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平成21年7月 第2368号(7月22日)

私大協会
  学生生活指導主務者研修会を開催
  カウンセリングの基礎知識など熱心に研修
  メンタルヘルス中心に「人間力」再考

 去る7月15日から17日まで、日本私立大学協会(大沼 淳会長)は、大阪市の大阪ガーデンパレスにおいて、平成21年度(通算第55回)学生生活指導主務者研修会を開催した。同研修会は、学生生活指導研究委員会(担当理事=高柳元明東北薬科大学理事長・学長、委員長=濱田勝宏文化女子大学理事・副学長・服装学部長・教授)が準備をすすめてきたもので、本年度は、テーマを「人間力再考〜メンタルヘルスを中心に〜」と題して、学生対応窓口におけるメンタルヘルスの考え方を中心に、講演、発表、情報交換が行われた。同協会加盟384大学のうち、186大学276名が参加した。

 学生が多様化する今日、同研修会のプログラムでは「メンタルヘルス」を中心とした研修としているが、これはカウンセラー等の専門職を対象とするものではなく、学生対応窓口において学生と向き合う際に最低限の基礎知識をもってどのように接したらよいかということに主眼を置いている。
 開会に先立ち、開催地である同協会関西支部より、支部長の森田嘉一京都外国語大学理事長・総長が歓迎の挨拶に立った。「通算第55回と大変歴史ある研修会をこの関西の地で開催できることを、支部七四大学を代表して歓迎することと、感謝の意を述べたい。グローバル化、そして厳しい情勢の中、私立大学は自らの努力と責任によって、質の充実を図り、地域社会においてかけがえのない存在になっていかなくてはならない。学生が多様化し、多くの問題に直面している大学も多いと思われる時期、大学間の情報交換を深め、議論して課題解決に向かってほしい」と述べた。
 続いて、同委員会より、高柳担当理事が登壇し、「現代の学生像も変わり、かつてでは考えられなかった悩みを抱え、多様化する問題に直面している。学生のメンタルヘルス、人間力育成、これらのキーワードは多くの大学にとって課題とする大きな部分である。学生が社会に出るにあたって、学生時代に人間力を十分に培われていないことが問題視されている。研修会では、課題解決に向けてのカギとなるものをぜひ見つけていただきたい」と挨拶を述べた。
 研修に入り、濱田委員長から同委員会の活動報告と本年度研修会の研修目標等について発表があった。学生の基礎学力の低下、メンタルヘルス、昨今の不況を受けての経済的支援といった学生生活指導の基本的課題、さらには中教審等の動向、文科省の政策展開についてどのように取組むか等、といった研修目標を例示した。特に、具体的に取り上げた今回のテーマであるキャンパスでのメンタルヘルスを課題とすることで、様々な周囲の問題にも話題が波及することを見越して、情報交換等を深めてもらいたいとの趣旨を説明した。
 続いて、同協会事務局の小出秀文事務局長が、「私立大学を取り巻く諸情勢と今日的課題」と題した解説を行い、私学の歴史から現在の厳しい情勢について詳細に説明し、政策に反映させるためにも、もっと現場の声を同委員会に届けてほしいと参加者に訴えた。
 昼食休憩を挟み、午後は近畿大学臨床心理センター長・教授の人見一彦氏による「キャンパス精神医学―メンタルヘルスの基礎知識―」と題した講演が行われた。多様化する現代の学生が抱える悩み、そしてその背景となっている社会の環境が生み出す障害の種類について詳細に解説した。また、同研修目的における基礎として、カウンセリングでの面接の基本を、窓口対応の場面に応じて解説した。
 その後は会場を班ごとに移し、班別の情報交換となり、各大学での取組、課題等について具体的に情報交換が行われた。
 初日の研修が終わり、まだ班別での話題が冷めやらぬうちに、情報交換会が開催され、再び一堂に会し、和やかな雰囲気の中で、課題を共有する同士が存分に語らうひと時となった。
 二日目午前の部は、全体会による講演形式で始まり、「個人情報保護法と学生情報の共有化」と題し、東京家政大学臨床相談センター所長・教授の近喰ふじ子氏が、昨年度に引き続き、数々の具体的事例をつまびらかにしながら発表した。個人情報保護法との関わりを解説し、学内での対応について、過度にプライバシー保護に気を使うと、関係者との情報交換ができなくなるということが起こり得る。必要な情報交換を十分に行いながら、関係者の全員がプライバシーの保護に努める。または、本人の了解を得ることも大切であると、まとめた。
 続いて、常磐会学園大学学生部長・准教授の佐谷 力氏の「学生とのかかわりで大切なこと―聴き方と視点―」と題した発表が行われた。各大学が在籍学生の状況と実態を把握することにより、学生指導の内容は、それぞれに違ってくる。学生相談については、カウセンリングの定義を基に、学生が自らの力で問題解決できるよう支援していくという観点から、話を聴き受容し共感するという基本姿勢について解説した。生活指導と学生相談の目指すところは同じで、学生が自立し、社会生活でのルールやマナーを守れるよう育成していくものだと述べた。
 二日目の午後も前日と同様に班別の情報交換が行われ、各会場では長時間にわたり、様々な意見が交わされた。
 三日目、最終日の研修は、全体会での発表が二本。まず、「キャンパスにおけるメンタルヘルス相談」と題し、北海道医療大学心理臨床・発達支援センター長・教授の坂野雄二氏が発表をした。学内における適切な相談体制の在り方を考えるということから、どのような工夫をするとメンタルヘルス相談を適切に行うことができるかについて述べた。ストレスについて考えることから、現代の様々な問題解決のヒントを提示した。学生支援の課題が多様化、複雑化する状況を見越した上で、大学が組織でどう支援していけるかを考えるべきとして、窓口対応のみならず、学内相談機関の充実や学外ネットワークの活用等といった体制整備を図る必要性を述べた。
 続いて、「キャンパス・ヘルスとコミュニティ・アプローチ」と題し、静岡大学大学院人文社会科学研究科准教授の江口昌克氏が、発表を行った。良い学生生活、キャンパスづくりのための新たな考え方として、個人と環境との適合性という視点に立ち、個人よりも環境の方に働きかけ、改善のためには新たな体制を作り出すことを重視する。キャンパスにおける学生支援モデルを例示し、その導入後の変化を挙げた。キャンパス全体でのサポート体制は問題や方向性を共有し、個人としての責務というより職責という意識に変わっていくという変化をもたらす等と述べた。
 三日間にわたる研修が終了し、閉会に当たって、濱田委員長が、ひとつのテーマに絞ったかたちで行われた本年度の研修会が、盛会裏で閉幕をすることに感謝の意を表した。同委員会では、今後も意見・要望を寄せていただきたいとして、研修全日程を終えた。

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