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平成21年3月 第2352号(3月11日)

高めよ 深めよ 大学広報力〈25〉
  明治薬科大学 広告は企画内容で選択
  共栄大学 交通広告でインパクト

 こうやって変革した(22)

 この連載の二三回(二月十八日付)に続いて、今回も単科系大学の広報を取り上げたい。薬学の明治薬科大学(久保陽コ学長、東京都清瀬市)と国際経営の共栄大学(山田和利学長、埼玉県春日部市)。明治薬科大は一九〇二年創立という歴史があり、共栄大は二〇〇一年創立のフレッシュな大学。二つの大学に単科系大学という以外に、専門性などの共通点はない。広報面では、明治薬科大は一般紙の広告掲載で真骨頂を発揮、共栄大は私鉄、東京メトロなどの車内広告で異彩を放つなど、それぞれ存在感を示している。総合大学と違いバリエーションが少ない単科系大学にあって、ともに「今後とも専門性をアピールしていきたい」と前向きなところがよかった。二つの単科系大学の広報体制や業務、そして、広報のあるべき姿などを聞いた。(文中敬称略)

 単科大は専門性で生き残り
 明治薬科大学は、創立者の恩田重信が一九〇二年(明治三十五年)、神田区三崎町(現千代田区三崎町)に「東京薬学専門学校」を開校。一九九八年八月、東京都世田谷区と田無市にあったキャンパスを統合移転、新キャンパスを清瀬市に設立した。
 同大は、二〇〇六年四月から薬学部に六年制学科の薬学科(定員三〇〇名)と四年制学科の生命創薬科学科(定員六〇名)を併設した。学部、大学院合わせて一八〇二人の学生が学んでいる。
 広報の体制は、二〇〇五年四月から新しくなった。広報担当理事である本橋登が説明する。「少子化・大学全入という時代を前に、大学の情報をきちんと伝え、真の大学を理解してもらいたいということから広報体制を整備しました。これまでの入試広報は従来通りですが、広報委員会を立ち上げ、広報チームを設けました」
 薬業界専門紙にも広告
 広報チームのマネージャー、青沼明彦が補足する。「大学広報は社会性を意識するのは当然として、大学の中身をアピールしていくことが大事だと思います。教職員のみならず、学生の学業や生活など全てを支えて頂いている保護者の皆さんにも正しい情報を提供していかなければなりません」広報チームは、現在二人。一般紙や薬業業界紙への広告出稿のほか、同大のWebサイトの管理運営、プレスリリースの発行やマスコミとの取材対応などを行っている。
 一般紙だけでなく、薬業界専門紙にも広告出稿をするというのが薬科大らしい。本橋が語る。「薬業界専門紙は本学卒業生の皆さんもよく読んでいます。さらに、これら卒業生の子弟が受験する例も多いのです。それに、普段から紙面で薬科系大学の行事や研究成果などを紹介してくれます」
 一般紙への広告出稿は値段も張るので広告効果を考え、慎重に行っているという。「新聞社の広告企画の内容をみて決めます。本当に、大学と受験生に役立つ広告かどうかが判断基準です。単なる大学の宣伝でなく、むしろ、医療系や薬学系大学の『進学相談会』のお知らせとセットになった広告などを選びます。進学相談会は、ブースを設けて受験生と向き合う大事な催しです」(青沼)
 広報チームとして、成功したケースを、青沼が語る。「大手新聞社が文部科学省のGPを獲得した大学だけを選んで掲載する広告企画を持ってきました。その年は本学もGPを取ったので、ぜひ載せたい、と大学幹部を説得しました。受験生だけでなく、大学のブランド力アップにも大変に役立ったと思っています」
 大学ランキングは注視
 大学ランキングは総合大学と同じように注視しているようだ。同薬科大は薬剤師国家試験では六年連続全国ベスト一〇の合格率をキープしている。このランクは「明治薬科大のHPを開くと最初に見えるようにしました」(青沼)そうだ。
 広報面で総合大学との違いはどの辺にあるのだろうか。「数や量ではかないません」と本橋は、こう続けた。「総合大学は学部ごとの広報ができるなどバリエーションが豊富です。本学では、広告出稿も費用対効果を第一に考えています。専門性、質の良さ、うちでいえば薬剤師国家試験の合格率のよさなどをメインに訴えています」と語る。
