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平成21年10月 第2375号(10月7日)

大学コンソ研究交流フォーラム
  広がるコンソーシアム設立の動き
  「大学間で温度差」など課題も

 全国大学コンソーシアム協議会は、去る9月12日、13日、函館市の北海道教育大学函館校において、第6回全国大学コンソーシアム研究交流フォーラムを開催した。全国の地域経済が疲弊している中、持続的発展性を備えた地域社会を再構築するため、高等教育による「人間力」の養成が求められている、との認識から「コスモポリタンな地域づくりと高等教育連携」がテーマとして設定された。シンポジウム、分科会等を通して、全国の関係者およそ300人が集い議論を行なった。

 はじめに、会場となった北海道教育大学の本間謙二学長が「これからは大学に閉じこもっていては立ち行かなくなる。地域と関わりながら教育と研究を行い、地域力を組織力に変えていかなければならない」と挨拶した。
 基調講演では、「大学教育改革の焦点」と題して東京大学教育学部の金子元久教授が演台に立ち、大学教育改革について、学習させる大学、成長させる大学、開かれた大学の三つのキーワードを元に持論を展開した。最後に「教育改革には個々の大学の努力が基本だが、同時に幅広い連携が必要だ」と締めくくった。
 引き続き、金子教授も参加してのシンポジウムでは、西尾正範函館市長、文部科学省の義本博司高等教育企画課長の三氏をシンポジストに、はこだて未来大学の中島秀之学長がコーディネータを務めて行なわれた。
 函館地域には、8校の単科系高等教育機関が設置されているが、これらがコンソーシアムを作ることで総合系としての機能が発揮できる。平成20年度には文部科学省の戦略的大学連携支援事業に採択され、地域と連携したイベントや「函館学」の研究も行ってきた。
 西尾函館市長は、このようにコンソーシアムの意義を語り、「最近では留学生との交流も行なっている。こうした経験が自信に繋がり、主体的に活動するきっかけになっている」と成果を披露した。一方で中島氏からは「コンソーシアムへの今後の期待として、教養教育の充実が挙げられる」と投げかけると、金子教授も、「専門だけ持っていても仕事ができない。地域の具体的課題と結び付けて教育を考え、多様な経験をさせることが重要」と応え、義本氏も「ローカリティや具体性を生かした、地域の教育クラスターがあってもよいのではないか」などと同意を示した。
 フロアからの質疑応答では、「大学間連携と単位の実質化の関係が難しい」「高校以下に連携を広げても良い」などと言った意見のほか、スタッフや予算確保等、運営面の話にまで及んだ。
 その後、文部科学省高等教育局大学振興課の古田和之課長補佐から、同省の戦略的大学連携支援事業についての解説があった。また、同日と翌日にわたって行なわれた分科会は、FD/SD、組織運営、国際化、地域との連携など六つのテーマに分かれて発表、ディスカッションが行なわれた。
 現在、同協議会に所属する大学コンソーシアムは46。文部科学省の施策を受け、全国に設立の動きが広がるが、加盟する大学間、あるいは学内での認知度に温度差があるなど課題も多い。特に三年程度で補助金が打ち切られた後の運営についてはどこも頭を抱える問題だが、設立時から10年後、あるいはその先にどういうイメージを持っているかを内部で絶えず議論をしていくことが重要になる。

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