携を深めたいと考えている。
 『大学アドミニストレーターとしての役割を期待される職員が、それぞれの大学経営に「女子大学」あるいは「女子教育」の現代的意義を追究する姿勢を持ち、その実現のための能力を向上させることは大きな意味を持つ。本研究会の取り組みが、女子大学全体の活性化を促す原動力となり、女子大学連携の強化と、わが国の高等教育の発展に寄与することを願っている。』(設立趣意書より抜粋)

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