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平成21年7月 第2365号(7月1日)

改革担う大学職員 大学行政管理学会の挑戦
  大学経営評価指標研究会
  教育成果の「見える化」に挑む   教職協働(UD)もテーマに研究

大学経営評価指標研究会座長
広島経済大学理事・事務局長
 松井 寿貢

 大学行政管理学会が設立された一九九七年、早稲田大学(当時)の井原 徹氏(現実践女子学園理事長)が初代会長の慶應義塾(当時)の孫福 弘氏(故人)から「研究会を早急に立ち上げてほしい」との要請を受け、「組織・業務研究会」を発足させ、初代座長(リーダー)となった。
 数年の活動を経て、「業務評価」を研究テーマとすることになったが、評価を定量化(指標化、見える化)することに困難を極めていた。その時、東京理科大学(当時)の大関昌平氏の紹介で、自治体行政評価に実績のある專本能率協会と共同研究することになり、02年に「大学経営評価指標研究会」が発足した。二代目座長は日本福祉大学(当時)の福島一政氏、三代目座長は中央大学の横田利久氏を経て現在に至っている。
 私は03年から当研究会に参加したが、それは福島氏からの強い要請であった。
 「研究会メンバーは関東大手大学の職員が多く、地方大学の視点からの議論もないと学会の目的(中小も含めた大学の発展に寄与)が薄れる。是非、中国地区からも参加されたい」
 以来、東京通いが続いている。
 研究活動の概要
 教育研究を推進し選ばれる大学づくりのためには、予算の管理と業務運営だけでは対応できない時代に来ているとの認識から、大学を経営体として捉え、@経営戦略立案、A経営戦略の進行管理のためのマネジメントの仕組み(評価指標によるPDCAサイクル)の設計を目的に活動してきた。従って、「経営評価指標」の策定だけではなく、「大学経営戦略の策定・評価システムの開発」が目的である。とはいえ、経営評価のツールとしての大学経営評価指標の策定が重要ポイントであり、特に教育成果(アウトカム)の指標化(見える化=可視化)というテーマに挑んだ。
 第1期:02年9月〜03年8月「大学使命群体系と大学経営評価指標の開発」
 第1期の成果は、@選ばれる大学づくりのための大学使命体系の設定、Aそれらの目的達成度を測るための大学経営評価指標の設定、である。具体的には、大学共通ドメインとなる10の大学使命群と各大学使命を達成するための手段としての55の部門施策という網羅的な目的手段の体系設定を行ない、設定された大学使命体系の各階層ごとに、目的達成度を測る大学経営評価指標を設定して、経営目的の設定および実現のマネジメントが行なえるようにする仕組みを開発した。
 第2期:03年10月〜04年12月「大学経営評価指標の普及」
 第2期の成果は、@大学共通の経営戦略体系(大学使命群体系)の見直しと大学経営評価指標の精査による精度の向上、A日本能率協会によるプロトタイプとして商品化、B大学ごとにカスタマイズされた導入大学の実現である。これを契機に普及・啓発活動が進展した。折しも、国立大学法人が中期目標策定とその評価が課題であったので関心を持たれ、国公私立大学への段階的な普及が実現した。
 
 第3期:05年5月〜08年2月「教育力向上の方策研究」
 第3期の成果は、「大学教育力向上方策の提言およびマネジメントツールの設定」である。本テーマについては、教育力の指標化という目的の大きさゆえ、他者の評価に耐えうる素案の策定まではかなりの時間と困難が伴った。
  (事例)大学教育力向上方策 重要度上位一覧
 具体的には、15の教育力向上分野(入学前教育、専門教育等)と、その分野で実施されている78の具体的方策について、「実施度」、「機能度」、「重要度」を全国の大学学長にアンケート調査をして点数化し、指標化(見える化)を行った。
 第4期:08年3月〜現在
 第3期の研究成果を基に、「教育力の向上」推進のためには「教育力向上マネジメント力」が重要との観点から、さらに具体的な方策を研究すべく、「教職協働のための方策研究」を研究テーマに掲げ、調査研究が継続中である。このテーマは換言すれば、「FD、SDの推進はUD(ユニバーシティ・ディベロップメント)である」という説の実証研究でもある。また、このテーマと平行して次に述べる教育成果の評価についての研究も多面的に行いたい。
 教育成果の評価について
 中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(平成20年12月24日)には、「教育の質の保証について、教育成果の客観的な評価、指標化が必要」との記述もあった。このことは本研究会の基本テーマである教育成果(アウトカム)の評価と一致していることから、これまで当学会研究集会等で発表してきた研究成果がさらに批判的に議論され、教育成果のより客観的な評価、指標化に繋がり、大学教育力の向上に資することを期待したい。

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