 青沼は、これからの大学広報について「競争相手は増え、一八歳人口が減るという現実があります。パブリシティも積極的にやりたいし、USR(大学の社会的責任)の一環としての説明責任、そして地域貢献や危機管理も対応しないといけない」と語った。取材の最後に「やることがまだまだ多い」とぐっと前を向いて話す青沼の姿勢に好感が持てた。
 「実学」に重きを置く
 共栄大学は、学校法人共栄学園が運営する。一九三三年、東京都葛飾区に設立された本田裁縫女塾が前身。四二年、共栄女子商業学校を設立、五〇年、学校法人共栄学園に組織変更。八〇年に埼玉県春日部市に春日部共栄高等学校を設立、共栄大学は二〇〇一年、同市に開学した。
 共栄大は、国際経営学部・国際経営学科のみの単科大学。国際経営学を軸に、七つのコース(実践ビジネス、観光ビジネス、財務・会計、国際ビジネス、ITビジネス、福祉経営、スポーツマネジメント)を設けている。
 社会に直結した国際経営という名の「実学」に重きを置く。就職と資格獲得に熱心に取り組んでいる。広報担当を兼ねる入試部長の大野治信が説明する。
 「学生一人ひとりの希望に沿った就職を実現させるため、早い時期から学生の志向や希望業種・職種などを把握。自己分析の就職適性テスト、先輩たちの体験報告会、企業説明会など、学生の就職意識を喚起し、勇気づける機会も数多く設けています」
 「会社ごっこ」という有限会社が大学内にある。学生の社長がいて、企業や団体からWebサイトの企画・制作や動画配信などを請け負う。社会人としての責任、起業家に必要な経営センスを身につけるのが目的だという。
 就職支援は、教職員が一体となって行っている。同大は民間企業出身の教員が多い。NECなどメーカー、銀行、シンクタンクなどからの実務家教員が三〇%占めるという。この教員たちが、企業に積極的にアプローチ、就職担当者も三〇〇以上の会社を回って就職先の開拓をしている。
 資格サポートにも精力的だ。とくに、力を入れているのが「公認会計士合格ゼミ」。希望する約四〇人の学生が受講している。大野が語る。「〇六年に開講し、専任含め三人の教員が放課後や春休みなどを使って教えています。この最難関の公認会計士試験で、在学中の合格者を出したい、というのが悲願です」
 同大の広報体制は入試広報に六人、学園広報に四人いるが、他のセクションとの兼務も多いそうだ。新聞や交通機関への広告出稿やプレスリリースの制作や発信も一手に引き受ける。
 山田学長も広告に登場
 「プレスリリースは、昨年暮れから、埼玉県庁の記者クラブなどに出すようになりました。新しい学長の就任が決まったのが契機です。四五歳の若い学長は新聞広告にも登場しましたし、各新聞も県版の人欄で取り上げてくれました」(大野)
 〇九年一月に学長になった山田は、私鉄や地下鉄などの交通広告にも顔を出す。実は、東武線で通っている筆者は、よく共栄大学の交通広告を目にする。そのユニークさと斬新さに目を奪われた。山田の登場した広告も印象に残った。
 〈共栄大学に、松下政経塾出身の新進気鋭の若き学長が誕生!〉というタイトル。腕を組んだ山田の写真が載り、「社会学力を鍛え、心豊かな生涯の友を得よう!そして、自分の夢を実現させよう!」と呼びかけていた。
 もうひとつの交通広告は〈国立大学より学費が安く学べます〉という直截的なタイトル。初年度学費が共栄大学特待生六七万五〇〇〇円、国立大学八一万七八〇〇円と数字をあげ、入試日程、大学の特色なども掲載してあった。
 この広告について、大野は「知名度や認知度をあげようと、予算などを考えインパクトのありそうな交通広告を選びました。大学のカラー、教育の中身を伝える材料として新学長や特待生の学費を取り上げました。『会社ごっこ』も使いました」と語る。
 「これからは、より総合大学との違い(専門性)を打ち出して、教育のコンテンツを理解してもらえるよう努力していきたい」(大野)と、今後の広報について語った。学生はもちろん、大学の歴史も、学長も、全て若い。「若い大学を広報が支える」と言っているようにみえた。

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