Home日本私立大学協会私学高等教育研究所教育学術新聞加盟大学専用サイト
教育学術オンライン

平成21年5月 第2359号(5月20日)

新刊紹介
  「ヤンキー進化論」
  文化論に高まるか?
  難波 功士著

 ヤンキー論が花盛り。同時期に、「ヤンキー文化論序説」(五十嵐太郎編著、河出書房新社)も刊行された。
 なぜ、いまヤンキーなのか。著者は博報堂出身で、現関西学院大学教授。本の帯には、こうある。
 〈ヤンキーは、時代遅れになったかもしれない。だが、「ヤンキー的な人・モノ・コト」は姿形を変えながら広がっている。強い生命力を保ち続けるヤンキー文化の四〇年間を、映画やコミックなどの膨大な資史料をもとに描く〉
 広告代理店出身らしくヤンキー文化論にもなっている。次の記述までは、団塊世代にもわかった。
 〈70年代の暴走族から80年代の竹の子族、ツッパリへと連なるヤンキーの系譜は、これまで地方のサブカルチャーとしてしか認知されてこなかった〉
 〈ネガティブなヤンキー観が世の主流であり続け、今日、古典的なヤンキーはもっぱら地方ないしメディアの中に追いやられ、過去の遺物ないし天然記念物的な扱いを受けている〉
 しかし、こうなると首を傾げざるを得ない。
 〈(私の勤める大学は)ヤンキーとは縁遠い環境なのだが、ヤンキーの概念を最広義にまで拡張すれば、とくに女子学生にかなりの割合で該当者が存在している〉
 〈この最広義でのヤンキー度が高い者ほど就職活動に強い傾向がある〉と、こうした学生が就職した、いわゆる一流企業を書き連ねていた。
 著者は、ヤンキーをいま、そこにある事象に結び付けたかった。いや、自分の周辺に結論を求めたかったのではないか。そうだと、こじつけと五十歩百歩。 
 若者・ヤンキーに迎合しすぎているところも気になったが、「膨大な資史料」、を集めてまとめた力業は評価したい。この本がヤンキー文化論を高め、深める嚆矢になれば…。


 「ヤンキー進化論 不良文化はなぜ強い」
 難波功士著
 光文社新書
 03−5395−8113
 定価900円+税

Page Top