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平成22年1月 第2385号(1月1日)

教育の質の向上と保証

日本私立大学協会副会長/愛知学院大学学院長・学長  小出忠孝

 新年明けましておめでとうございます。皆様にはお健やかに新春を迎えられたことと、心よりお慶び申し上げます。
 私立大学協会は現在384大学が加盟する、わが国最大の大学団体となっています。高等教育(大学)の77%を私立が担っているわが国では、高等教育の将来は本協会加盟の各大学の双肩にかかっていると言っても過言ではなく、本協会の責任は極めて大であります。
 昨秋私ども中部支部では、私大協会秋季総会を加賀百万石の文化の都、金沢で開催致しました。全国から240大学、330名の多数の皆様の参加を得まして、盛大に開催できました事を、厚く御礼申し上げます。総会では高等教育激動期における私立大学の振興・発展方策について熱心な協議が行われ、大変有意義な総会を無事終了できた事を感謝申し上げます。
 現在わが国では人口・産業・社会の各構造が大きく変化する中、昨夏に政権交代が行われ、先行きの見通しが不透明であります。しかし本格的な知識基盤社会の到来により、高等教育を受けた人材の必要性が益々大となっています。質の高い教育により豊かな教養と専門的能力を身につけ、社会のため貢献する「21世紀型市民」の育成が重要であり、私立大学の責任は大であります。しかし総会で協議されたように最近の私学を巡る環境は一段と厳しさを増しています。その大きな原因は18歳人口減少と大学新設ラッシュによる定員増が、大学全入時代と学生の学力低下を招来している事です。
 この様な大学全入時代を迎え、大学の質の低下が指摘されているのに対し、中央教育審議会では、先年「学士課程教育の構築に向けて」の答申を発表し、各大学に「学位授与」、「教育課程」、「入学者受入れ」の三つの方針の明確化と、卒業生の学士力の強化を強く要請しました。さらに「中長期的な大学教育のあり方」についての諮問を受け、大学分科会で昨年6月と8月に審議状況を発表し、各大学に多様なニーズに対応する大学教育の質の向上のため、公的な質保証システムの構築と、また教育情報、財務状況の一層の公開を要請しています。教育情報では、「何を学ぶことができるのか」(教育の目標・内容・成果)を重視し、教育の成果を強く求めており、また入試別の入学者数・学科別の在学者数・中退率・卒業率・就職率等の教育情報の公表も求めています。財務状況については、国公立大と同様の詳細な事項まで公表の対象となっています。
 この様な厳しい環境の中、各私立大学は建学の精神に基づき特色ある教育を行い、社会の期待に応える人材を育成し、社会に貢献する事が責務であります。そのためFD・SD活動により全教職員の意識改革を行い、教育・研究の質の向上と保証に努められる事を期待します。新春にあたり各大学の一層の発展を祈念するとともに、本年も今まで以上のご支援をお願い申し上げます。

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