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平成22年1月 第2386号(1月13日)

平成22年 年頭の所感

 文部科学大臣 川端 達夫

 平成22年の新春を迎え、謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
 昨年は、我が国にとって大きな変革の年でした。新たに誕生した鳩山内閣は、国民の選択により生まれ、また国民の生活を第一に考える、「民」の内閣と言えます。私も内閣の一員として、鳩山総理のリーダーシップのもと、本年も国民の皆様とお約束したことの実現に全力で取り組んでまいります。
 昨年九月の新内閣発足からの三ヶ月余りを振り返りますと、この間に取り組んだ課題は数多く、大変密度の濃い時間を過ごしたように感じます。特に、前政権下で編成された補正予算の見直しと、新政権の新たな考え方のもとでの概算要求のやり直し、事業仕分けへの対応を含む平成22年度予算編成作業は大きな課題でした。
 昨年末に閣議決定した政府予算案においては、政権のスローガンである「コンクリートから人へ」の理念に立ち、「人と知恵」を生み育てる施策に重点化を図ったところです。事業仕分けの評価結果を踏まえ、事業の廃止・縮減等の見直しを行う一方、マニフェストや総理指示の事項等に対応した結果、総額で対前年度5.9%増の予算を確保し、過去30年で最高の伸び率となりました。
 今回の予算の最重要項目は高校無償化の実現です。公立高校生の授業料を不徴収にすることで無償制を導入するとともに、私立高校生等に対しては就学支援金を代理受領方式で支給することとし、これらに必要な予算約4000億円を計上しました。これにより、先進諸国が既に導入済みの高校無償化について、我が国が国際人権規約の留保を撤回する上での第一歩になると考えています。
 一方、高等教育段階では、大学奨学金について事業の健全性を確保するとともに、貸与人員で対前年度35000人増の充実を図ります。また、85000人の国私立大学生の授業料を減免することとしています。
 義務教育諸学校の教職員定数については、前政権下の定数削減方針を打破し、7年ぶりの純増で、昨年の五倍を超える4200人の大幅改善となりました。これにより、教員が子どもと向き合う時間を確保するとともに、新学習指導要領の円滑な実施を図りたいと考えています。
 高等教育については、前政権下の国立大学法人運営費交付金を毎年度1%削減する方針を見直しつつ、医学部定員増に伴う教育環境の整備充実や授業料免除枠の拡大などを図るとともに、私学助成についても必要額を確保します。医師不足解消のための医師等養成と大学病院の機能強化については、医師等の医療人材養成機能強化、大学病院で働く医師等の勤務環境の改善などを行います。
 本来、教育は、個人の豊かな社会生活ばかりでなく、社会全体の活性化を実現するものです。いかなる環境にある子どもたちに対しても、生まれてから社会に出るまで切れ目無く学びや育ちを支援していくことが必要であり、社会が次世代を担う子どもの成長を支援し、成長した子どもが社会を支えるという好循環を作ることとなります。このような教育政策の重要性を踏まえ、その充実に取り組んでまいりたいと考えています。
 スポーツは、国民に夢と感動をもたらすだけでなく、社会や経済に活力を与え、また国際的な理解や共感、信頼関係を醸成するための重要なツールであると考えます。バンクーバー冬季オリンピックも目前に迫り、我が国の選手の活躍が期待されます。来年度は、特に2012年のロンドンオリンピックなどの国際競技大会に向け、「チーム「ニッポン」マルチ・サポート事業」及び「次世代アスリート特別強化推進事業」の拡充による国際競技力の向上などに重点的に取り組むこととしています。
 また、文化芸術は、過去から未来へと受け継がれ、人々に喜びや感動を与えると同時に、我々の全ての営みの基盤として重要なものです。文部科学省では、優れた芸術文化活動への支援や地域の伝統文化の継承、メディア芸術の振興など、「ハード」の整備から「ソフト」と「ヒューマン」への支援に重点を置き、文化芸術を振興していきます。
 我が国の生命線である科学技術については、新政権の成長戦略において重点項目と位置付けております。昨年は、国際宇宙ステーションへ本格的な物資輸送を成し遂げるとともに、野口宇宙飛行士が長期滞在を開始しました。このように、科学技術の力で、国民の夢を大きくふくらませ、世界をリードするための取組を進めてまいります。好奇心旺盛な子どもたちに科学のすばらしさをもっと理解してもらう取組を充実するとともに、若手・女性研究者等に対する支援を強化するため、新たに「最先端研究開発戦略的強化費補助金(仮称)」を創設いたします。また、温室効果ガス25%削減の目標達成のために、次世代太陽電池や超伝導送電など先進的技術開発を進めてまいります。
 一方で、科学技術への政府投資の拡大や研究の高度化、専門化に伴い、社会における科学技術のあり方も改めて問われていると感じております。研究開発の成果はすぐには見えにくいものではありますが、その意義や成果を説明することを怠れば、社会の支持を得ることはできません。文部科学省としては、現場の研究者、技術者の方々とともに、積極的に情報を発信して国民の理解を得ることに力を尽くしていきたいと考えております。また、政府全体の科学技術戦略を企画・立案する強力な司令塔の整備と、その下で戦略的に予算を配分し各省が横断的に連携して研究開発に取り組むシステムの構築を図り、国民の目線も踏まえながら、国家戦略としての科学技術の振興を進めてまいります。
 以上の課題に対応するため、国民の皆様のご理解をいただきながら平成二十二年度予算案及び関連法案の速やかな成立を期したいと考えております。このほか、教員免許制度の抜本的な見直し、幼児教育の充実、学校教育環境の整備、新たな科学技術基本計画の策定、独立行政法人・公益法人の改革、地方分権改革など、教育、科学技術、スポーツ、文化芸術の各般にわたる重要な課題に取り組んでまいります。
 資源小国である我が国の今後の発展の礎となるものは、「人と知恵」であり、その発展を担う文部科学行政は、国政の中心に据えられるべきものです。私は、文部科学行政の責任を担う者として、文部科学行政の重要性を心に刻み、その充実発展に全力を尽くしてまいります。引き続き、関係各位のご指導とご鞭撻をいただきますよう心よりお願い申し上げます。

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