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平成21年3月 第2352号(3月11日)

質向上や学部教育の充実を 臨床研修制度の検討会

 去る二月二十六日、文部科学省と厚生労働省が合同で設置している臨床研修制度のあり方等に関する検討会(座長=高久史麿自治医科大学学長)は、「臨床研修制度等に関する意見のとりまとめ」を公表した。概要は次の通り。

 【臨床研修制度導入以降の状況】
 一、各病院が特色ある研修を展開していく上で、研修プログラムの基準の見直しが必要。
 二、多くの診療科での研修を一律に課すことが、研修医のモチベーションを損なう面がある。
 三、医学部教育改革の動向と臨床研修制度が十分に連動しておらず、調整が必要。
 四、受入病院の指導体制等に格差が生じており、臨床研修の質の一層の向上が必要。
 五、大学病院の医師派遣機能が低下し、地域における医師不足問題が顕在化。
 六、募集定員の総数が研修希望者の一・三倍を超える規模まで拡大し、研修医が都市部に集中。
 【基本的な考え方】
 「医師としての人格の涵養と基本的な診療能力の修得」という制度の基本理念・到達目標を前提として次の考え方に立って見直す。
 @研修医の将来のキャリア等への円滑な接続が図られるよう、研修プログラムを弾力化。
 A卒前・卒後の一貫した医師養成を目指し、研修の質の向上や学部教育の充実を図る。
 B医師の地域偏在対応、大学等の医師派遣機能強化、研修の質向上等の観点から、募集定員等を見直す。
 【臨床研修制度等の見直しの方向】
 一、研修プログラムの弾力化
 ▽必修診療科は内科(六か月以上)、救急(三か月以上)にとどめる。▽外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科は選択必修とし、この中から二つの診療科を選択する。▽内科、救急など基本的な研修を一年間とし、二年目から将来のキャリアに応じた研修も可能。▽現在行われているような多くの科を巡回する研修も引き続き実施可能。▽一定規模以上の病院には、産科など医師不足診療科の研修プログラムを義務付ける。▽研修二年目に、地域医療研修(一か月以上)を必修とする。
 二、募集定員や受入病院のあり方の見直し
 ▽研修医の適正配置を誘導するため、都道府県別の募集定員の上限を設定。▽各病院の募集定員は、研修医の受入実績等を踏まえ、医師派遣実績等も勘案して設定。▽募集定員の大幅な削減の対象となる場合などについては、一定期間の経過措置を設ける。▽研修の質の向上のため、研修プログラムを管理する病院の指定基準を強化。▽引き続き、受入病院が公表した研修プログラムを研修希望者が全国規模で選択できるようにする。
 三、関連する制度等の見直し
 ▽臨床実習の充実を図るなど、医学教育のカリキュラムの見直し。▽医学部入学における地域枠などの拡大を進める。▽大学病院等による医師派遣機能を開かれたシステムとして再構築。▽五年後を目途に改めて制度見直しについて検討。

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