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平成22年1月 第2386号(1月13日)

大学発ベンチャー設立は減少傾向
  科学技術政策研が調査

 科学技術政策研究所では、昨年12月、「大学発ベンチャーと産学連携の現状と課題に関する調査2007―2008」を公表した。その結果、大学発ベンチャーの設立数は近年減少傾向にあることや、ライフサイエンスや情報通信などの分野によってベンチャーの特徴には違いがあることがわかった。

 国内の大学等852機関を対象に2008年7月から8月に実施したアンケート調査を基に、大学等発ベンチャーの設立状況を分析。大学等における産学連携およびベンチャー支援、大学等発ベンチャー自体の現状と課題を調査した。
 それによると、大学発ベンチャー設立累計は2007年度時点で1775社であり、各年の設立数は2004年度の245社をピークに減少傾向で、国立大学発・教員発ベンチャーの設立数が大きく減少した。
 ○大学等における産学連携およびベンチャー支援の現状と課題
 全般的に産学連携活動の中で共同研究や受託研究を現在特に重視しているが、ベンチャー創出や支援活動への取組は、2003〜04年当時と比べて相対的に弱まっていると感じている。また、産学連携活動の目的として、外部資金の獲得や地域貢献を重視しており、課題として知財部門の体制・人材の強化が必要と感じている。ただし、目的や課題に対する意識は産学連携の活発さやベンチャーの有無によってやや異なる。
 ○大学発ベンチャーの現状と課題
 資本金額、売上高、従業員数は設立が古い企業で規模が大きい場合が多く、年月を経て成長する企業が着実に現れている。しかしながら、設立からの年数や科学技術分野に関らず赤字企業は多く、「収益確保」、「資金調達」、「販路・市場の開拓」が特に大きな問題となっている。
 知的財産については、全般的に特許とノウハウのどちらも重視しているが、分野によってどちらをより重要視するかは異なる。また、全般的に特許の出願経験はあるものの、海外出願や審査請求経験があるかどうか、また特許出願件数は分野間で差がある。また特許の取得や維持費用の捻出やベンチャー全般に大きな課題となっている。
 経営者は多くの分野で50代以上、特に60代以上が多く、博士号取得者が多い。これに対して、情報通信分野30代以下の若手が多く、最終学歴は修士卒が多い。
 ○まとめと考察
 経営者や支援人材の確保が難しいこと、大学等でベンチャー創出や支援活動が弱まり、共同・受託研究を重視するようになっていることなどの影響を受け、教職員自身も産学連携活動を進める上でベンチャーに関与するよりも既存企業との共同研究、受託研究を選択するようになっている可能性がある。科学技術分野によって大学等発ベンチャーの事業内容や課題には違いが現れており、分野の違いを踏まえた支援施策が求められる。

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