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平成21年7月 第2368号(7月22日)

新刊紹介
  現代政治を撃つ
  @政治の精神A
  佐々木毅 著

 昨今の政治状況を見るにつけ、実にタイムリーな本である。これを読んでから8月30日の衆院選の投票に出かけよう。
 一章「政治を考える視点」、二章「政治をする精神」、三章「政治に関与する精神」、終章「政党政治の精神」の四章からなる。終章のために一、二、三章があると察した。
 一章〜三章は〈政治を支える精神的基盤・素地と政治的統合というテーマ〉に政治を論じる。マキアヴェッリ、ウェーバー、丸山真男ら知の巨人の言説の引用が巧みで、理解しやすい。
 〈政治家は常に権力のより大きな分け前に与ろうとして、権力を追求する人々〉、〈90年代半ばから官僚制は司法、地方分権、政治の各改革によって、その役割を制限されるに至った〉といった指摘は鋭い。
 終章で、呼吸している今の政治を論じる。安倍、福田政権の相次ぐ崩壊、麻生政権の支持率急落を〈政権党の明白な機能停止現象に他ならない〉と断じる。
 そして、〈もはや美辞麗句や夢物語は不要である。21世紀型社会をどう構築するか、日本の政党政治がこの任に堪え得るかどうか、我々は瀬戸際に立たされている〉と結ぶ。
 行間にはジャーナリズムの志が通奏低音のように流れている。丸山真男の論考を要所で使うのと関連する。〈丸山はジャーナリズムや政治の場に進出することで覇権を得た〉(「丸山真男の時代」、竹内洋)
 元東大総長で学習院大法学部教授の著者は、「戦略なき日本」、「司令塔なき日本」、「縦割りの中の日本」という、この国の機能停止状態の政治に対して丸山真男のようにもっと発言していいのではないか。
 ここも丸山の言葉で締めくくりたい。〈日本の新聞社の『政治部』は正しくは『政界部』と呼ぶのがふさわしい〉(「現代政治の思想と行動」)

 「政治の精神」
 佐々木毅著
 岩波新書
 03―5210―4054
 定価780円+税

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